[画像] 野球 × ヒップホップ × ストリートから着想。 ローリングスの新ブランド「コンバットMFG」にみる若年層攻略法

記事のポイントローリングスの新ブランド「コンバットMFG」は、若者をターゲットにバスケットボールやヒップホップ文化を反映したキャンペーンを展開。D2Cのみの販売で、ナンバリングされた限定版ドロップやコラボ商品を取り扱う。NIL規則緩和を活用し、若手アスリートを広告に登用。SNSで高い影響力を持つキャッチャーも参加。
世界最大の野球用品およびアパレルメーカーのひとつであるローリングス(Rawlings)は、若者向けの新しいブランドの展開を計画するにあたって、自社が扱うスポーツよりもバスケットボールから多くのインスピレーションを受けた。

バスケットボールがインスピレーション源に

そのブランド名はコンバットMFG(Conbat MFG)で、おもに高校生アスリートとZ世代をターゲットにしたキャンペーンが10月28日にローンチされた。クリエイティブエージェンシーのジ・オルトリーグが考案したこのキャンペーンは、ヒップホップビートをバックにした都会的で粗いストリートフォトスタイルで撮影されており、ファッションとスポーツのクロスオーバーを定義したヒップホップ、バスケットボール、スニーカーカルチャーの融合を想起させることを意図している。

「コンバットMFG」のキャンペーン動画。ヒップホップのMVを彷彿とさせる

「野球は間違いなくバスケットボールと同じ道を歩んでいる」と、ローリングスのオムニチャネル担当バイスプレジデントのディラン・カヴァナー氏は言う。バスケットボールと同様に、「What Pros Wear(プロが着用しているもの)」のようなウェブサイトや、たとえばフェルナンド・タティス・ジュニアといったスタイリッシュな選手を通して、野球選手がどんなウェアを着ているかに注目したサブカルチャーが急成長している。タティス・ジュニア選手は、ティファニー(Tiffany & Co.)にインスパイアされた特注スパイクなど、フィールド上で人目を引くウェアで知られている。「メジャーリーグの選手たちはもっと自分自身を表現している。スライディングミット(塁にスライディングする際に手を保護するために着用するカラフルなデザインのグローブ)、シューズ、ネックレスにそれを見ることができる」と、カヴァナー氏は話す。

D2Cモデルとストリートウェアの影響

コンバットブランドの主力製品は野球のバットだが、ローンチ時にはTシャツ、帽子、バッティンググローブ、バットグリップも含まれる。カヴァナー氏によると、今後のシーズンにはさらに多くの製品カテゴリーが計画されているという。ローリングスがD2Cと卸売を組み合わせているのとは対照的に、コンバットは完全にD2Cでの販売となり、同社のほかのブランドとは区別されている。コンバットオンラインストアでは、ローリングスとの関係については一切触れていない。だがスニーカーやストリートウェアからのインスピレーションは、単なる美学にとどまらない。コンバットは約500ユニットの限定版ドロップで製品をリリースする。各ドロップはナンバリングされ、コラボレーションも頻繁に行う予定だ。第一弾となるコレクションにはニューエラ(New Era)傘下のスポーツブランド「47ハッツ(47 Hats)」とのコラボレーションが含まれている。「主力商品はバットだが、このブランドは本当に何でもありだ」とカヴァナー氏は言う。「製品ローンチの障壁を取り払っているので、すばやく方向転換して新しいことに挑戦できるだろう」。

NIL規則が変更に 若手アスリート起用による新戦略

ジ・オルトリーグは、コンバットのマーケティングローンチを考案する際に、最近変更された「名前、イメージ、肖像権(NIL)」に関する規則によって学生アスリートがブランド契約を受け入れることが許可されるようになったことを受け、それを活用して注目されている若手アスリートを採用した。レイクビューアカデミー(Lakeview Academy)のキャッチャーで、インスタグラムに140万人、TikTokに290万人のフォロワーがいるジェイデン・ウォルトン氏は、コンバットのキャンペーンに参加している数人の若手アスリートのひとりだ。ジ・オルトリーグの共同エグゼクティブクリエイティブディレクター、キミ・ピーターソン氏は、「我々の計画は、これらの若者たちを世に送り出し、ミュージックビデオのように撮影することだった」と語る。「我々は彼らをスターのように扱った」。NIL規則の緩和は、WNBAのようなプロスポーツリーグにとって追い風となっている。WNBAは、学生選手がキャリアの早い段階でファン層を形成することで恩恵を受けてきた。MLBの視聴率は今年5%伸び、10月25日に開幕したワールドシリーズは、現在一試合あたり400万人近くが視聴している。「我々は長年にわたって多くのプロアスリートと仕事をしてきた」と、ジ・オルトリーグの共同エグゼクティブクリエイティブディレクター、リック・アルバーノ氏は言う。「だがキャリアをスタートさせたばかりのこうした若者たちには非常に熱意がある。ソーシャルメディアに囲まれて育ち、自分のビジネスを構築している。彼らは自分が何をしているのかわかっているのだ」。[原文:Baseball brands are taking cues from basketball’s relationship with fashion]DANNY PARISI(翻訳:Maya Kishida、編集:戸田美子)