それでもなお、人生をかけて研究を続ける人々が絶えないのは、「コスパ」の領域を超えたところにやりがいをみつけるからではないでしょうか。
現代人は「コスパ」「タイパ」を気にして生きるべき、という言説が目立ちます。少し前は「FIRE」(若いうちに大金を貯めて早期退職すること)が流行し、目指されました。
ですが、そのような人生はいったいどこに向かっているのでしょうか? 過度な効率の追求は、逆に幸せを失っているようにも思えます。
私が仕事で高校生の進路相談に乗るときには、「大学に行ったほうがお金を稼げる確率は高まる」としつつ、「お金よりも大事なやりたいことがあるならば、それを目指したほうがいい」と伝えます。
コスパやタイパは、目標が決まっているときに初めて意識されるものであって、いたずらに時間を圧縮しても、その先に待つのは空虚な無です。
短くともやりがいを見つけて散っていった『チ。』の研究者たちと、長い人生を効率よく生きようと闇雲にコスパを叫ぶ現代人。果たしてどちらのほうが幸せな人生を送っているのでしょうか。
―[貧困東大生・布施川天馬]―
【布施川天馬】
1997年生まれ。世帯年収300万円台の家庭に生まれながらも、効率的な勉強法を自ら編み出し、東大合格を果たす。著書に最小限のコストで最大の成果を出すためのノウハウを体系化した著書『東大式節約勉強法』、膨大な範囲と量の受験勉強をする中で気がついた「コスパを極限まで高める時間の使い方」を解説した『東大式時間術』がある。株式会社カルペ・ディエムにて、講師として、お金と時間をかけない「省エネ」スタイルの勉強法を学生たちに伝えている。(Xアカウント:@Temma_Fusegawa)
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外部リンク日刊SPA!