文章生成AIであるChatGPTは自然な対話ができるだけではなく、難しい試験にクリアしたり複雑な文章を生成することもできるため、レポートや論文の作成に使われたり、試験のカンニングに使われたりといった問題がしばしば報告されています。教育現場での生成AIへの批判を受けて、ChatGPTを開発したOpenAIが公式に「ChatGPTを使ったライティングの学生向けガイド」を公開しました。
A Student’s Guide to Writing with ChatGPT
https://openai.com/chatgpt/use-cases/student-writing-guide/
OpenAIは「ChatGPTの使用方法の中には、自分で書くべき文章をAIに生成させるなど、学習に逆効果となるものもあります。しかし、アイデアを熟考する助けになったり、複雑な概念をわかりやすく教えてくれたり、下書きを見せてフィードバックを得ることができたりと、慎重に使用することで、ChatGPTは学生が厳密な思考と明確な文章を書くスキルを身に付けるのに役立つ強力なツールになります」と述べています。その上で、正しくChatGPTを使用して学習プロセスに生かす方法として、OpenAIは12項目を挙げました。
◆01 引用に関する面倒な作業をChatGPTに委託する
レポートやエッセイの作成時には、どこかで耳にしたフレーズや大まかに覚えているアイデアなどを、元資料をたどりながら明確にする作業が必要になることが多くあります。膨大な資料を隅々まで目を通して引用場所を見つけるのは大変な作業のため、「参考文献のどこに重要なフレーズがあるか」をChatGPTに見つけさせることで短縮することができます。また、十分にトレーニングされたデータセットがあれば、ChatGPTに自分で作成した文章を読ませて、「引用が含まれているのに参考文献が示されていない部分はないか」などを精査することもできます。
ただし、ChatGPTが示した情報をうのみにするのではなく、実際に資料や参考文献の重要ポイントを当たるためのガイドとして用いることが重要です。ChatGPTが示したソースの詳細は、実際に元の資料を照合して情報の正しさを確認する必要があります。
◆02 新しいトピックについてすぐに理解する
文章の中で使いたい話題や単語について、辞書や教科書の説明ではいまいち理解が難しいことがあります。難しい概念についてChatGPTに尋ねることで、会話形式で特にわからない点をかみ砕きながら理解していくことができます。
◆03 関連情報源のロードマップを入手する
取り扱うトピックの重要な関連研究や参照すべき学者、欠かせない情報源などをChatGPTに提案してもらうことができます。ただし、あくまで実際に資料にあたる作業は自分でしなくてはならず、ChatGPTは一次ソースや査読済み論文を読む代わりにはならないことに注意してください。
◆04 具体的な質問をして理解を深める
とあるトピックに対し何らかの疑問が浮かんだとしても、本やインターネットの記事ではその疑問について取り扱っていない場合、コンタクトの取れる専門家がいないと解決が難しいことがあります。ChatGPTは辞書的な情報を提示するだけではなく、会話形式で具体的な質問にも対応しやすいため、複雑なトピックの理解におけるボトルネックを取り除いてくれる可能性があります。
◆05 構造に関するフィードバックを得てフローを改善する
文章のアウトラインを作成したら、「私のアウトラインを見て、エッセイの構成についてフィードバックをください。私の論理は分かりやすいですか、私の考えは論理的に次から次へと流れていますか。議論を強化したり、順序を明確にしたりするために、構造をどこを改善すればよいですか?」と尋ねてフィードバックを得ることができます。
◆06 逆アウトラインでロジックをテストする
逆アウトラインとは、各段落の要点を特定することでエッセイの構造を評価する手法です。文章をChatGPTに読ませて「私のエッセイの逆アウトラインを作成してください」と要約させることで、文章を見直すだけでは見えにくかった構造を一目で確認できて、一歩引いてアイデアの論理的な流れを評価するのに役立ちます。
◆07 ソクラテスの対話を通して自分の考えを発展させる
ChatGPTに文章のアイデアや構造について明かした上で、「私のアイデアについて、課題の採点基準をふまえて的を絞った質問をいくつか投げかけてください」と要求すると、対話形式でアイデアを磨いていくことができます。ただ自分の中だけでアイデアを練るよりも、対話の中で検討していくことで、アイデアを洗練させていくことができます。
◆08 反論を求めて論文のプレッシャーテストを行う
アイデアや文章の論理展開を磨くためには、質問だけではなく反論を受け取ることも重要です。ChatGPTは、想定される反対意見や、自分のアイデアの弱点を浮き彫りにしてくれます。
◆09 自分の考えを歴史上の偉大な思想家と比較する
ChatGPTは単純な議論だけではなく、「ルネ・デカルトなら自分の立場から私の文章にどのような意見をするか?」など、ロールプレイをすることもできます。ChatGPTに特定の立場を演じてもらうことで、通常は見えてこなかった視点を得られることがあるはずです。
◆10 反復的なフィードバックを通じて文章の質を高める
文章の質を高めるための方法論はいくらでも参照することができます。また、友人や教師に文章を見てもらってフィードバックを得る機会も重要です。ChatGPTはそれに加えて、繰り返し文章を見てもらった上で、前回のフィードバックを踏まえた評価をしてくれる専属的な家庭教師のように役立てることができます。
◆11 Advanced Voice Modeを読書の補助として使う
ChatGPTには、文章を入力して対話できる一般的な機能のほか、音声で話しかけて応答を受け取る「Advanced Voice Mode」もあります。本を読みながら気になった部分があった時、キーボードに入力する手間により読書のペースを妨げられることなく、読んでいる部分を口に出しながら質問をすることが可能です。
OpenAIがスカーレット・ヨハンソンのように聞こえると批判され話題となったChatGPTのアドバンスト音声モードを有料会員向けに提供開始 - GIGAZINE
◆12 形式的にやるのではなく、スキルを磨く
学校のレポートは、成績を上げるための要件であるだけでなく、自分の能力を養う機会でもあります。ただ形式的に処理するのではなく、批判的に考えて明確に書く能力を養う方法を得るためにどうすればいいか、ChatGPTに依頼してみる姿勢が重要です。
最後にOpenAIは、「学術研究の一環として、情報源について『透明性』を保つことが重要です。ChatGPTは非倫理的な方法で使用される可能性もあるため、ChatGPTがあなたの課題にどのように関わったか正確に把握できれば、教授陣は安心するはずです。そのため、ChatGPTをどのように使用しているかをオープンにすることも重要です。AIの使用状況を監査する方法を教授に積極的に提供することで、学術的誠実さへの取り組みを示すとともに、AIを手抜きの方法ではなく、学習をサポートするためのツールとして使用していることを示すことができます」と述べています。
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