世代を超えて愛される「うた」がある。歌唱したい「うた」がある──。
◆本人による歌唱アドバイス 動画
演歌・歌謡曲シーンから注目の作品を毎月紹介する連載企画「いま、聴きたい演歌・歌謡曲(本人歌唱指導付き)」第11回目となる今回は、米寿88歳を迎えた北島三郎の「東京の空」をはじめとし、大江裕「北海ながれ歌」、木村徹二「男の拳」、田中あいみ「ドアを開けてみた with 木梨憲武」、野村美菜「哀愁埠頭」を紹介する。
(協力:日本クラウン)
■北島三郎「東京の空」
現在88歳。お客様がいる限り生涯現役を貫くと決めた北島三郎の新曲。1年に1曲という歌手も多い中、年に2〜3曲をリリースするというペースを近年まで続け、出したシングルの数は正確には数えられないほど(おそらく300枚はある)。2022年以降は年に1枚のペースに落ち着いたものの、ほとんどの作曲も自ら手がけているなど、もはやいち音楽家として常識をはるかに超えたレベルにある偉人だ。
新曲の「東京の空」は、久々に自らの作曲ではなく、弦哲也が作ったもの。2年前の2022年に北島はデビュー60周年を迎え、同時に日本クラウンの創立60周年でもあったことから、クラウン社長の片岡恵介の発案で、北島へのプレゼントとして自ら北島の半生を詩にまとめ、そこに若き頃に歌手として北島の前座を務めたという弦哲也が曲をつけた。それを<令和・歌の祭典2022>というコンサートで出演歌手らによって歌われたものが初披露となったが、その曲を北島自身も歌うと決意したというもの。カップリングは北島自身が作詞・作曲し、自身の父親を歌ったと思われる「おやじの言葉」。年輪と声のまろやかさ、そして歴史を感じる。歌い続けることに意味がある。まだまだ新しい歴史を重ねていってほしいと思う。
「東京の空」発売情報
CRCN-3632 定価:¥1,500(税抜価格 ¥1,364)
【収録曲】
1. 東京の空
作詩:片岡恵介 / 作曲:弦 哲也 / 編曲:南郷達也
2. おやじの言葉
作詩:原 譲二 / 作曲:原 譲二 / 編曲:南郷達也
3. 東京の空 [オリジナル・カラオケ]
4. おやじの言葉 [オリジナル・カラオケ]
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◆北島三郎 配信リンク
■大江裕「北海ながれ歌」
デビュー15年目。80年代生まれの中堅歌手。素人時代から弟子入りを希望していたという北島三郎に見初められてデビューし、その歌い方も師匠直系。憧れをそのまま芸風としてしまったといっていい。ある意味、伝統を受け継ぐ者だ。
通算21枚目となる新曲の「北海ながれ歌」は、様々な思いを心に秘めながら北海道の街から街へと流れていく男の歌。大江自身は大阪・岸和田の出身だが、近年は師匠の出身地である北海道での仕事が増えているようで、タイムリーだ。ゴリゴリの硬派な歌になってもおかしくないテーマだが、どこか柔らかな印象があるのは、女性作詞家のかず翼が手がけたからだろうか。作曲は弦哲也で、さすがの安定感だ。カップリングの「さいはて浪漫」もまた北海道をテーマにした曲だが、80年代の森進一が歌いそうな、少しポップス調だがスケールの大きな世界観が特徴だ。まさに「浪漫」そのもの。これは北海道の人たちに長く愛される曲になりそうだ。作詞はさくらちさと、作曲は弦哲也。
「北海ながれ歌」発売情報
CRCN-8702 定価:¥1,500(税抜価格 ¥1,364)
【収録曲】
1. 北海ながれ歌
作詩:かず翼 / 作曲:弦哲也 / 編曲:猪股義周
2. さいはて浪漫
作詩:さくらちさと / 作曲:弦哲也 / 編曲:猪股義周
3. 北海ながれ歌 [オリジナル・カラオケ]
4. さいはて浪漫 [オリジナル・カラオケ]
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◆大江裕 配信リンク
■木村徹二「男の拳」
鳥羽一郎の次男、木村徹二の2枚目のシングル「みだれ咲き」を再びご紹介。初回盤のカップリング曲は「最後の酒」だったが、それを「男の拳」に差し替えて「特別盤」として再リリース。その「男の拳」にフォーカスしてみよう。
デビューの時のキャッチフレーズが“アイアンボイス”であったように、183センチの体格とスポーツで鍛えた体は、まさに力強い男といったイメージ。父が漁師として男らしさを歌ったのとはまた違った精悍さがある。それでも、男が拳を握る時は同じだ。悔しい時、苦しい時、誰かを守りたい時。言葉で語るよりも拳が物語るものがある。おそらく体育会系の環境で育った木村もそういった強さを知っている。力強くも優しさを内包した歌声は、近年の演歌の世界では、だんだんと貴重なものになりつつある。作詞・作曲は実兄の木村竜蔵。まさに鳥羽ファミリーの男の系譜を受け継いだ1曲といえるだろう。
「みだれ咲き」特別盤 発売情報
CRCN-8668 定価:¥1,500(税抜価格 ¥1,364)
【収録曲】
1. みだれ咲き
作詩:木村竜蔵 / 作曲:木村竜蔵 / 編曲:遠山 敦
2. 男の拳
作詩:木村竜蔵 / 作曲:木村竜蔵 / 編曲:遠山 敦
3. ハマナスの眠り唄 (アコースティック ver.)
作詩:内館牧子 / 作曲:三木たかし / 編曲:矢田部 正
4. みだれ咲き [オリジナル・カラオケ]
5. 男の拳 [オリジナル・カラオケ]
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◆木村徹二 配信リンク
■田中あいみ「ドアを開けてみた with 木梨憲武」
梅谷心愛、舞乃空とのユニット「3人娘Z」の活動も好調な田中あいみ。もともと演歌とは違ったソウルフルな歌い手だが、今回はかなり攻めた企画。とんねるずの木梨憲武のプロデュース、所ジョージが作詞・作曲を手がけた2曲を配信で先行リリースするというもので、もともとはTBSラジオ『土曜朝6時 木梨の会。』にゲスト出演したことがきっかけで生まれた企画だという。
先に配信されたのは、木梨憲武とのデュエットによる「ドアを開けてみた」。演歌テイスト・ゼロのレイト80’sなシンセポップ風歌謡曲で、打ち込みによるダンサブルで少しラテンなノリのビートがカッコいい。所さん、やっぱり天才です。田中の声の炸裂ぶりはいつもの演歌とはまた違った魅力で、ものすごい迫力。これ、アナログ盤があったら歌謡曲DJがかけますよ。クレイジーケンバンドの横山剣さんあたりのセンスとも相性がいいんじゃないかなと想像。もう1曲の、所さんとの「仁川エアポート」もすでに配信されていてこれもまた名曲だが、こちらのご紹介はまた別の機会に。
「ドアを開けてみた with 木梨憲武」発売情報
配信リンク:https://lnk.to/doorwoaketemita
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◆田中あいみ 配信リンク
■野村美菜「哀愁埠頭」
今年でデビュー20周年。10年目には“三代目コロムビア・ローズ 野村未奈”と改名するなど何度かの改名やレコード会社の移籍、活動休止期間もあった歌手だ。
活動休止期間を経て、5年ぶりとなる久々の新曲「哀愁埠頭」は、タイトルからは想像できないような、60年代のビート歌謡風のリズムナンバー。イタリアンツイスト風のリズムにテケテケなギターで、男と女のすれ違いを歌う。カップリングの「ブルース色の雨が降る」は、テナーサックスが咽び泣く、70年代のクールファイヴのようなブルース歌謡。そのせいか、歌には少し唸りのようなフィーリングが聞き取れる。伸ばした声に粘っこい個性があるので、コブシを回す演歌調よりもポップス調の方が似合うような気がする。どちらの曲もモズライトのような音のギターが入っていて、狙い所とこだわりが見えるようだ。両曲とも、作曲は師匠である水森英夫。
「哀愁埠頭」発売情報
CRCN-8703 定価:¥1,500(税抜価格 ¥1,364)
1. 哀愁埠頭
作詩:さくらちさと / 作曲:水森英夫 / 編曲:竹内弘一
2. ブルース色の雨が降る
作詩:さくらちさと / 作曲:水森英夫 / 編曲:竹内弘一
3. 哀愁埠頭 [オリジナル・カラオケ]
4. ブルース色の雨が降る [オリジナル・カラオケ]
5. 哀愁埠頭 [一般用カラオケ(半音下げ)]
6. ブルース色の雨が降る [一般用カラオケ(半音下げ)]
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◆野村美菜 配信リンク
文◎池上尚志
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