by Simona Scolari
アメリカ海洋大気庁(NOAA)漁業局が、アメリカの西海岸沿いにあるカリフォルニア海流生態系において、これまで存在が確認されていなかった日本のマイワシ(Sardinops melanosticta)を発見したと報告しています。
Molecular Ecology | Molecular Genetics Journal | Wiley Online Library
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/mec.17561
“A Total Shock” - Japanese Sardines Detected in U.S. Waters
https://scitechdaily.com/a-total-shock-japanese-sardines-detected-in-u-s-waters/
NOAAの研究者であるゲイリー・ランゴ氏らは当初、カリフォルニアマイワシ(Sardinops sagax)の集団遺伝構造を調べる目的で研究を始めました。しかし、ゲノム解析の過程で予想外の強い遺伝的分化が見られ、詳しい分析の結果、日本のマイワシの存在が判明したとのこと。
NOAAの研究チームは2021年と2022年に345個体を採取しています。このうち、2021年に採取したサンプルはすべてカリフォルニアマイワシでしたが、2022年に採取したサンプルのうち50個体が日本のマイワシであることが判明。さらに2023年の調査では採取したサンプル825個体のおよそ4割に当たる334個体が日本のマイワシと同定されました。
by feministjulie
研究チームは2013年から2021年までの過去の調査サンプルも分析しましたが、この期間には日本のマイワシは検出されませんでした。これは、日本のマイワシの太平洋横断が2022年前後に起こった現象である可能性を示唆しています。
発見された日本のマイワシの年齢は1〜3歳で、主に2歳魚が優占していました。分布範囲はワシントン州から南カリフォルニアまでと広く、時にはカリフォルニアマイワシと一緒に群れを形成していることも確認されました。
日本のマイワシとカリフォルニアマイワシは外見こそほぼ同じですが、NOAAの研究チームは最新のゲノムシーケンス技術を活用し、数百万の遺伝マーカーとミトコンドリアゲノムの完全配列を用いて、両種が遺伝的に異なる別種であることを確認しています。研究チームによると、日本のマイワシとカリフォルニアマイワシは約20万〜30万年前に分化したと推定されるとのこと。この時期は氷河期と重なっており、北太平洋の寒冷化が両種を地理的に隔離し、種分化を促進したと考えられています。
by Brian Gratwicke
研究チームは、日本のマイワシがカリフォルニア海流生態系でみられるようになった原因について、過去10年間に北太平洋で観測された異常な海洋熱波の影響で、日本のマイワシの移動を可能にする好適な環境条件の回廊が形成された可能性を指摘しています。
今後の課題として、研究チームは両種の交配可能性、生態系への影響、日本のマイワシがこの新しい生息域で存続するかどうかなど、多くの疑問が残されていると述べています。また、この発見は気候変動が海洋生態系に与える影響を理解する上で重要な事例となり、長期的なモニタリングの重要性も示していると論じました。
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