[画像] 昨季新人賞の日鉄堺BZ 渡邉晃瑠のモチベーションは大好きなアメフトと…。「彼にプレーを捧げる」と明かす相手はあのレジェンド

 昨季のV.LEAGUE DIVISION1 MENで最優秀新人賞に輝いた日本製鉄堺ブレイザーズのミドルブロッカー、渡邉晃瑠。さらなる飛躍が期待される今季、力強く口にした目標と垣間見せた素顔がある。

 いつもリラックスしながら受け答えをしてくれる渡邉。その中でも、筆者が一つの話題を振ると、途端に声のトーンが上がる。

 今年9月30日に実施された「2024-25 大同生命SVリーグ開幕記者会見」でのこと。周りの記者がいなくなったタイミングで話しかける。

 今朝の結果はどうだった?

「あぁ!! イージー、楽勝だったよ」

 実は、その日の朝に行われたアメリカンフットボールの全米プロリーグ「NFL」で、渡邉の“推しチーム”であるサンフランシスコ49ers(フォーティーナイナーズ)が快勝を収めていたのだ。聞くに、アメリカ現地時間は週末、日本時間でいえば週明けには、毎週欠かさず試合を視聴しているのだという。

「もちろん全試合さ。日本だと日曜日の深夜26時くらいに試合が始まるから、それに合わせて起きて、リアルタイムで試合を見てから朝方にベッドに戻るんだ。月曜日は大抵、昼前からチームのトレーニングが始まるからね。破茶滅茶な生活リズムだろ? でも好きなんだよ、49ersが」

 渡邉の出身地であるアメリカで最も人気のスポーツだということに加え、彼の祖父が過去に49ersの選手だったことが、これほどの愛を生んでいる。それは日々のモチベーションにも影響するほど。

「(49ersが)負けた試合の日なんて、テンションはダダ下がりさ(笑)。一日中、不機嫌だよ。でも今日みたいに勝利した日は、どんなことだってうまくいくぐらいの気持ちでいられるんだよ」

 そういえば昨季のV・ファイナルステージの最中も、その直前に催されたNFLの決勝「スーパーボウル」で49ersが延長戦の末に敗れたとあって、こちらの顔を見るや、うなだれていたなぁ。今季の49ersはやや低調なシーズン序盤戦となったが…果たしてSVリーグを毎週戦う彼にどんな影響を及ぼすだろうか。

 さて、そんな素顔を見ていると、日本国籍ではあるものの、やはりアメリカ人気質を実感させられる。それは隙あらば趣味のサーフィンを欲することはもちろん、コート上でのパフォーマンスも然りだ。

 ハワイ大学時代に全米大学選手権準優勝、という実績を引っ提げて社会人1年目から日本の地に渡った。そこでは持ち前のブロック力に磨きがかかり、ブロック賞(1セットあたりのブロック決定本数)のランキングでは常に上位に名前を載せる。シーズン後半はコンディション不良で欠場するも、リーグ最優秀新人賞に輝いた。

 本人いわく「想像以上の出来だった」デビューイヤーを経て、日鉄堺BZで迎える2シーズン目。自身の役割について聞くと、「今季もミドルブロッカーとして求められるブロック、それに決定的なアタック、それらは変わらないね」ときっぱり。ただ続けて、口元をゆがめた。

「でも正直に言うよ、僕のサーブは全然ダメ。だから、ブロック、アタック、そしてサーブ。この3つは特にフォーカスする項目になるね」

 自分の弱点だって包み隠さない。自覚しているからであるし、そんなストレートな物言いも日本人の気質とは異なる。苦手なことは、ほかにも。

「2年目になって日本の生活にはかなり慣れてきたよ。普通に過ごせている気がする。天候も食事も…いや天候はそれほどかな(笑)。みんな、冬がくることを待ち望んでいるんだろう?」

 アメリカ西海岸そしてハワイでさんさんと太陽を浴びてきた男に、どうやら四季の変化は堪えるようだ。

 いつだって素のままで、こちらに接してくれる渡邉。本人は「僕は見た目がちょっと怖い印象を受けるかもしれないけれど…」と口にするが、そんなことはない。ホームゲームでは老若男女問わず、なかには幼いファンと温かい交流を育む姿も見られる。あふれる人情味は、口にした今季の目標にも表れた。

「特に今季はマツ(チームメートの松本慶彦)に捧げるプレーをしたいと思っている。マツのキャリアが今季で最後になるかどうかはわからないけれど、もしそうなったとしても、マツがメダルを獲得したり、決勝の舞台に立つための手助けをしたい。マツ自身はあきらめていないし、今のままで彼がキャリアを終えるシーズンに僕自身もしたくない、そんな気持ちなんだ」

 「マツは43歳だろ? あと何年、プレーするかわからないし、だからこそ僕たちは“これが彼の最後のシーズンだ”と思いながら、できるかぎりのプレーをする。そうしてマツが誇りに思ってくれるプレーができれば、マツが誇れるチームになれば、それで僕は満足できるんだ」

 同じポジションであり、年齢差でいえば親子でもおかしくない。それでいて今なお同じコートに立ち、昨季でリーグ通算出場試合数は500の大台を突破した“生きる伝説”とともに、この2024―25シーズンも戦う。松本慶彦という存在もまた、渡邉にとっては大きなモチベーションであるのだ。