─ 改めて、生保の存在意義をどう捉えていますか。

 清水 不安がなくならない限り、生保の必要性、生保事業に期待される役割は、これまでと変わらずあり続けると思います。

 一方で、人口が減少する中、生保事業がこれまで通りに発展するのかという疑問を抱く方もおられます。しかし、私の信念ですが、成長率は低くとも、人口減少の下でも生保事業は確実に発展すると考えています。

 ─ そう考える理由は?

 清水 1つは必要保障額が掛けられていないことです。世界的にも「プロテクションギャップ」(経済損失額と保険による補償額の差)が言われています。日本だけでなく世界的に、生保も損保も必要な保障が掛けられていない状態にあるのです。例えば損保であれば自然災害に遭った時に、その損害をカバーするだけの保障、仕組みができていないということです。

 また、日本の場合には、超高齢社会の中で、社会保障が一定程度の枠組みで抑えられた時に、それをどう民間で準備していくかが問われますが、準備がまだまだ足りていません。プロテクションギャップを埋めるための企業努力によって、事業が発展する余地があると思います。

 別の言い方をすると、現在の20代の加入率は5~6割ですが、20~30年前であれば7~8割でした。若年層の加入率の低さもプロテクションギャップの表れですから、この世代への保障をきちんと提供していくことが大事になります。

 もう1つは、超高齢社会では、より健康で長生きしたいと誰もが思います。そのために医療やヘルスケアなど新たなニーズが高まってきますから、これも生保事業にとってはプラスの環境につながります。


デジタルと「人」の関係をどう考える?

 ─ 若年層は将来不安もあって結婚せず、子供も産まないという問題があります。保険加入が進まない一因だとも思いますが、どう対応しますか。

 清水 私もそうでしたが、若い頃は目の前のことに集中しますから、なかなか遠い将来のことを考える余地がありません。かつては職域で、営業職員が企業に入っていって必要性を話し、それに感化されて加入するという形でしたが、今は立ち入りが制限されているのでできません。

 それによって金融機関での販売や保険ショップも出てきたわけですが、自ら動かなければならないのでハードルが高い。必要性を認識できる環境がないことは加入率が低い理由の1つだと思います。

 それに対し我々は、営業職員全員がスマートフォンを持っていますから、メールやLINEを教えていただければ文書や動画などデジタル情報で必要性をお伝えすることができます。

 それで興味を持たれる方もいますが、やはりデジタルと対面では強さが違い、デジタルは時間がかかります。デジタルや電話などを重ねて、保障の必要性を訴えていますが、まだやるべき余地はあると思っています。

 ─ 日本生命には約5万人の営業職員がいますが、全産業界的に人手不足が言われます。デジタル化も含め、今後どう対応しますか。

 清水 日本生命グループには生保、損保合わせて約1500万名のお客様がいます。単純計算で営業職員は1人が300人のお客様の対応をすると考えると、なかなかこれは難しい。従って、6万人、7万人いれば、より丁寧なサービスができるようになるということです。

 もちろん6万、7万を目指すという具体的な数字はありませんが、営業職員の数は多いほどいいですから、増やす方向で考えていきたいと思います。

 さらに、デジタルを使えば営業職員の働き方が一定程度、標準化できます。営業の結果を受けて拠点長や上司が、その後の対応を指示するのですが、うまくいくケース、いかないケースがある。それもあっての大量採用対応だったと思います。そして個別ケースの塊ですから標準化できていなかったのです。