5月30日から香港でもiモードサービスが始まり、これでiモードは日本を含む世界18の国と地域でサービスが展開されることになった。着々と海外でも導入されるiモードだが、果たして今後のさらなる普及と展開はどうなるのだろう。

国内で話題のドコモ2.0のように、海外でも"ドコモの反撃"は成功するのだろうか?

■WAPより利点のあるiモード

日本では今や携帯電話でのコンテンツサービスの利用は日常的なものであり、無くてはならない存在になっている。iモードをはじめとするモバイルコンテンツサービスが日本の一大産業になっていることは世界中にも知られている。しかし、日本ほど携帯コンテンツを利用する国は、海外では韓国くらいであり、他の多くの国ではまだまだコンテンツを利用するケースは多くはないのが実情だ。

海外ではWAPをベースとしたコンテンツサービスを各国のキャリアが展開している。またiモードを開始したキャリアも、すでにWAPサービスを提供しているところが多い。香港でもiモードを開始したHutchisonは、"Planet 3"の名称でWAPサービスを展開しており、iモードは別のプラットフォームを利用した別のサービスとして新しく導入が開始されたというわけだ。

WAPとiモードを比較すると、iモードの利点は多い。海外ではメーカー主体で端末を開発するため、画面解像度や内部メモリ容量など、端末のスペックがメーカーごとに違うだけでなく、同じメーカー内でもハイエンドとローエンドでは大きく異なっているのだ。そのためキャリアが提供するWAPサービスを利用する際、自分の端末でコンテンツの一部が利用できないことも多い。
現在、海外で発売されている携帯電話はローエンドの機種を除けばほとんどの機種がWAP対応となっているのだが、ハイエンド機種にあわせたコンテンツの場合は、ローエンド機種では利用できないというわけだ。

一方、iモードであれば共通のプラットフォームにあわせた端末をキャリアが提供するため、すべての端末でiモードコンテンツを利用することができる。このためコンテンツを使いたいユーザーにとっては、iモードは確かに優れているプラットフォームであるのだ。

■有利なのに、なぜiモードの利用者が増えないのか

コンテンツを利用するうえでは、iモードの方がWAPより有利なわけだが、実際に海外でiモードが導入されている国を訪問してみると、利用者の姿を見かけることはあまり多くない。コンテンツ利用に優れているiモードなのに、なぜ利用者が多くないのだろうか?

●圧倒的な端末の質と量の差
最初の問題は、端末ラインナップが少なすぎることだ。iモードの利用には専用端末が必要だが、現行の海外iモード機種は10機種程度。国によっては数機種しか発売されていない。

一方、WAPに対応した機種はその10倍以上もあるのだ。香港でもiモード対応端末はわずか3機種で、Planet 3(WAP)対応の機種は3Gだけでも約30機種、GSMを加えると50機種近くも販売されている。さらに、それらの海外端末と比較してiモード専用端末が優れているかというと、残念ながら機能やデザイン面では見劣りしてしまうのが実情なのだ。

香港のキャリア"Hutchison"のショップ店頭。WAP対応機種は3Gと2Gを加えて40〜50機種程度が常時ラインナップされている。これは毎月数機種が新機種として登場している計算になる。NokiaのNseriesやSonyEricssonのWalkman携帯など、マルチメディアに優れた端末も多数展示されている。Hutchisonが始めた香港のiモードには3機種が登場したが、ハイエンドと呼べるのはMotorola maxx V3 imodeのみ。この機種にしても、HSDPAに対応していることでハイエンドとされているが、デザインは数年前に登場したV3そのもので、新しく斬新なものではない。HSDPA高速通信機能以外のスペックも、海外の大手メーカー製ハイエンド機種と比較すると大幅に落ちる。