[画像] 加速する南極の緑化、宇宙から衛星画像で確認 英研究

南極半島の近海に浮かぶロバート島の衛星画像。植生の存在が確認できる/Tom Roland

(CNN)氷で覆われた南極の一部が驚くべきペースで緑化していることが、新たな研究で明らかになった。地域一帯が極端な高温に見舞われる現状を受け、巨大な南極大陸の景観の変化を懸念する声が噴出している。

科学者らは衛星画像とデータを駆使して、南極半島の植生レベルを分析した。南極半島は長く連なる山岳を形成し、北の方向には南米大陸の南端が位置する。ここでは世界平均を格段に上回る速度で温暖化が進行している。

大半を苔(こけ)類が占める現地の植生は、この過酷な環境で過去4年の間に10倍以上拡大したという。英イングランドのエクセター大学とハートフォードシャー大学、英南極研究所(BAS)に所属する研究者らがまとめた論文はネイチャー・ジオサイエンス誌に4日掲載された。

研究によると、1986年の南極半島の植生は約1平方キロに満たなかったが、2021年までには約13平方キロに達した。過去40年近くの間に緑化は加速しており、16〜21年はそれまでの3割増し以上のペースで進んでいるという。

地形は依然として大半が雪と氷、岩に覆われているものの、この小さな緑の範囲は1980年代半ば以降劇的に拡大したと、エクセター大学の環境科学者で論文著者のトーマス・ローランド氏は指摘する。

同氏はCNNの取材に答え、「南極半島という最も極端で遠く、隔絶した『原生地域』でさえも景観は変化している。こうした影響は宇宙から確認できる」と述べた。

化石燃料の使用によって地球の温暖化が続けば南極も温められ、これらの緑化は加速する一方となる公算が大きいと、科学者らは予測する。

半島が緑化すればするほど土壌の形成が進み、外来種がより好む環境となる。それは土着の野生生物に脅威をもたらす恐れがある。

ローランド氏によれば、外来の種や胞子、植物の断片が観光客や研究者の靴もしくは装備に付着して南極に到達する可能性がある。渡り鳥や風が運んでくる場合もあり、リスクは明白だという。

緑化により、南極半島が太陽放射を宇宙に跳ね返す能力も減少しかねない。地表の色が暗くなれば、より多くの熱を吸収するようになるからだ。

このような影響はあくまでも局地的なものとなる公算が大きいが、気候が温暖化し続ける中で植生の拡大には拍車がかかる可能性がある。論文著者の一人であり、ハートフォードシャー大学でリモートセンシングと地理学を研究する上級講師、オリー・バートレット氏はそう指摘した。

「象徴的な景色が、永久に変わってしまうかもしれない」(バートレット氏)