今季限りで現役を引退する武田英二郎、横浜でも共闘した伊藤翔との3ショットでは優しい笑顔を浮かべる。横浜FCでコーチ2年目の中村俊輔も、1年でのJ1復帰に安堵したのだろう。
一時は首位に立っていた横浜FCだが、ラスト4試合はトーンダウン。20戦負けなしで迎えた“勝てばJ1昇格”の35節・仙台戦は、まさかの0−3完敗。堅守を誇るチームが今季初の3失点を喫した。
続く岡山戦も2−4で大敗。35節・栃木戦は0−0のドローで、3位の長崎とついに勝点3差に。いよいよ追い込まれたが、最終節の山口戦もスコアレスドローだが貴重な1ポイントを上積みし、J1への切符を掴み取った。
「結果は出たから、ネガティブに考える必要はないのかなっていう感じはする。みんなもがいたし、頑張った。すごく一生懸命にやっていたと思う」
そう振り返る俊輔だが、一方で「結果は出たけど、反省しなくていいことなんか1つもない」とも語る。矢印を自分に向ける。指導者として何ができたのか。
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「エンジンをもっと上げて、練習とかで選手にもっとエネルギーを与えなければいけなかった」
チームが白星から遠ざかる期間は難しい部分もあった。仙台、岡山、栃木との試合が週末に予定されていた約3週間は、S級コーチ養成講習会が組まれていた。試合には帯同したが、練習を見ることはほぼできない。俊輔は「本当に申し訳なかった」と言う。
あと一歩のところで足踏み。「さらに士気を高められること」を探していた。クラブが公式YouTubeチャンネルで発信する試合の舞台裏では、たとえばハーフタイムに福森晃斗と1対1で話す姿なども確認できる。それでも、力になり切れていない自分にもどかしさを感じていたようだ。
チームが好調だった時期にも思いを巡らせる。
「5か月、負けていない時に、もっと競争とか、J1でも通用するために、もっと要求しなければいけなかったかなとか。あと、若い選手にももっとアプローチできなかったかなとか。彼らを上にあげることができなかったかなとか、そういう反省はある」
いずれにしても、リーグ優勝を果たせなかった横浜FCだが、最後の最後で意地を見せた。俊輔も様々な局面でチームを助けていたのは間違いないが、「自分の力が足りないなっていうのは気づく。もっとやらないと」と、46歳のコーチは表情を引き締めた。
取材・文●広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)
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