土居:京都芸術大学に在学しているときですね。当時、海象さんが私が在籍していた映画学科の学科長だったんです。

──実は僕の妻を弁護士に導いてくれたのも海象さんなんですよ。東大に入学したものの、飲んだくれてた時期に「ふさこ、お前は弁護士になれ」と海象さんに一喝されたんです。

土居:そんなつながりがあったとは! 海象さんは先生でもありますが、“近所のおじいちゃん”のような存在。遊び心がある方で、とても楽しい方ですよね。

◆よねと自身との共通点は幼少期の体験

──これまで演じられたことがある役は、いずれもロングヘアだし、笑顔がある役が多い。いずれもよねとはギャップがありますね。

土居:今回のお話をいただいたとき、演出の方から「みんなから“一歩引いて”見ている感じが、よねだと思った」と言われたんです。そのときはピンとこなかったんですが、よくよく考えてみると子どもの頃、父の仕事の都合で転校がとても多くて。

 転校先の学校では人気者になることもあればいじめられることもあり、周りの大人やクラスメイトの様子を常に観察していたんですよね。「この人たちは、今何を求めているんだろう」「どうやったらこの輪に入っていけるんだろう」って。

――『虎に翼』でも、よねが寅子たち女学生の輪から離れているシーンがたびたび描かれていましたね。

土居:女子部のみんながワイワイお弁当を食べているとき、よねだけひとりパンをイライラしながらかじっているシーンは、自分以外の人が楽しそうにしていて、自分は輪に入っていけない当時の気持ちが演じながらも蘇ってきました。

◆次作はよねとはまったく違う役

――今、土居さんには出演オファーが殺到していると思います。よねのイメージとしばらくの間は闘わないといけないのでは。

土居:そうですね。『虎に翼』がきっかけで私を知ってくださった方が多いと思うので、ここからどう変化していくのか、楽しんでもらえるように頑張りたいです。ちなみに今はまだあまり詳しいことを話せないんですけど、次作はまったく違う役で、長い髪のウィッグを被って演じることになると思います。

──先ほど話に出たように、作品によっては性的なシーンも演じられているようですが、自分なりにお仕事を受ける基準って何か決めてらっしゃいますか?

土居:明確な基準というのはなくて、あくまで「直感」ですね。今はとにかくお芝居が楽しいので、どんな役にも挑戦したいです。

◆ドラマのような意外なつながり!?

──いや〜今日はおもしろかったです。あっ、そうそう最後になりましたが、こちらどうぞ。妻が出した本なんです(三輪氏の著書を手渡す)。

土居:え、待って。私、知ってる、三輪さんだ。京都にいたとき、三輪さんの事務所に行ったことある。

──はて?

土居:それこそ海象さんのゼミで、弁護士事務所のオフィスを借りて撮影したんですよ。そのとき、きっとお世話になってます。でも私が二十歳になる前のことだし、三輪さんは覚えていないと思います。

──本当ですか。ちょっとドラマみたいですね……。帰って妻にも伝えてみます。今日はありがとうございました!

【Shiori Doi】
1992年、福岡県出身。京都芸術大学卒業。’13年、林海象監督作品『彌勒』でデビュー。その後、映画『リバーズ・エッジ』『二人ノ世界』などの作品に出演。’24年、NHK連続テレビ小説『虎に翼』にレギュラー出演。主人公・佐田寅子の学友、山田よね役を熱演。

取材・構成/樋口毅宏、週刊SPA!編集部 文/アケミン 撮影/植田真紗美 スタイリスト/中村剛 メイク/国府田圭

―[インタビュー連載『エッジな人々』]―