世の中には膨大な数の男女がいるわけですが、交際し、求婚し、結婚するのは幸運としか言いようがありません。ですが、残念ながら、途中で関係が終わってしまうことも珍しくありません。
厚生労働省の人口動態統計によると2023年の離婚件数は183,814人。一方、結婚件数は474,741人なので3組に1組は離婚する計算です。筆者は行政書士、ファイナンシャルプランナーとして夫婦の悩み相談にのっていますが、夫と妻がどちらも離婚に積極的なケースは意外と少ないのが現状です。ほとんどの場合、離婚したい側、離婚したくない側が存在します。基本的には夫と妻、双方の同意がなければ離婚できないので、「離婚したくない人」を説得しなければなりませんが、なかなか一筋縄にはいきません。

◆10対0で相手が悪いケースはあくまで少数派

経験上、もっとも骨が折れると感じているのは借金、不倫、暴力ではなく性格の不一致。実際、法務省の司法統計(2020年)によると離婚の原因(離婚申し立ての動機別割合のうち、夫の数字)は多い順に性格があわない(60%)、精神的に虐待する(20%)。つまり、性格の不一致が大多数を占めます。逆に借金、不倫、暴力など10対0で相手が悪いケースはあくまで少数派です。

性格の不一致の場合、喧嘩、仲直りを何度も繰り返すので、決死の覚悟で「もう許さない!」と必死に訴えても、「また許してくれるでしょ」と鼻で笑われる傾向があります。今回の相談者・井上拓真さん(42歳。仮名)も離婚の決意は固まっているのに、なかなか妻を説得できず、鬱屈とした日々を過ごしています。拓真さんは妻の癇癪癖(些細なことで激高する)、束縛癖(寂しくなると監視する)、依存性(悩みがあると母親の言いなり)に悩み、苦しみ、傷ついていたのですが、具体的には何があったのでしょうか? 順番に見ていきましょう。

◆「癇癪癖」を持つ妻にやきもき…

なお、本人が特定されないように実例から大幅に変更しています。夫婦がすれ違うきっかけ、関係修復の方法、離婚の原因や経緯などは各々のケースで異なるのであくまで参考程度に考えてください。

<登場人物(名前は仮)>
夫:井上拓真(1回目の相談時は38歳。2回目の相談時は42歳。会社員)☆今回の相談者
妻:井上菜々(1回目の相談時は37歳。2回目の相談時は41歳。専業主婦)
子:井上香菜(1回目の相談時は12歳。2回目の相談時は16歳。)

まず1つ目の問題は癇癪癖です。拓真さんは「妻は恥をかかされると、何をしでかすかわからない性分です」と嘆きます。例えば、宅配の荷物を受け取る際、配達員が差し出した伝票に名前を記入するのですが、玄関に置いてあったボールペンのインクが薄く、名前が途切れ途切れになってしまったそう。

配達員は「これじゃ、ダメですね」と言うので妻はリビングへ新しいボールペンを取りに行ったのですが、配達員にダメ出しされたことが頭にきたのか、リビングにある白いソファーにボールペンを向けたのです。そして縦横無尽に線を書き入れ、ストレスを発散した後、再度、玄関で伝票に名前を書き入れたそう。これは平日の昼間のことですが、夜になって拓真さんが帰宅するとソファーに黒い線が何重にも入っているのを発見。

筆者が「どうしたんですか?」と尋ねると、拓真さんは「エタノールをかけ、擦り洗いをし、黒い線を落としたのは僕です」と答えます。さらに「これが初めてじゃありません。今までのことがデジャブ―します」とため息をつきます。妻の「突然の逆ギレ」は何度も繰り返されましたが、それだけではありません。

◆出張でもひっきりなしに「寂しい」と連絡が

次に2つ目の問題は束縛癖です。例えば、拓真さんは仕事柄、4〜5日間の出張に行くことがあるのですが、その最中に妻が「寂しい」と連絡してくるのです。具体的には「お皿を割っちゃったの。怖いから帰ってきて」と頼まれるのですが、出張を早めに切り上げるのは無理です。