国内工場については、テレビ、ビデオ機器の主力工場を次々に閉鎖しました。2014年にはPCのVAIO事業から撤退。10年連続で赤字だったテレビ事業に関しては台数・規模を追う姿勢を止めて高付加価値路線に切り替え、14年に黒字化を達成しました。
一方でPlayStation 2、3……と新型ハードを出し続けたことでゲーム事業は規模を拡大していきました。2020年に発売し、国内では売れないハードと認識されているPlayStation 5も売上台数の9割が海外であり、高い人気を誇ります。また、1980年から本格化させたイメージセンサーもソニーの中核を担うようになりました。
◆ゲーム事業の好調と円安で事業規模の拡大が続く
近年の業績推移(2021年3月期〜24年3月期)は次の通りです。主にゲーム事業が業績を牽引していますが、この間に音楽、映画事業そしてイメージセンサー事業も売上を拡大しました。ソニーの海外売上比率は約7割であり、円安も増収に寄与しています。
【ソニーグループ株式会社(2021年3月期〜24年3月期)】
売上高:8兆9987億円→9兆9,215億円→10兆9,744億円→13兆208億円
営業利益:9,553億円→1兆2,023億円→1兆3,024億円→1兆2,088億円
いわゆるテレビ、オーディオといったかつてのエレクトロニクス事業は売上の2割に過ぎず、ソニーの収益構造はかなり多角化しています。24年3月期における各事業の売上高は以下の構成です。
ゲーム関連事業:4兆1,730億円
音楽事業:1兆5,950億円
映画事業:1兆4,867億円
テレビ・オーディオなどハード関連事業:2兆4,149億円
イメージセンサー・半導体関連事業:1兆5,039億円
金融事業:1兆7,607億円
◆EVが新たな中核事業になる可能性も
ゲーム事業において子供向けゲームは任天堂の主戦場ですが、青年以上の年齢層はプレステが抑えています。そしてソニーは縮小する国内と違って海外事業をメインとしており、音楽・映画は今後も成長が見込まれる分野です。
イメージセンサー(CMOS)においてソニーは45%とシェアトップの座を確保しています。何より「SONY」のブランド力は強く、BtoC分野では性能の如何に関わらず名前だけで売れるという強みもあります。売上のみならず利益もセグメントごとに分散されているため、仮に1事業が崩れたところで簡単には全社への影響は限られるでしょう。
そしてソニーはホンダと共同で新型EV「AFEELA」の開発を進めています。発売は26年度の予定で、やや高価格帯の価格設定になるとみられています。もちろん性能が重要ですが、当初はソニーが手掛けるEVとして注目されるでしょう。将来的にEVがソニーの中核事業になるかもしれません。
<TEXT/山口伸>
【山口伸】
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 Twitter:@shin_yamaguchi_
- 前へ
- 2/2
外部リンク日刊SPA!