[画像] 山田裕貴、『ジョーカー2』は“いつまでも考え続ける”続編「現実と妄想の境目がわからない」【単独インタビュー】

 アメコミ屈指の悪役・ジョーカーを主人公とする映画『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』の日本語吹替版で、ジョーカーと対峙するハービー検事役を担当した山田裕貴。先日行われた本作のロンドンプレミアにも出席するなど、無類のジョーカー好きで知られる山田がインタビューに応じ、“二人狂い”をテーマにした本作について語った。

 山田といえば、俳優として本格デビューした特撮ドラマ「海賊戦隊ゴーカイジャー」(2011〜2012)や、吹替声優を担当したNetflix映画『Ultraman: Rising』など“ヒーロー”としてのイメージが強いが、山田本人は「敵が好きなんです」と“ヴィラン”に魅力を感じるという。「『スター・ウォーズ』シリーズだったらアナキン・スカイウォーカー(後のダース・ベイダー)が好きですし、敵側の方が共感することが多くて、役者としてもし演じる機会を頂けるなら、敵側のキャラクターをやってみたいです」

 主人公アーサー・フレック(ホアキン・フェニックス)は、ゴッサム・シティの片隅でコメディアンを夢見て生きてきた男。前作『ジョーカー』では、社会から疎外されたアーサーがジョーカーへと変貌していくさまが描かれた。

 「ジョーカーは出てきた瞬間から魅了されました」と話す山田は、「アーサーは悪のカリスマになろうとして、なってないですからね」と前作を振り返る。「アーサーはいろんな思いを抱えて、(ジョーカーに)なってしまった。世間のみんなが、彼に同調しただけなんです」

 山田の怪演が話題になったドラマ「先生を消す方程式。」「ホームルーム」は、ジョーカーから影響を受けたという。「特に『ホームルーム』(2020)の撮影は、『ジョーカー』(2019)の公開時期と近くて、とあるシーンのロケ場所に長い階段があったんです。(本編で)使うか使わないかは別として、ジョーカーのように階段で踊りました」

 『ジョーカー』での出来事から2年後を舞台に描く続編には、謎の女性リー(レディー・ガガ)も登場し、ジョーカーの狂乱が再びゴッサムの市民へと伝染していく。本編を鑑賞した山田は、「誰でもジョーカーになれると思うんです」と狂気の連鎖について持論を述べる。「仮にアーサーが死んだとしても、誰かが『あいつが新たなジョーカーだ』と言えば、また誕生するんです。ゴッサムは、そういう世の中だと思うんです。現実世界も似たようなことがあります。誰かが非難し始めると、一斉にそうなってしまう。この作品は、世間の姿を反映しているのではないかと思います」

 山田は、ジョーカーと対峙するハービー検事の吹替に挑戦。時代の寵児となったジョーカーを裁く正義の検事として登場するが、本作では、掴みどころがない不思議なキャラクターとして描かれているという。

 「俳優さんのお芝居が、意図を見せないようにして作られているのかなってくらい淡々としていたんです。ジョーカーを絶対に有罪にしようとする表情もなく、有罪確定の瞬間に『勝ったな』という顔もしない。あえてその表情を見せないという監督の意図だったのかもしれませんが、その辺りは(アフレコしながら)深読みしていました」

 「ジョーカーを裁くとなると、それなりの緊張感だったり、少し熱くなる部分があると思うんです。でも、ハービーは、悪のシンボルと向き合った時の動揺も一切なくて、『何この人?』って思いましたし、そこが面白かったです」

 前作『ジョーカー』は現実とアーサーの妄想が混在する映画だったが、続編も同様の構成なのか? 山田は「どこからが現実で、どこからが妄想なのか、境目がわからない」と強調した。「一言で表すのが難しい作品ですし、僕が『こういう作品です』と言うのも難しい。終わった後に『このシーンは、どういうことなんだろう』とみんなで話し合う映画だと思いますし、いつまでも考え続ける映画になると思います。『答えとは何か』と心に刻みながらも、モヤモヤしたまま生かされてしまう映画なのではないでしょうか」(取材・文:編集部・倉本拓弥)

映画『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』は10月11日(金)全国公開