漫画「ドラえもん」には秘密道具の地球破壊爆弾が登場しますが、冷戦下のアメリカではたった1発で人類を滅亡に追いやる核兵器を製造しようという、笑い事では済まない極秘計画「サンダイヤル計画(Project Sundial)」が実際に進められていました。現代の常識では考えられない狂気の兵器が考案された背景や、計画の実態について教育系YouTubeチャンネルのKurzgesagtがアニメーションで解説しています。
The Most Insane Weapon You Never Heard About - YouTube
アメリカの極秘プロジェクト「サンダイヤル」は、記事作成時点でも大部分が機密扱いの計画で、その目的は1発で人類文明を破壊する威力を持つ核爆弾を作ることでした。その破壊力はトリニトロトルエン(TNT)100億トン分で、これを広島に投下された原爆に換算すると、1分に1発落としても15カ月かかるという想像を絶するエネルギーです。
そのような兵器が計画された理由を知るには、冷戦当時の世情を理解する必要があります。1945年に40歳だったアメリカ人は、1905年生まれ。当時、世界の多くは君主によって支配され、電気はアメリカの家庭の3%にしか通っておらず、都市には馬車が走り、初期の飛行機が発明されたばかりで、戦争による死者数は年間10万人未満でした。
しかし、それから1945年までに起きた2回の世界大戦によって2400万人の兵士と5000万人の民間人が死亡し、テレビや電子レンジ、ジェット機、そして核爆弾が突然人々の世界観を一変させました。このような急激な変化は、当時の人々の理解を超えたものだったと言えます。
一瞬にして世界のどこにいても安全ではなくなり、核兵器を持たない国は核武装した国になすすべもなく踏みにじられる運命だという考え方が主流になりました。
1946年、アメリカは核兵器を国際的な管理下に置き、究極的には核の廃絶を目指す「バルーク案」という計画を提案したことがありますが、原子爆弾の軍事的優位性があまりにも大きいため、核の力を手放すことは結局できませんでした。
それからわずか3年後、ソ連が核実験を成功させ、すべてのアメリカ人を驚嘆させました。ソ連の技術力はアメリカに後れを取ってなどいないことが、誰の目にも明らかになったからです。
驚異が恐怖に、恐怖が狂気に変わるのに時間は必要ありませんでした。
戦争という概念自体がより早く、より強く攻撃できる核兵器を保有することへと変容し、1946年には世界にたった9発しかなかった核爆弾が1950年には300発に、1960年には2万発になると予想されました。核軍拡競争の到来です。
恐怖には、もっと大きな恐怖で対抗しなければなりませんでした。そして、ひとりの天才科学者がそれを実現する方法を知っていました。
エドワード・テラーは、ハンガリー出身の優秀な理論物理学者で、ウランの核分裂連鎖反応で爆弾を作ることができると最初に気づいた人物でもあります。しかし、テラーにとって既存の原子爆弾は威力不足でした。
「自国の安全のためにはさらに大きな爆弾が必要だ」と考えたテラーは、政治家たちにもっと破壊力がある核兵器が必要だと詰め寄りました。
この発想は当時の基準で見ても過激なものでしたが、テラーにとっては幸運なことに、ソ連の急速な核開発がテラーを後押ししました。
こうして白紙の小切手を手にしたテラーは、念願の新兵器、水素爆弾の開発にこぎ着けます。
水素爆弾には原子爆弾が搭載されていますが、これはあくまで起爆剤です。最初の段階で原子爆弾が爆発すると、核融合燃料に膨大なX線が集中し、燃料を激しく圧縮して核融合を起こし、一瞬だけ太陽が燃えるのと同じ状況を地球上に生み出します。
1952年に初めてテストが行われた水素爆弾は、太平洋の島を瞬時に地図から消し去りました。
そのわずか2年後、テラーはさらに強力な爆弾をテストしました。南太平洋にあるマーシャル諸島のビキニ環礁で実験が行われたこの新兵器は、広島の原子爆弾の1000倍の威力を示し、世界を震え上がらせました。
しかし、テラーは満足しませんでした。そして、またしても好都合なことに、ソ連が独自の水素爆弾の実験に成功したことで恐怖は最高潮に達しました。
ここでやっと極秘プロジェクト「サンダイヤル」が登場します。この計画のほとんどは機密ですが、実際に取り組みが進められ、テストも予定されていたことがわかっています。
サンダイヤルの本質は、戦争用の核兵器ではなく「世界破壊兵器」でした。核兵器とは異なり、サンダイヤルは爆撃機に搭載して目標に投下する必要がありません。世界を破壊できるなら、どこにあっても同じだからです。
実際のところ、サンダイヤルの設置予定場所がアメリカの中心だったのか、遠隔の離島だったのか、洋上の船舶だったのか、具体的な計画はわかっていませんが、それがいかに狂気的なのかはテラー自身がよく知っていました。
テラーが考えたのは究極の抑止力、つまり「もし私たちや私たちの同盟国を攻撃するなら、私たちは世界を破壊する」というメッセージでした。
技術的には、サンダイヤルはそれほど複雑なものではなく、おそらく「核のマトリョーシカ人形」のようなものだったと考えられています。
サンダイヤルを際立たせているのはその巨大さと威力で、重さは2000トン、250メートルの長さの貨物列車と同じくらいでした。
そして、その爆発力は少なくともTNT100億トン分はありました。
サンダイヤルをアメリカのネバダで爆発させたらどうなるか、Kurzgesagtは専門家と協力してシミュレーションを行っています。
まず、起爆と同時に直径最大50kmの純粋なエネルギーの火球が出現します。
火球は光の速さで熱を放射し、400km以内の樹木や家、人々は即座に燃え上がって炎に包まれ、近辺の砂漠は一面のガラスと化します。
続いて爆風が発生し、上空にあった大気が宇宙に激しく吹き飛ばされ、アメリカ全土を震わせるマグニチュード9の地震が発生し、衝撃が世界中を駆け巡ります。
北米の森林は燃え、放射性降下物が混じった煙が発生し、世界中を死の雲が覆い尽くします。その効果は、核戦争の結果というよりも巨大火山の噴火や小惑星の衝突に近いものと言えます。
その結果、世界の温度が急激に10度下がり、ほとんどの水源が汚染され、作物はできなくなり、アポカリプス的な核の冬が到来します。
いいニュースは、サンダイヤルが建造されることはなかったということです。秘密裏にプロジェクトを知らされた政治家たちは計画を拒絶し、アメリカ軍でさえ「いささかやりすぎだ」と考えました。
核兵器の狂気の時代にあってさえ、サンダイヤルは度を超えた狂気の沙汰であり、その建造は人道に対する罪だとみなされました。
また、サンダイヤルには「仮に敵国が友好国の政府を転覆させたとして、だからといって世界を終わらせるべきか?」という現実的な問題もありました。サンダイヤルを使えば確かに敵国を滅ぼせますが、同時に自国も友好国も滅びてしまいます。
悪いニュースは、サンダイヤルの狂気は終わっていないことです。冷戦のピーク時に人類が保有していた核兵器は7万発以上で、記事作成時点では1万2000発まで減りましたが、人類文明を何回か滅ぼすのには十分過ぎるほどです。
1発の爆弾で世界を焼き尽くす代わりに、超大国は大小さまざまな核兵器を生産し、潜水艦やミサイルサイロに保管することにしました。
しかし、これによって核兵器は撃とうと思えば撃てる現実的な脅威となりました。そして、その結果として引き起こされる連鎖反応がどのような事態を招くのかは、誰にもわかりません。
実際のところ、サンダイヤルが計画された時と現代の違いはあまりありません。アメリカは核兵器の近代化計画に巨額の予算を割り当てており、中国は軍備を拡大して2030年までに1000発以上の核兵器を配備する見通しです。
もし異星人が、自らを滅亡の瀬戸際に立たせている人類を見たら、思わず「大丈夫?ハグする?」と尋ねてくれるかもしれません。
Kurzgesagtは「私たちは、人類として、瞬時に自滅する心の準備ができているのか自問すべき時期を迎えています」と述べました。
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