でも、恋だとか愛だとかは全てが分かってしまったら少しばかりつまらないのかもしれない。

一方、彰子。彰子は「源氏物語」に登場する若紫に思いを馳せていた。若紫は自分のよう。幼いうちに光る君に引き取られ、育てられた若紫。彰子は幼いころに入内し内裏で育った。その姿が重なるのだろう。

若紫はこれからどうなるのか、と問う彰子にまひろは「どうなればよいと思うか」と問い返す。

「光る君の妻になるがよい」

光る君は一条天皇のようだと彰子は言っていた。その一言に、彰子の思いが詰まっていた。心の内を一条天皇に伝えてはどうか、というまひろだったが、そこに一条天皇が訪れた。思いが溢れるかのように、「お慕いしております!」と告げた彰子。

頬を涙で濡らし、その瞳が一条天皇をとらえる。自分の感情を初めてあらわにした瞬間だったかもしれない。

その場は立ち去った一条天皇だったが、改めて藤壺を訪れる。彰子に触れるために。

雪が積もる夜に訪れ、ふとその雪に視線を向ける帝の美しいことよ……。

思い出していたのは定子と過ごした日々のことだろうか。

定子に慈しまれ、愛されていた幼い帝。自分を慕う誰かを慈しみ、愛する人にならなければならないときが来たのかもしれない。

<文/ふくだりょうこ>

【ふくだりょうこ】
大阪府出身。大学卒業後、ゲームシナリオの執筆を中心にフリーのライターとして活動。たれ耳のうさぎと暮らしている。好きなものはお酒と読書とライブ