16日からの週は、米FOMC、英中銀、日銀などの金融政策発表に神経質に振れた。米FOMCでは市場の利下げ幅観測が50bpと25bpに分かれるなかで、50bpの大幅利下げが発表された。4年半ぶりの利下げとなった。パウエルFRB議長会見では、今後の大幅利下げについては慎重な見方が示された。ドル売りの反応は一時的にとどまり、ドルに買戻しが入った。英中銀は大方の予想通り政策金利が据え置かれた。直近に発表された英消費者物価指数で根強いインフレ圧力がみられたこともあり、ポンドは特に対ユーロで堅調に推移した。金曜日の日銀決定会合では政策金利が据え置かれた。注目の植田日銀総裁会見では、早期追加利上げに慎重な姿勢が見られ、円売りの動きが広がっている。一方で、ドル円は週明けに一時139円台突入もその後は円売りが優勢に。週末には144円乗せへと上伸した。クロス円も総じて堅調で、円相場は円安の流れが続いた。週全体では株式相場が堅調に推移しており、リスク警戒感の後退が円売り圧力として加わる面もあった。注目イベントが相次いだことで相場は神経質な振幅を繰り返したが、ドルストレートでのドル安の流れ自体は維持された。


(16日)
 東京市場は敬老の日の祝日で休場。

 ロンドン市場では、ドル円が139円台に下落。今週の米FOMC会合を控えて、足元のマーケットでは大幅利下げ観測が優勢。CMEフェドウォッチでは今回の利下げ幅について、約6割が50bp、4割が25bpとみている状況。先週半ばまでと比較すると、見方が逆転している。東京不在のアジア時間にはドル円の売りが目立った。141円手前水準から139円台に突入。ロンドン序盤には139.58近辺に安値を広げ、昨年7月以来のドル安・円高水準となった。クロス円も下落し、円買いが優勢だった。ロンドン時間に入ると円買いは一服。ドル円は140円台を回復した。ドルストレートではドル売りが前面に押し出され、ユーロドルは1.10台後半から1.11台前半へ、ポンドドルは1.31台前半から1.32台乗せまで上昇。この動きとともにユーロ円は155円台前半から156円付近まで、ポンド円は183円台後半から185円台乗せまで反発している。欧州株は売り先行も次第に一服。仏CAC指数は上げに転じている。米10年債利回りは3.63%台まで低下したあと、3.65%付近に上昇。きょうは目立った新規材料に乏しく、米FOMCをめぐる思惑先行の取引となっているようだ。

 NY市場では、ドル売り・円売りが優勢。ドル円は買い戻しが膨らんだ。特段の買い材料は見当たらないものの、本日は節目の140円を一時下回ったことで達成感が出たことや、このところの急ピッチな下げで過熱感も出ていたことから、ショートカバーが誘発されたもよう。140.90台まで反発している。ドル全般ではドル売りの動き。ユーロドルは1.11台を回復し、一時1.1140付近まで上昇。ポンドドルは1.32台を回復した。市場は今週のFOMCに注目しているが、ここに来て50bpの大幅利下げの可能性が再浮上しており、短期金融市場では一時65%まで確率を上げ通常利下げを上回っている。しかし、エコノミストからは「米経済は景気後退あるいはそれに近い状況にあると考えるような状況では決してなく、FRBは大幅利下げを回避できる」といった見方も出ている。今週のFOMCは委員の金利見通し(ドット・プロット)も発表されるが、どちらの結果になったとしても波乱の展開も留意する必要がありそうだ。

(17日)
 東京市場では、方向性の定まらない展開。ドル円は、前日の海外市場で139円台半ばまで下げた後、140円台後半まで戻して東京朝を迎えると、一時141.23付近まで上昇した。その後は一転して140.32付近まで下落したが、午後は下げ渋り、140円台半ばから後半に落ち着いた。きょう日本時間午後9時30分に8月の米小売売上高の発表を控え、徐々に様子見ムードが広がっている。ユーロ円は、ドル円同様に朝方につけた高値157.10付近から156.15付近まで下落したあと、前日終値付近で推移した。ポンド円も午後は185円台後半で小幅な値動きにどまった。ユーロドルは朝から11ポイントレンジにとどまり、1.1120台を中心に小動きとなった。

 ロンドン市場では、方向感に欠ける取引が続いている。欧州株や米株先物・時間外取引は米大幅利下げ期待で買われているが、為替市場では目立った動きはみられていない。ドル円は140円台半ばを軸に小幅の上下動。ユーロドルは1.11台前半で上下動も足元では前日NY終値水準に収束している。ポンドドルも1.32付近から1.32台前半で同様の振幅。ユーロ円は売りが先行も156円台は維持されており、156円台後半に落ち着きどころを見出している。ポンド円も185円台前半から一時186円台を回復も、足元では185円台後半で揉み合っている。9月独ZEW景況感は3.6と、前回19.2や市場予想17.0を大きく下回った。独ZEWは「経済状況の早期改善への期待、目に見えて薄れつつある」とした。シムカス・リトアニア中銀総裁は「10月に利下げを行う可能性は極めて低い」と指摘。ただ、いずれにも市場は反応薄だった。

 NY市場では、ドル円が142円台まで上昇。8月の米小売売上高が予想外の増加となり、為替市場はこのところのドル売りが一服した。ドル円は前日に節目の140円を割り込んだが、それ以上の下値追いがなかったことで、明日のFOMCを前に直近の下げの調整が出ていたのかもしれない。明日のFOMCは見方が完全に二分しており、最近では珍しいくらいに不透明なイベントとなっている。今回は委員の金利見通し(ドット・プロット)も発表され、波乱の展開も警戒される中、ポジションを軽くしておきたい意向が強かったのかもしれない。ユーロドルは上値が重かったが1.11台は維持。ECBは10月理事会についてはオープンな姿勢を維持している。ドイツ経済を中心に景気の下振れリスクがある一方、インフレはなお高水準に留まっていることから、今年については10月は見送り、12月の利下げでコンセンサスが形成されているようだ。ポンドドルは1.32台から1.31台半ばまで一時下落。総じてドル買いが優勢だった。

(18日)
 東京市場では、ドル円が反落。昨日海外市場で米小売売上高の好結果をきっかけにドル買い円売りが強まり、140円台から142.40台まで上昇した。東京朝はほぼ高値圏でスタートしたが、その後はドル売り・円買いが優勢となった。今晩の米FOMCを前に、東京市場では大幅利下げ期待がドル売り・円買いにつながった。午後に入ると勢いは収まったものの、ドル売り円買いの流れ自体は継続。141.23近辺まで一時下落。その後は141.50前後まで戻した。クロス円も売りが優勢。ユーロ円は朝の158.30台から一時157.05近辺まで下げ、ポンド円は187.46近辺から一時185.83近辺まで下落。ドル円同様に下げ一服後は少し買戻しが入った。ユーロドルは1.11台前半での推移。ドル安の流れから1.1110台から買いが入ったものの、値幅は限定的。米FOMCは大幅利下げを期待する動きも、25bp利下げ期待もかなりしっかりと見られ、どちらに決まっても動きが予想されるだけに、神経質な動きだった。

 ロンドン市場では、ポンドが買われている。日本時間午後3時に発表された8月英消費者物価指数で前年比が+2.2%で前回から変わらず、コア前年比+3.6%やサービスCPI+5.6%などの伸びが加速したことに反応。明日の英中銀金融政策委員会での利下げ見送り観測が一段と高まっている。ポンドドルは1.31台半ばから1.32台乗せへと上昇。ポンド円は185円台後半から187円台前半へと反発し、東京市場での下げを戻している。対ユーロでもポンド買いが優勢。この後の米FOMCでは4年超ぶりの利下げ発表が完全に織り込まれており、英中銀への思惑との差が目立っている。ECBも直近の会合で利下げを実施しており、差異がみられる。ドル円は東京市場で142円台前半から141円台前半まで下落したあと、ロンドン市場ではいったん142円付近まで反発。しかし、足元では141円台後半から半ばへと再び上値が重くなっている。ユーロドルは1.11台前半で小高く推移した。

 NY市場では、ドル円が大きく下に往って来いとなった。 午後にFOMCの結果が公表され50bpポイントの大幅利下げとなった。発表直後のドル円は142円ちょうど付近から140.50付近まで急速に下落。ただ、パウエル議長の会見が始まると今度はその下げを急速に取り戻し142円台半ばまで買い戻されている。ドル円はFOMCの結果とパウエル議長の会見を受けて上下動したものの、基本的に方向感は見い出せていない。声明ではインフレの落ち着きに確信が強まったとし、雇用に軸足を移す姿勢が示されていた。FOMC委員の金利見通し(ドット・プロット)では、中央値からは年内あと計50bp、来年は計100bpポイントの利下げを見込んでいる。パウエル議長の会見では、インフレに勝利宣言をする状況ではなく、利下げを急がない姿勢を強調したことから、米国債利回りの上昇と伴にドル円も急速に買い戻されたようだ。ユーロドルはFOMC後に1.11台後半まで上昇も、その後は1.11ちょうど付近に戻した。ポンドドルも一時1.33近辺まで上昇したあと、1.31台後半に反落した。 

(19日)
 東京市場では、ドル円が上下動。前日のNY市場でパウエルFRB議長が利下げを急がない姿勢を示してドル高となった流れを引き継ぎ、前日終値と比べて1.5円以上のドル高円安水準となる143.95付近まで一時上昇。米10年債利回りが一時3.73%台まで上昇したことや、日経平均が一時1000円超の大幅高となったこともドル買い・円売りを支えた。しかし、144円台手前では上値を抑えられ、午後に入って142円台半ばと、きょうの高値から1円以上押し戻される荒い値動きとなった。クロス円も同様に高下している。ユーロ円は午前に一時159.42付近まで、ポンド円は一時189.42付近まで上昇し、ともに6日以来およそ2週間ぶりの高値を更新した。午後は上げが一服している。ユーロドルは下に往って来い。1.1069付近まで下落も、その後は1.1134付近まで反発。

 ロンドン市場では、円安とドル安の動きが広がっている。東京市場では円安から円高に振れる激しい振幅にがみられたが、ロンドン時間に入ると欧州株や米株先物・時間外取引の上昇とともに、ドル円やクロス円が買われ、ドルストレートはドル安に傾いている。前日の米FOMCでの50bpの大幅利下げに素直に反応している。また、この日の英金融政策委員会(MPC)では大方の予想通り政策金利が5.00%に据え置かれた。8対1での据え置き決定で、ディングラ委員のみが25bp利下げを主張した。声明では「あまりに速く、または過度に利下げしないことが重要」としており、米国などと比較すると慎重な利下げ姿勢が示された。発表後にポンドは一段と買われている。ドル円は142円付近から143円台へ、ユーロ円は158円台から160円近くへ、ポンド円は188円台から190円台へと上昇。ユーロドルは1.11台前半から後半へ、ポンドドルは1.32台前半から一時1.33台乗せまで買われている。

 NY市場では、リスク選好の雰囲気の中、ドル円が方向感なく上下動している。143円台後半で上値を抑えられる一方、142円台半ばでは下支えされている。市場では前日のFRBの大幅利下げを再評価する動きが出ていた。前日はパウエル議長が利下げを急がない姿勢を強調したことからドル買いも見られていたが、今後の利下げが米経済を景気後退から守るというソフトランディングへの楽観的な見方に繋がっていたもよう。市場にはリスク選好の雰囲気が広がっていた。ユーロドルはNY時間に入って伸び悩む場面もみられたが、1.11台はしっかりと維持した。ポンドドルは1.33台まで買われたあと、NY時間に入ると伸びを欠いた。きょうは英中銀が政策金利を据え置いた。英中銀の声明からはハト派な雰囲気は全くない。ベイリー総裁のコメントは十分に長く景気抑制的な政策を続けることの必要性を強調しており、大半の委員は漸進的なアプローチが必要とみなしていた。

(20日)
 東京市場では、ドル円が142円台で神経質な動き。朝方の142円台後半から上値が重くなり142円台前半へと軟化。全国消費者物価指数が前回から上振れたことに反応していた。正午ごろに発表された日銀金融政策決定会合結果では政策金利が市場予想通り据え置きとなった。瞬時買われたあとは再び売りに押されて142円を割り込む場面があった。その後は植田日銀総裁会見を見極めたいとして142円台前半で揉み合った。ユーロ円も朝方の159.50付近から158.50付近まで下押しされ、158円台後半に落ち着いた。ユーロドルは1.11台後半でややドル売りの動きで買われている。

 ロンドン市場では、円売りが強まっている。この日の注目材料である日銀決定会合では政策金利が据え置かれた。その後の植田日銀総裁会見に注目が集まるなかで、ドル円は一時142円台割れへと軟化。植田総裁は「円安に伴う輸入物価の上振れリスクは相応に減少」「利上げ判断に時間的余裕」などと発言し、市場での早期利上げ観測が後退した。ドル円は一気に143円台後半へと買われ、さらに144円台乗せへと上伸している。クロス円でも円が全面安。ユーロ円は158円台から161円付近へ、ポンド円は189円前後から191円台後半へと上伸している。円相場主導の展開となるなかで、ユーロドルは1.11台半ばから後半、ポンドドルは1.32台後半から1.33台前半での振幅にとどまっている。ロンドン朝方に発表された8月英小売売上高が予想を上回る伸びを示したことでポンド買いの反応がみられる場面があった。ユーロ対ポンドではポンドが約2年ぶりの高値水準となった。

 NY市場ではもう一段のドル高円売りとなり、144円49銭まで上値を伸ばした。ロンドン市場で144円40銭台まで上昇した後、いったんは143円50銭前後までの調整が入ったが、米債利回りの上昇をきっかけにドル全面高となり、下げ分を解消、高値を更新する動きを見せた。もっとも週末を前に午後は利益確定の売りなども見られ144円00銭を挟んでの推移となった。ユーロドルはNY午前のドル全面高の展開において、1.1136までユーロ安ドル高となったが、その後米債利回りの上昇が一服したこともあって、下げ分を解消して1.1170台を付けている。ユーロ円はドル主導ということもあり、ドル円の上昇を支えにしっかりも、ロンドン市場の高値161.16に届かず、161円00銭前後までの上昇にとどまった。その後少し売りが入り、160円台半ばでの推移となっている。