発表会で衣装を着て、役を演じるのが楽しかったんですよね。毎回、幕が上がるとき、スポットライトを浴びながら舞台の袖から出ていく瞬間がなによりも好きでした。「表現するって楽しいんだ」と感じられるようになった原点はバレエですね。

──15年も続けたバレエをやめるのは、大きな決断でしたね。

土居:そうですね。高校1年のときに大きなコンクールに出たのですが、それが終わってからいわゆる「燃え尽き症候群」になってしまったんです。でもバレエ推薦で高校に入学している手前、やめたいとは自分からなかなか言えず。朝も起きられなくなって、正直限界でした。

親も私の様子に気づいていて、私が「もうバレエを続けられないかもしれない。普通に進学したい」と告げたら、すんなり理解してくれました。

──似たような話をバレエ経験者である他の女優さんからも聞いたことがあるんです。その方は、自分を抑圧し続けてきたけど、バレエをやめた瞬間、「これからは好きなことをしていいんだと思った」とおっしゃっていましたよ。

土居:まさに。それまで灰色だった世界がようやく色づき始めたみたいな感じで。今でこそ撮影前もぐっすり眠れる能天気な私ですが、それもすべてのネガティブはその時期に置いてきた感じです。

◆オープンキャンパスで映画監督・林海象に出会う

――バレエ、大変だなあ……。そこからなぜ俳優業に?

土居:それまで受験勉強を一切してこなかったので、その時点で受けられる大学を探して、いろいろと資料を取り寄せたんですが、パンフレットが一番きれいだったのが京都芸術大学で(苦笑)。

最初は、ダンスコース(現:演技・演出コース)を志望する予定だったんですが、オープンキャンパスに行ったとき、たまたま参加した「エチュード(即興演劇)」のワークショップに参加したら、それがすごく楽しくて。

教授であり映画監督の林海象さんも、おもちゃの拳銃を振り回したりしていて面白い人だなと思って見ていました(笑)。

――運命ですね。また話しますがうちの妻も海象さんに導かれた人生だったんです。

土居:そうなんですか。大学に入ってから、お芝居もすごく楽しめて今もどんどん解放されていっている感覚で、その意味で導かれました。

――きっとご家族も喜んでいらっしゃるのでは。

土居:今回は父が一番ソワソワしているみたいです(笑)。母も、3歳下の弟も、これまでも私の舞台を毎回見に来てくれて、一家総出で応援してくれてますね。

◆印象に残っている俳優は天海祐希

──ここで改めて土居さんのこれまでの経歴を振り返ると、いろいろと研鑽を積まれていらっしゃる。映画『リバーズ・エッジ』では、主人公の友人「小山ルミ」役で、性的表現を含むシーンにも挑んでいます。

土居:懐かしいですね。この映画は大学卒業後、上京して初めてつかんだ役なので、とても印象深くて。あの行定勲監督だし、岡崎京子さんの原作も好きだったので強い思いでオーディションに臨みました。

――共演した中で印象に残っている俳優さんはいますか?

土居:天海祐希さんです。ドラマ『緊急取調室』にゲスト出演したとき、初めてお会いしたのですが、まるで後光が差しているようでした。その後、『広島ジャンゴ2022』という舞台で共演させていただいた際には、「こんなに“背中”で導いてくれる、カッコいい座長がいるんだ!」と思って。

後輩にあれこれアドバイスするというより、天海さんが稽古している姿を見ていると、こちらも自然と「頑張ろう」と思えてくるんです。とても優しくて素敵な方で、またぜひご一緒したいですね。

――あと、これも僕、びっくりしたんですけど、土居さん10年ほど前には先ほど名前が挙がった林海象さんの作品にも出ていらっしゃる。