◆犬を飼ってよかったなと思う

――サルが襲ってくるようなことはないですか?

すず:食べ物を手に持っていたり、こっちが何かをしない限りは襲ってくることはないですね。最低限の注意は払うように心がけています。

――ちなみに、すずさんのYouTubeチャンネルやSNSに出てくる愛犬の「ロン」ちゃんですが、屋久島に来てから飼っているのですか?

すず:そうです。屋久島犬のミックスで雑種みたいな感じなのですが、屋久島犬の血が多めと聞いています。尾之間の一軒家に住んでいるとき、大家さんの家に犬が生まれて、「飼ってみたら?」と言われたんです。大家さんが家で飼っていいと言ってくれたので、「だったら飼おうかな」と。

 ただ、飼うにもお金がかかりますし、最初は少し悩んでいたのですが、大家さんに「一人で暮らしているんだから、犬でも飼え!」って言われて(笑)。ロンがいてくれると心強いですし、今では飼ってよかったなと思っています。

◆薪割りも釣りもDIYも、移住してから初体験

――食べ物はどこで買っているのですか?

すず:車でスーパーに行って買うこともあるのですが、農園でバイトをしている繋がりで野菜や魚がもらえたり、あとは海に魚を釣りに行ったり……。冬は捕れないことも多いですし、野菜の収穫量も少なかったりするので買うこともあるのですが、やはりお金もないので物々交換をしたりしています。農園のスタッフの方々は優しくて、野菜や果物をたくさんくれるんです。あと、農園がお付き合いのある他の場所からもらってきたものをお裾分けしていただくこともあります。

――屋久島に移住される前から釣りの経験はありましたか?それと、山小屋の補修をしたり、薪を割ったりもされていましたが、そういったことも以前から経験があった?

すず:どれもしたことがなくて、こっちに来てから地元の方に釣りに連れていってもらったり、自分で家具の補修をしたり…やらざるを得ないっていう状況なのもありますが、移住してから始めたことばかりです。山小屋の大家さんが「自由にDIYをしてもいいよ」と言ってくださったので、キッチン棚を補修したり、いろいろ頑張っています。

◆家にエアコンやお風呂がないため、「川風呂はルーティン」

――川風呂に入ったりもしていますよね。

すず:家にエアコンやお風呂がないということもあって、川風呂はルーティンです。それと、農園で働いていると熱中症になってしまうんじゃないかというぐらい暑いので、とにかく体を冷やさないといけません。仕事の休憩中や仕事が終わった後も川風呂に入りますね。見た目は川で遊んでいるように見えるかもしれませんが、私にとってはお風呂なので。

――森の中だと時間帯によっては涼しそうですね。

すず:川が近いので冷気がきます。でも、夏はやっぱり暑くてしんどいですしアイスノンを使って寝たりしています。ただ、春と秋が短くなった都会の気候に比べて屋久島は四季がまだ残っていて、急激に暑くなったり寒くなったりはしません。体を徐々に慣らしていけるんです。

――寒い時期のお風呂はどうされていますか?

すず:ちょっと場所は遠いのですが、海の中に湧き出ている珍しい温泉があるのでそこに行ったり、以前住んでいた集落に300円で入れる温泉があるのでそこへ行ったり、友達の家に行ってお風呂をかしてもらったりしています。屋久島の冬は本島よりは寒くないのですが、山の高いところではマイナス何十度にもなったりしますし、そこから吹き降ろしてくる風が当たる時は結構冷えます。

◆将来的には家も建てたい

――東京に戻りたいという気持ちが芽生えることは?

すず:最初から「一生、屋久島で暮らす」みたいな気持ちで移住したんです。実際住んでみても居心地がよくて落ち着きますし、毎日充実しています。ただ、同じ時期に屋久島に移住した友人は、気持ちが都会に向いている感じがして……。2〜3年で島を出ていく人が多いという話も聞きますが、ひょっとしたらそういう時期なのかなと。
 
 ただ、私はずっとここにいたいと思っていますし、将来的には家も建てたいですね。今は家賃無料の借り暮らしですが、この先も屋久島にずっと住み続けていくため、自分の家がほしいんです。今は収入も少ないですし生活が不安定ですが、少しずつ暮らしのグレードを上げていきたいですし、その過程をYouTubeチャンネルでお伝えしていければといいなと思っています。

<取材・文/浜田哲男>

【浜田哲男】
千葉県出身。専修大学を卒業後、広告業界を経て起業。「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」の取材をはじめ、複数のスポーツ・エンタメ・ニュース系メディアで連載企画・編集・取材・執筆に携わる。X(旧Twitter):@buhinton