11月10日に行なわれた高校サッカー選手権の神奈川県予選決勝。日大藤沢、桐光学園、桐蔭学園といった全国レベルのチームが準決勝までに姿を消したなか、横浜創英に2−0で勝利した東海大相模が激戦区の戦いを制した。
夏のインターハイは4度の出場を誇り、今年は初めてベスト16に進出。その一方で冬の選手権には縁がなく、何度も壁に阻まれてきた。それでも地道に選手の育成と発掘を積み重ねてチームを強化。東海大福岡などでコーチを務め、2011年に指揮官となった有馬信二監督のもとでようやく初の大舞台行きの切符を手にした。
攻撃的なスタイルで個性溢れるメンバーが揃うなか、突出した武器を持つ選手がいる。それが左SBの佐藤碧(3年)だ。
持ち味は正確な左足のキックと身体の強さを活かした守備。そして、何より目をひくのが、圧倒的な飛距離のロングスローだ。
軽く投げてもニアサイドを超え、ファーサイドまで届きそうなほど。ミドルゾーンより前のスローインは、FKと同等の価値があると言っても過言ではない。
もともとロングスローを投げていたわけではなく、取り組んだのは昨年から。しかし、手の怪我などもあり、満足にトライすることができなかった。今季は一から鍛え直し、週1、2回は練習後にスローインのメニューを取り入れてきた。
「投げていくと、コツが分かってきた。毎回100%のパフォーマンスで調整をしている」
独学でスローインを研究し、イメージは手のひらに乗せるような形でボールを掴むこと。リリースの際は手首でスピンをかけるようにする。
「スピンをかけたほうが、風に乗りやすいので飛距離も出る」
とはいえ、そもそも地肩が強くなければ、飛距離は出せない。本人曰く、幼い頃から野球も好きで、遊びの延長でよくやっていたことが大きいと分析する。小学校の頃は野球部の同級生にも負けずとも劣らない遠投ができたそうで、自然と肩が鍛えられていた。
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万全な状態で投げるために試合前後のケアにも余念がなく、そこに関してはアドバイスを求めた。佐藤は言う。
「野球部の仲間に色々教えてもらった。試合前の準備では肩の温め方を聞いたりしていて、試合後のリカバーではアイシングの方法を聞いている」
東海大相模の野球部は、言わずと知れた名門。春夏通じて甲子園優勝5回を誇り、OBには原辰徳氏(元巨人監督)や今シーズンに最多勝を挙げた菅野智之(巨人)らがいる。全国トップクラスの仲間に肩のケアを教わることができた。
強肩とキックで鳴らすSBにはJクラブも注目していたが、卒業後は大学に進学予定。関西の強豪で技を磨き、プロを目ざす。憧れている元ブラジル代表のマルセロのような攻撃的なSBとなるべく、まずは最後の冬で自身の名を全国に知らしめる。
取材・文●松尾祐希(サッカーライター)
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