独身生活大謳歌中のアラサー、七尾紫と申します。フリーの編集者として活動しながら、彼氏は作らず、結婚願望も持たず、日々楽しく過ごしています。
というのも、私は「元カレ全員ダメ男です」と胸を張って言えるほど男運がない。付き合うに至らなかった人も含めると数十人にのぼるダメ男体験の中から、今回はZ世代がよく言う“蛙(カエル)化現象”のエピソードをご紹介します。
◆Z世代がよく言う「蛙化現象」とは?
蛙化現象は、もともと「想いを寄せていた人と両想いになった途端に冷めてしまうこと」という意味でした。グリム童話の、お姫さまが嫌っていた蛙は、実は魔法で蛙にされていた王子様だったという話が由来ですが、蛙化現象は逆に、王子だと思ってた人が急に蛙に見えてくるような現象です。
昨今のZ世代の間では、蛙化現象は「好意を抱いていた相手に一瞬で冷めてしまうこと」を指すそうです。今回は後者の意味で使用したいと思います。
◆最初の夜デートでは素敵に見えたのに…
29歳のときに、マッチングアプリでとある男性と出会いました。彼は同い年で好きなファッションブランドが同じ、しかも私と似たような職業をしていたので、会話は弾むばかり。
会う日まではメッセージのやり取りや通話を何度も重ね、普段私がやりがちなイケイケドンドンスタイルではなく、コツコツと関係を作っていきました。実際、会うまでに1カ月以上かけたはずです。
初対面は夜のドライブ。マッチングアプリの人と初対面からドライブは危険なのでいつもは断りますが、それなりに関係ができていたのでOKしました。運転も上手で、ガソリン代を払うと言っても「いいよいいよ。俺がドライブしたかっただけだから」と…なんて素敵な人なんでしょう!若干の写真詐欺を感じたものの許容範囲だったのと、何より楽しかったので、次のデートを約束して解散しました。
◆なぜか、彼の「長すぎる爪」で冷めてしまった…
二度目のデートは、ランチ&観光デート。私も柄にもなく髪なんて巻いちゃって、けっこう浮かれていましたね。
当日もまた車で家の近くまで迎えに来てくれて、助手席のドアの前で待っていてくれました。私にドアを開けるためですね。やりすぎな気もしますが、“モテ”を勉強してきた感があって、そういう努力をする人は好きです。
けれど、二度目の「なんて素敵な…」は出ませんでした。
太陽の下できちんと見た彼は、なんだか小学生のような服装。「好きなファッションブランドが同じ」と書きましたが、単に同じだけでした。
そして何より目が離せなかったのが、スマホを持つ彼の手。爪が、引くほど長いのです。
その後、ご機嫌そうに運転する彼をよそに、私の頭の中は「何カ月伸ばしたらその長さになるの?」「気にならないの?」「人殺せるぞその長さは」という、もう「爪爪爪」状態。そのまま、彼への気持ちが「ぶっ生き返す」ことはなかったのです(「爪爪爪」「ぶっ生き返す」ともマキシマム ザ ホルモンの曲名です。ご存知ない方、失礼いたしました)。
◆とても小さなきっかけで起きるのが蛙化現象
「爪が長いくらいで…」と思うかもしれませんが、その「それくらいで」をきっかけに冷めてしまうことこそが“蛙化現象”。私もこのとき初めて体験しました。
ちなみにデート中は、私に道路側を歩かせなかったり、「段差あるよ」と声をかけてくれたりと大変紳士でした。でもところどころで“男”を香らせたいのか、「女の子をナンパしてホテルに連れて行くテクニックがあって…」みたいな話をしてきたり…。それに対して「てめーその爪で女の体に触れたんじゃねーだろーな」と、脳内で突っ込んでいる自分がいました。普通に不潔ですし、ナンパの前にやること(爪切り)があるんじゃないですかぁ?と、少しイライラしちゃいました。
それでも、デートは完遂いたしました。一緒にいた約6時間、ずっとずっと爪のことばかり考えてしまい、帰ってからさすがに反省。結局、その日以来、彼には会っていません。
◆「社員数どのぐらい?」という彼の質問の意味
私はあれから、爪を切れない理由や、そういった病気があるのかなど、思考のかぎりを尽くしました。でも二度目のデートでわかったのですが、彼の服はヨレヨレで、コーディネートもミスマッチ。髪の毛もノーセットで、靴もボロボロ。普通に、人柄と運転技術に全振りした男性だったのだと思います。
ただ、彼から見て、私が“蛙化”したタイミングが多分あったように思います。私は当時、少し大きい企業に勤めていたのですが、「社員数どれくらいいるの?」と聞かれて「何千人とか…?」と答えてからテンションが下がっていくのを感じました。
変な質問ですが、マッチングアプリにおいてこの質問をしてくる男性はたまにいます。要は、“自分より稼いでそうな女は嫌だ”ということだそうですが、こっちは何も悪いことをしていませんから、どうしようもありません。そう、“蛙化現象”は、どうしようもないのです。
このように、自分だけでなく、相手にとっても自分が何かの瞬間に“蛙化”していることがあるかもしれません。そんな想像力を得られたのも、今ではよかったと思っています。
みなさんの“蛙化”ポイントは何ですか?私は…やっぱり爪ですかね!
<文/七尾紫 イラスト/織田繭>
【七尾紫】
元・恋愛体質のフリー編集者。ダメ男に好かれてしまう特異体質を持つ。DVと不倫以外は大体やられている
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