[画像] 菜々緒、俳優業に行き詰まった時期も 人生を楽に生きるヒントは「流れに身を任せること」

 クールビューティーな魅力を持ち、話題作への出演が相次ぐなど俳優として着実にキャリアを重ねている菜々緒だが、その裏では「うまくやらなきゃ、できることを全力でやらなきゃといつも背伸びをしているようなところがあって。行き詰まってしまったタイミングがある」と話す。人気コミックスを実写ドラマ化する『無能の鷹』(テレビ朝日系/毎週金曜23時15分)では、有能そうな見た目でありながら、実は圧倒的に無能なヒロイン、鷹野ツメ子を演じる。菜々緒は、悩みの時期に舞い込んだオファーで、ダメな自分も受け入れて堂々と生きる鷹野から「たくさんの生きるヒントをもらった」という。自身がぶつかった壁、そして完璧主義を手放すまでの道のりを語ってくれた。

【別カット】おちゃめな表情も見せながら、笑顔で撮影に挑んでくれた菜々緒

■完璧に見える菜々緒にも“無能”な一面が!?

 原作は、女性コミック誌『Kiss』(講談社)で連載されていたはんざき朝未による人気コミックス。有能オーラが半端ないのに、パソコンの起動も、コピーも、資料のホチキス止めもままならず、何が分からないのかも分からない。想像を絶するレベルに無能な鷹野が、同僚たちを巻き込みながらなぜか奇跡を起こしていく姿を描く。

 スマートな身のこなしで、エース級の風格を備えた鷹野と、ビジュアル含め“有能で完璧”と言えるオーラがぴったりと重なり、原作ファンから「菜々緒で実写化してほしい」という声もかねてより上がっていたそう。まさに、理想的なキャスティングが実現した形だ。

 原作を読んだ感想について菜々緒は「衝撃的だった」と切り出し、「お仕事ドラマって、ダメダメだった主人公が成長していくという展開が主流ですよね。でも本作は、主人公が最初から最後まで無能で、まったく成長しないんです」と楽しそうに話す。鷹野のギャップに翻弄されていく周囲の様子もコミカルに描かれていく。

 菜々緒自身、“完璧な女性”というイメージを持たれることも多いように感じるが、周囲からのイメージと自分自身のギャップに戸惑った経験はあるか聞くと「運動神経がいいタイプだと思われることが多いのですが、実は私、ものすごく足が遅くて」と苦笑い。

 「以前、時代劇に出させていただいた時に、盗人を追いかけて走るシーンがあって。私が先頭を走らないといけなかったのですが、あまりにも足が遅すぎて後ろを走っている人たちがざわざわしていました」と意外な一面を潔く打ち明ける。

■完璧主義という呪縛

 鷹野について「自分に対して嘘がなく、とにかく自分自身を信じている人。どんな状況、どんな人に対してもフラットで、鷹野は外の世界にまったく影響されない。ただただ自分らしく、ありのままの自分を表現して生きているところがものすごく魅力的」とダメな自分も受け入れて、それを隠すことなく堂々と生きている人だと分析した菜々緒。

 そんな鷹野を演じることに、「使命を感じている」とまっすぐな瞳で明かす。彼女は「昨年、ちょっと自分自身が苦しくなってしまった時期があった」と話していて、そんな時に舞い込んだのが本作のオファーだったと言うのだ。

 「このお仕事をしていると、周りには才能があって、有能な人ばかり。そんな中で私は、しがみつくようにして、何とか今までやってきたという感覚が強くて。ちゃんとしなきゃ、うまくやらなきゃ、できることを全力でやらなきゃ…といつも背伸びをしているようなところがありました」と告白。

 「もちろん今の自分は、“やりたいことを突き詰めたい”と上を目指していくような姿勢で築き上げてきたものだと思いますが、年齢を重ねて30代も半ばになってくると、体力的にも20代の頃と同じようには仕事ができなくなっている自分にも直面して、行き詰まってしまった時期がありました」とストイックな向上心を持って突き進んできたが、トンネルに迷い込んでしまったと振り返る。

 「そこでまとまったお休みをいただいて、自分と向き合う時間を作り、自分をじっくり見つめ直してみたんです」。ひと休みしながら立ち止まって気づいたのは、「自分に厳しすぎたのかもしれない」ということだった。

 「こうしなければいけない、こうであるべきだと決めつけてしまっているのは結局、自分なんですよね。自分で自分の首を絞めてしまっているんだな、完璧主義な自分を捨てた方がいいんだと気づいて。ダメな自分が許せないという気持ちが強かったけれど、ダメな部分を知ることは、きっと不得意なこと、苦手なことに気づくきっかけなんだと考え方を変えてみたら、ふっと心が楽になって。ダメな自分も受け止めてみようと思えてきたタイミングで、本作のオファーをいただいた」と運命的な出会いだったとしみじみ。

 「鷹野って、ダメな自分のことを何とも思っていないんです。『頑張らなくても大丈夫』、『できなくても大丈夫』という生き方を体現しているようなキャラクターで、人生のお手本にしたいような人です。原作を読んだ時には、自分自身も“鷹野のようになりなさい”と言われているような気がしました」。

 「今の時代、どうしても人と比べてしまう機会も多く、そのことによって落ち込んだり、真面目すぎるからこそ“もっと頑張らなければ”と息苦しさを感じてしまったりしている人も多いように思います。私自身、ダメな自分も受け入れる鷹野のすごさを実感している今、このタイミングで本作をお届けできるということに、使命のようなものを感じています」。

■頑張ることも素晴らしいことだけれど…

 本作との出会いは運命的だと語った菜々緒。撮影前に、本作を手がける貴島彩理プロデューサーから届いた手紙にも力をもらったと言い、「お手紙の中に『人間って生きているだけでも偉い』と書いてあって。その言葉がとても身に染みて、本当にそうだなと思いました。頑張ることも素晴らしいことだけれど、頑張れなくてもいい。完璧じゃなくたっていいし、できないことがあってもいいんだと改めて感じました」と感謝を口にする。

 これから大事にしたいのは、「ありのまま、自分らしくいる」こと。「私は番宣などのカンペを読むのがものすごく苦手で、毎回失敗するんです。うまくいったことがない!」と笑いながら、「『うまくできなかったな』と思ったとしても、そこで『大丈夫、大丈夫』と声をかけてくれる人の存在に気づくことができたと思えば、なんだかいいことに思えますよね」と続ける。

 「ダメな自分を、笑って認めてくれる仲間のありがたみを知ることができるというか(笑)。“ピンチはチャンスだ”とよく言いますが、うまくいかなかった時にこそ見えるものだってあるはず。鷹野もネガティブな思考を持たないことで、周りが勝手にいい方向に動いてくれたりするんです。『こうしなきゃ』と自分をコントロールしようとするのではなく、流れに身を任せることが人生を楽に生きるヒントなのかなと感じています」と輝くような笑顔を見せていた。

(取材・文=成田おり枝 写真=小川遼)

 金曜ナイトドラマ『無能の鷹』は、テレビ朝日系にて10月11日より毎週金曜23時15分放送(※一部地域を除く)。