【プロキャディー25年 梅ちゃんのツアー漫遊記】#9
【漫遊記】藤田寛之さんが来季米シニアツアーのシード入り 2人きりの全米オープン予選会を思い出した
今季序盤に2連勝した鈴木愛ちゃんのパット上手はゴルフファンならご存じでしょう。しかも、アプローチのレベルもめちゃ高いですよ。小技が得意なのは、やっぱり練習のたまものです。
僕が愛ちゃんのバッグを初めて担いだのはプロ入り2年目の2014年秋。「樋口久子 森永レディス」(千葉・森永高滝CC)です。同年の日本女子プロ選手権でツアー初優勝を挙げたとはいえ、飛距離が出る方ではなく、まだショットも不安定でした。でも、その頃からパターとアプローチは異常にうまかった。特にグリーン回りからの寄せは手の使い方が柔らかく絶妙。あれは持って生まれた独特な感覚とでも言うのかな。
専属キャディーとして15年間コンビを組んでいた藤田(寛之)さんも飛ばし屋ではありませんでしたが、アプローチとパターに関しては天才的でした。藤田さんがトッププロに駆け上がる過程を見てきたので、「この子は必ず上に行くな」と思ったものです。
今は練習量を抑えているようですが、僕がバッグを担いでいた頃の愛ちゃんは、アプローチとパターの練習時間がとても長く、練習場を離れるのはいつも最後でしたね。 ある日、愛ちゃんから「今晩、私の家族と一緒に食事をしませんか。18時ぐらいにお店へ行きましょう」と誘われたことがあり、「ぜひ、お願いします」と楽しみにしていました。
時間はとっくに過ぎてるのに…
その日、ホールアウトした愛ちゃんはいつものように練習場に向かい、最後はパッティンググリーンです。
カップに向かってひたすらボールを転がしているうちに、グリーン上に残っているのはいつものように愛ちゃんだけ。時計を見ると食事の約束時間はとっくに過ぎている。普通なら「食事へ行く時間ですから、もう引き揚げましょう」と言いませんか(笑)?
そんなことはお構いなしにボールの転がりとフォローを気にしながら黙々と打って、結局、19時ごろまで練習。その後、食事に行きました。
練習グリーンではこんなこともありました。1〜2メートルの距離を外して腹を立てている選手はよく見ますが、愛ちゃんは5〜6メートルの距離を長時間打ち続けるんです。その距離が連続して入らないと「あー! もー! なんで入らないの!」と声を出して怒り出すのです。おそらく、当時はショットがビタッビタッとピンに絡む確率が高くはなかったので、この距離を入れないと勝負にならないと思っていたのではないかな。
僕がこれまでバッグを担いだ選手の中で、藤田さんと愛ちゃんのゴルフ場にいた時間は圧倒的に長かったですね。
(梅原敦/プロキャディー)