希望退職者の募集で今年10月に富士通を去った社員は、間接部門の幹部だと報じられています。間接部門とはバックオフィス業務などの直接的に売上貢献をしない部署。事業の成長に必要な分野に特化した人材育成を先鋭化させた動きと見ることができます。

◆2022年にも3000人規模の人員整理を実施

 富士通は期ごとに重点的に取組む施策とゴールを設定。チームとしての目標を重点テーマとして定め、メンバーはそれを達成するために仕事に取り組みます。その中で個人にも目標が設定され、上司との間で月一回の一対一ミーティングを行い、達成状況や認識合わせをします。個人のマネジメントを徹底させているのです。

 更に職種と職責の高さで職務を区分し、FUJITSU Levelを設置。この水準に応じて報酬を決定する仕組みが設けられているため、実績に応じた給与が得られやすくなっています。

 富士通は2022年にも50歳以上の幹部社員を対象に希望退職者を募集しており、3000人以上の応募がありました。このとき、代表取締役副社長・磯部武司氏は人材構成の変革スピードを上げる必要があるとの認識を示していました。

 その言葉の通り、2024年度の新卒採用は800名(実績見込み)、キャリア採用は2000名以上(計画数)。新陳代謝を促している様子がわかります。

 富士通は賃上げにも積極的。2024年総合労働条件改善交渉においては、組合モデルの要求ポイントとなる研究開発に従事するリーダークラスの現行賃金水準およそ40万円に対して、1万3000円の賃金水準改善が要求されました。それに対して、満額回答をしています。

 組織として必要な人材への投資を加速しているのです。

 日本は長らく終身雇用制度が定着していました。富士通はこうした日本の常識に反し、収益性を高めるための仕組みづくりや人員整理を大胆に行うという、新たな道を模索しているように見えます。

<取材・文/不破聡>

【不破聡】
フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界