初優勝は目前だった。米ツアー3年目にして初めて迎えた最終日最終組。今田竜二(30)の落ち着いたプレーぶりには、かつて全米トップジュニアに君臨し、太平洋を単身で渡って「リュウジ・イマダ」の名を轟かせた片鱗が垣間見えた。出だしで同組のトロイ・マッテソンに2打のリードを奪われながらも、首位を奪還し、後半は首位を独走していた。が、そのまま逃げ切れるほど甘くはなかった。
今田が17番を迎えたとき、2組前で回っていたマスターズチャンプのザック・ジョンソンが通算15アンダーでフィニッシュ。その事実を17番グリーン脇の民家から聞こえてきた「ザック!」の声で知ったという今田は「全然気にはしなかった」ザックが何をしようと自分は自分というつもりで挑んだ1.5メートルのバーディパットは、しかしカップの淵で止まった。
18番パー5。ジョンソンに追いつくためにはバーディがMUST。池越えの難ホールで、今田はひるむことなく2オンを狙った。アドレナリンのせいだろう。グリーンを大きくオーバーしたが、第3打のチップショットは最高級の出来栄えでカップ30センチへ。プレッシャーがかかる中、米ツアー未勝利の今田がマスターズチャンプとのプレーオフへ自力で持ち込んだ姿に、ギャラリーは惜しみない拍手を送った。
だが、プレーオフ1ホール目の18番では、そんな今田の「勇気」が裏目に出たのかもしれない。左ラフにつかまった今田を眺めながら誰もが「レイアップだ」と思ったに違いない。しかし、今田は3番ウッドを握り、2オン狙いのギャンブルへ。結果は……グリーンに届くことなく、手前の池に沈んだ。対するジョンソンは手堅くフェアウエイから2オンし、バーディ。目前まで迫っていた今田の初優勝は、ボールとともに水の中へ沈んだ――。
「2オン狙いの判断には100%満足。でも、池に落としちゃったのは悔しい」。戦いの舞台となったTPCシュガーローフは、ジョージア大学時代にもプレーしたことがあり、米ツアー参戦を開始してからも05年が15位タイ、06年が10位タイと好成績。ドライバーが曲がりがちな今田にとって「フェアウエイが広いから好き。グリーンも固くて速い。米ツアーの中で一番目か二番目に好きなコース」。そんな相性の良さも手伝って、今週はいけそうな予感があったという。
ネイションワイドツアー時代に2勝を挙げているものの、米ツアーでは初めての優勝争い。そして、「優勝争いは3年ぶり」。プレッシャーをうまくコントロールできたという手ごたえを掴んだ今田。ギャンブルショットに出たことに「悔いはない」と言い切ったあたりは、いかにも今田らしい。が、思い通りのショットが打てず、池にはまった結末には悔しくてたまらないはず。その悔しさが、次なる機会にどう生きるか。今田の本当の優勝狙いは、これからだ。(舩越園子/在米ゴルフジャーナリスト)
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