記事のポイント
英国のニュースメディアリーチplcでは、Google Discoverの参照トラフィックが検索減少を上回る伸びを示している。
リーチはDiscover向けに「好奇心のギャップ」を活用した見出しを推奨。
AIオーバービューの拡大により、リーチの検索トラフィックは特にエンタメ分野で減少傾向にある。
英国のニュースメディアリーチplcでは、Google Discoverの参照トラフィックが検索減少を上回る伸びを示している。
リーチはDiscover向けに「好奇心のギャップ」を活用した見出しを推奨。
AIオーバービューの拡大により、リーチの検索トラフィックは特にエンタメ分野で減少傾向にある。
Google Discoverは、パブリッシャーにとってGoogle検索を上回る参照トラフィックの供給源になりつつあるのだろうか?
少なくとも英国のニュースメディア、リーチplc(Reach plc)にとって、その効果はクリックベイトではなく、本物だ。
多くのメディア企業が今年経験したように、英国のパブリッシャーであるリーチでも、Google検索から獲得する参照トラフィックは過去12カ月にわたって減少を続けている。
2024年9月、リーチがGoogle検索から得たトラフィックは前年比25%減だった。「大幅な減少だ」と、リーチの販売担当オーディエンスディレクターを務めるマーティン・リトル氏は、10月28日にスペインのバルセロナで開催されたDIGIDAYパブリッシングサミット・ヨーロッパのステージ上で語った。
もうひとつの重要な事実として、リーチがGoogleのもうひとつのトラフィック供給源、すなわちGoogle Discoverから得る参照トラフィックは、前年比で増加しただけでなく、検索トラフィックの減少を補って余りある伸びを示した。
「減少分を埋める以上の効果だった」と、リトル氏は言う。現時点で、リーチのサイトへのGoogle由来トラフィックのうち、60〜70%はGoogle Discover、残りがGoogle検索であると、同氏は説明した。
ほかのパブリッシャーにおいても、Google Discoverはトラフィックの供給源として重要性を増している。これは一時的なものかもしれないが、リーチは、このコンテンツ発見プラットフォームの仕組みをある程度把握しつつある。
「我々は昨年11月、画期的なひらめきの瞬間を経験した。Discoverと検索とで見出しのタイプについて比較する際、ジャーナリストは見出しのタイプについてしっかりと考える必要があると気づいたのだ」と、リトル氏は語る。
検索向けの見出しでは通常、個々のユーザーの検索クエリに合致するように調整されたキーワードが中心となる。しかし、Google Discoverの見出しにおいて重要なのは、リトル氏の言葉を借りれば「好奇心のギャップ」だ。同氏の定義によれば、これは「(読者に)ストーリーの本質を伝えつつ、決定的な知るべき情報をその(見出しの)一部として含まない」ことである。
Google Discoverで成功する見出しの作り方
具体例を見てみよう。この記事の最初の1文は、記事の本質(Google Discoverは参照トラフィックの供給源として、Google検索にと肩を並べている)を伝えることを意図したものだが、同時に決定的な情報(肩を並べるどころか、あるひとつのパブリッシャーにおいては、Google検索を上回ってさえいる)を明かすことを避けている。
ジャーナリストに見出しの適切な作成を促すため、リーチはフローチャートを開発した。このフローチャートではまず、目的のプラットフォームはどれかが尋ねられる。複数の見出し(自社サイトのホームページ向け、ソーシャルメディア向け、検索向け、Discover向けなど)が必要である状況に変わりはないからだ。
目的が検索であれば、ジャーナリストにはGoogleトレンドのデータを参照し、検索と親和性の高い見出しに適したキーワードを選ぶことが推奨される。これに対し、Discoverが目的の場合、ジャーナリストは記事のもっとも興味深い要素に焦点を当てた見出しを書くように指示される。
「どの記事についても、いちばん興味深い部分を見出しに持ってくるべきだと考えるのは当然だろう。残念ながら、Google検索ではそれが報われるとは限らない。だがDiscoverなら報われる」と、リトル氏は語った。
これはとりわけ、同氏が言うところの「ソフトレンズ」記事、すなわちライフスタイル記事によくあてはまる。この種のコンテンツはDiscoverで受けがいい(反面、ニュース記事は検索の方が向いている)。それだけでなく、ライフスタイルコンテンツはGoogleのAIオーバービュー(AI Overview)による検索トラフィックの侵食から、負の影響を受けやすい。
リーチはSEO(検索エンジン最適化)の専門家と協力し、サイトの検索由来トラフィックのモニタリングを継続している。GoogleがAIオーバービューの対象地域を米国から、英国やその他の地域にまで拡大したことに呼応して、同社の検索由来の参照トラフィックは、セレブ・エンタメ関連のコンテンツに関して減少していると、リトル氏は説明する。
「検索の劣化にはさまざまな要因が関与している。AIオーバービューはそのひとつだ。『大した影響はない』と皆が口々に言うが、私は影響はあると考えている」と、リトル氏は話す。しかし、少なくとも今のところは、Google Discoverが検索の劣化による損失を補填しているようだ。
[原文:For Reach plc, Google Discover has offset search-driven traffic declines]
Tim Peterson(翻訳:的場知之/ガリレオ、編集:坂本凪沙)