[画像] 【池上解説】1DKに4人で生活!?格差ひらくロサンゼルス最新事情

アメリカの大統領にドナルド・トランプさんが就任することになりました。
また日本の政界にも大きな動きがありました。今一体世界では何が起きているのか、そして日本にどう影響してくるのか、今回は「世界の今」としてアメリカについて詳しく解説してまいります。

【画像】1DKに4人で生活!?格差ひらくロサンゼルス最新事情

■池上彰がロサンゼルスで現地取材!

今回私はロサンゼルスにやってまいりました。先日の大統領選挙ではトランプさんが圧勝しました。今アメリカで何が起きているのか、どんな問題があるのかお伝えしていきます。

ロサンゼルスと言えば何といっても大谷翔平選手ですよね。連日大変大きなニュースとなりました。このドジャースタジアム以外にもロサンゼルスには有名な観光スポットがたくさんあります。

ハリウッドやビバリーヒルズ、サンタモニカという地名は聞いたことありますよね?ユニバーサルスタジオやディズニーランドも有名です。
そして日本人にとってはリトルトーキョーも忘れてはいけません。

■存続が危ぶまれる!?「リトルトーキョー」

ロサンゼルスの中心部、リトルトーキョーは北米最大の日本人街で日系人など約1000人が暮らしています。たくさんの和食店や日本語の看板を掲げるお店が並んでいます。ロサンゼルスに暮らす日本人や日系人にとっての憩いの場、と言った感じですね。今回私は40年ぶりくらいにこの場所を訪れたんですが、以前とは違って日系人以外の人がたくさんいます。普通の観光地、と言った感じです。それもそのはず、この地域ではこの3年で和食のお店など約50店舗が廃業し、新たに日本のアニメのお店などポップカルチャーの新しい店がどんどんできています。日系人に向けた、というより観光地と装いを新たにしてきている感じなんですね。

でもなぜ短い間に50店舗ものお店が廃業したと思いますか?その理由は地価の高騰です。ロサンゼルスはシリコンバレーが比較的近いということもあって多くのIT企業が進出しています。そしてリトルトーキョー近くには地下鉄の駅もできました。結果、地価が上がりすぎて昔から住む人たちがこれ以上住めなくなってしまったんです。今では全米で「存続が危ぶまれる11の地域」の一つに指定されています。(NPO歴史保護ナショナル・トラスト)

■ロスではお馴染み…無人タクシー

そんなロサンゼルスで今最先端ともいえる乗り物があります。アプリで予約し行先を入力、やってきたのは無人タクシーです。

日本の感覚だと無人運転はゆっくりと決められた道を進む、なんてイメージではないでしょうか。でもこの無人タクシーは違います。屋根や車体にいくつもカメラやセンサーがあって、常に周りを確認しながら運転します。しょっちゅう車線変更もしますし、いわゆるうまい人が運転している、といった感じです。今このタクシーがロサンゼルスでは普通に使われています。一方日本では規制が厳しくて一部走行中に手を放しても大丈夫、という程度の無人運転しか認められていません。道が狭い、入り組んでいるなど色々問題もあって、なかなか完全無人運転にはならないですね。

■1ベッドルームで30万円!?ロスの最新住宅事情

先ほどリトルトーキョーなどロサンゼルスでは地価が高騰しているという話がありました。一体どのくらいの値段なのでしょうか。不動産屋さんを訪ねてみました。

学生が住むような1つのベッドルームにキッチンやバスのついた部屋、その賃料がなんと月2000ドル、約30万円もするそうです。学生にこの値段はきついですよね。お金のない学生は4人くらいでこうした部屋に住むんだそうです。
そして驚くことにロサンゼルスでは年収が1500万円程度では中流階級以下、低所得者の部類に入るそうです。日本とはだいぶ違いますね。一軒家を買うには最低でも年収3000万円が必要ということです。本当にアメリカでは格差社会が進んでいることがわかります。

でもこうして4人でもアパートに住める学生はいい方かもしれません。
今ロスで増えているのは車で生活する人たちです。広い道のあちこちにキャンピングカーやちょっと大きめの車が並んでいます。こうした場所でたくさんの人が今生活をしているんです。その一人を訪ねてみました。

中はきれいです。キッチンもベッドもあります。勉強する机も備わっています。
シャワーはありませんが、ジムで浴びているそうです。彼は半分好んで車で生活しているところもあるそうですが、友人の中には本当にお金がなくて路上生活をしている人もいるそうです。今アメリカの大学の学費は年間1000万円程と言われています。30歳くらいまで親と同居しないと暮らせない、学生からはそんな声も聴かれました。

ロサンゼルスでは格差社会が進んでとてつもなく裕福な暮らしをする人がいる一方で日々の生活にも困る、そんな人たちが増えているんですね。

■オリンピックを見据えて街をきれいに!?

格差の進んだカリフォルニア州にはアメリカのホームレスの約3割がいると言われていて、私も街でたくさんのホームレスを目にしました。結果治安も悪化していることから、ロサンゼルス市は対策に乗り出しました。4年後にはオリンピック開催を控えています。世界の人にホームレスがあふれた街を見せるわけにはいきませんからね。今行っている対策はなんと、税金を使ったホームレス専用の住居の建設です。ジムも付いた大変立派な部屋です。こんな暮らしができるならホームレスになったほうがいい、そんな皮肉も市民からは出てきています。そしてもう一つ、カリフォルニアが抱える問題が不法移民です。ロスはサンクチュアリシティと言われ、不法移民にとても優しい町です。ここに来ればいい生活ができる、多くの不法移民が押し寄せています。でも意外なことにロスの人は不法移民に対しても寛容な人が多いんです。

■トランプ新大統領でどうなる?

アメリカは移民を労働力として使うことで発展してきた国でもあります。でも次の大統領に決まったのは不法移民に厳しいトランプさんです。選挙中「不法移民は全員追い出す」と言っていますが、これからどんな対策をとるのか注目です。

そのトランプ大統領誕生で日本にはどんな影響があるのか、こちらも気になりますよね。トランプさんは予測不能な人ではありますが、選挙戦での発言から見ていきましょう。

トランプさんは法人税を減税すると言っています。そうなるとアメリカの企業は儲けが増えますから当然株価が上がります。アメリカの株が上がると日本の株も短期的には上がる可能性が高くなります。

一方でトランプさん、世界各国からの輸入品に10〜20%の関税をかけると言っています。(中国製品には60%の関税をかけると言っています)日本からアメリカへは車などたくさんの物を輸出していますが、関税をかけられるとその値段は上がってしまいます。そうなるとどうしても売れなくなりますから、輸出産業には打撃になる可能性があります。

トランプさんはビジネスマンでディール(取引)の人です。とりあえず最初吹っ掛けておいて、自分にとって有利な材料を引き出そうとします。例えばアメリカ製の武器をたくさん買ってくれたら関税を引き下げてやろう、そんな取引を持ち掛けてくるかもしれません。そのディールに石破総理がどう対応していくのか、安部さんのようにゴルフという共通の趣味があるわけではありませんから、どうやってトランプさんと取引をしていくのか、注目です。

来年1月、トランプ大統領就任によってロシアやイスラエル、おそらく世界に大きな影響が出てきます。これからしばらくはトランプさんの動きから目が離せません。是非そのあたりに注目してニュースをご覧になってください。

(池上彰のニュースそうだったのか!!11月16日OAより)

もっと詳しい解説や中国・韓国など「世界の今」を知りたい方はTVerへ!