[画像] 「俗に言う“お持ち帰り”をされた」「最後の行為でゴムを取られて…」父・田村修被告が証言した“瑠奈被告と被害男性のプレイ詳細”

 札幌市・ススキノのホテルで昨年7月、男性会社員(62=当時)が殺害され、頭部を持ち去られたとする事件。起訴された親子3人のうち、母親の無職・田村浩子被告(61)の第4回公判が10月1日、札幌地裁(渡辺史朗裁判長)で開かれた。証人尋問で証言台の前に立った父親の精神科医・田村修被告(60)は、事件の約1か月前にあった娘・瑠奈被告(30)と被害男性との出会いと、その際に娘が話していた「行為」について、詳細に証言したのだった。【前後編の後編。前編から読む】

【写真】事件直前、コスプレしていた被害男性の様子。奇抜なメイクでライブに出演する修被告

 瑠奈被告と男性は2023年5月、ススキノのクラブで出会い、その夜のうちにホテルで性行為に至った。これが事件の全ての発端となっている。同月28日の朝、修被告は瑠奈被告を車で迎えに行き、帰ってきた瑠奈被告から聞いた話を手帳に記録していたという。証人尋問で当時のメモを見ながら、当日娘から受けた報告の内容をこう説明した。

「カラオケに行くと思ってたら、ホテルに連れて行かれて、まあ、まあ〜、俗に言う“お持ち帰り”されたと。これもひとつの、ん〜……社会経験かと思って、それはよしとしたと。その後、相手から、セックスの要請があったので、撮影はいやだ、スマホの電源はオフ、避妊具をつけたらいいよ、と言ってやったところ、4〜5回やったと。だけれど、最後の時、途中でゴムを外されたと。で『約束破ったでしょ』と言うと、最初相手はごまかしてたが、最後、ごめんと言い、逃げるように帰って行ったと」(修被告の証言、以下断りがない限り「」内は同じ)

 車に戻ってきた瑠奈被告は「最後、ゴムなしでされたことに関連して、妊娠したんじゃないか、性感染症に感染したんじゃないかと心配していました」という。そして2023年6月17日夜から、瑠奈被告と修被告は男性を捜索する。夜中の3時にようやく男性を発見した瑠奈被告に修被告は「謝ってもらうために来たんだから、謝ってもらうこと、そうでなければ、もう関わらないように」と告げて送り出した。

 男性のもとに向かって行った瑠奈被告について、修被告は「一緒に踊ったり話したり、特に揉めてる様子はなかった。その後戻ってきて『和解が成立したので次に会うことにした』と言っていました」と言う。

「娘は来週でもすぐ会いたいと言っていましたが『仕事で無理です』と言いました」

3日後に父娘で「SMの練習」

 そしてその3日後の6月21日には、瑠奈被告は家で“SMの練習”をしたのだという。

「約束を決めた直後くらいで、SMプレイをするとその前から言ってて、この日に練習、と宣言したわけじゃないですが、何か『ちょっとやってみたい』と。あー、そういうことかなと、練習しました。長くて1〜2分、もっと短かったかも。正座して、手を後ろに回して、目をつぶって、これはまあ、手錠をかけられてアイマスクのつもりだと言われました。後ろから何か迫ってきて、頭や首の周りを触ったりする様子がありました。『どう?』と言うから、『何かぞくぞくするね〜』と、なんかやりとりした記憶があります。ちょっとしたら本人は満足して『もういいわ、OK』と」

 このような流れで、修被告は“意に反する性行為をされた男性と和解した娘が、次はSMプレイをすることを楽しみにしている”と思っていたのだそうだ。そして当日はSMプレイをするために出かけて行ったはずの瑠奈被告が、なぜか男性の頭部を持ち帰った……ということになる。しかし浩子被告の初公判で検察官は、修被告は少なくとも事件の10日以上前に娘の犯行計画を知ったと主張しているのであるから、こうした発言は注意深く見る必要があるだろう。

 事件の日、瑠奈被告はホテルで「SMプレイを装い、男性にアイマスクをつけ、両手首を緊縛してカメラで撮影しながらナイフで刺した」(初公判での検察側冒頭陳述)と検察官は主張している。修被告は、純粋に娘が“SMプレイを楽しむ”つもりだと思っていたのか、それとも“SMプレイを装って殺害する”ことを認識していたのか。今後の三者の公判で明らかになってゆくことだろう。

 浩子被告と修被告は「幼少の頃から、叱ることも咎めることもなく瑠奈を溺愛し、成人後も瑠奈の要望を最優先し、望むものを買い与えていた」(初公判検察側冒頭陳述より)という。こうした『瑠奈ファースト』精神は事件においても発動されていた。男性の頭部を損壊する様子を撮影するように頼まれた修被告は「瑠奈さんに『やめなさい』というのは難しい?」と浩子被告の弁護人に聞かれこう答えた。

「それはまずいんじゃないかということはありますが、今回のはすでに損壊し終わってる状態。しないといったところで娘は作業をする。作業を中断することで本人の感情がコントロールできなくなる。しないほうがいいんじゃないの、と言うのは難しい」

妻への“歪すぎる配慮”

 先延ばしにもできなかったのかと更に問われた修被告は、浩子被告への配慮から、自ら実行したと明かした。

「もうあと目をひとつ、くり抜くだけですし、頼まれたのが、金曜夕方? 土曜? ……とにかく夕方で、次の日に朝イチで関西に出張……2日近く家を空けることになる。その間に撮影する可能性はかなり高かった。電子機器をいじるのは好きな方ではないし、損壊行為は考えただけで身の毛がよだつ、とても考えられないと思いましたが、語弊はあるかもですが、とにかく終わらせといたほうがよろしいなと」

 自分が留守の間、浩子被告が撮影することにならないように、また娘が感情をコントロールできなくなることがないように……家族への愛から、男性の頭部損壊を撮影するという歪な話を、修被告は淡々と語るのだった。尋問が終わった修被告が法廷を去る際、浩子被告はまた目を赤くして、メガネを外し、目元を押さえていた。

(了。前編から読む)

●取材・文/高橋ユキ(ノンフィクションライター)