[9.18 天皇杯準々決勝 千葉 0-3 京都 フクアリ]

 公式戦の先発出場は6月26日のJ1第20節・柏戦(△2-2)以来約3か月ぶり、満を持して帰ってきた京都サンガF.C.のストライカーが鮮やかな先制ゴールで天皇杯4強に導いた。試合後、FW豊川雄太は「一発回答しないといけなかったので結果が出て良かった」と喜びを語った。

 0-0で迎えた前半11分だった。3トップの中央で先発した豊川は味方のパスを中盤に下がって受け、FWマルコ・トゥーリオに落としてスプリントを開始。相手の背後に勢いよく抜け出すと、意表を突いて出てきたスルーパスに完璧な反応を見せ、ゴール前に走り込む。

「試合の初めからうまく連係して話し合いながらやれていた」。そんな2人の連係はこのシーンでもピタリと合い、最後は飛び出してきたGKよりいち早くボールにアプローチし、スライディングシュート。「入れー、って足を出しました」。豊川いわく「気持ちで」押し込んだシュートがゴールマウスに吸い込まれた。

 最後に先発した柏戦で左足首を負傷し、「今までになかった」という約2か月間の長期離脱を経験してきた豊川。J1前節の横浜FM(◯2-1)戦で途中出場から復帰を果たしたが、先発出場はこれが初めてだった。

 豊川が離脱している間、チームにはFWラファエル・エリアス、FWムリロ・コスタといった強力なアタッカー陣が加入しており、後半戦10試合7勝2分1敗という快進撃を牽引。「別にネガティブになることもなく、チームが勝てていたし、ポジティブにリハビリに向かえた。焦りはなかった」と振り返るが、この一戦にかけるモチベーションは大きかった。

「まだまだ自分の中ではコンディションが全然な中、真ん中で使ってもらった。監督からどれだけやれるんだ(と求められている)というふうに受け取って、一発回答しないといけなかった」

 また最近まではメンバー外でリハビリを続けていた身。他のチームであればターンオーバーの選択肢もあるミッドウィークの一戦で、主力が帯同メンバーに並んだ中、京都に残って練習に励むチームメートへの思いも背負っていた。

「城陽の練習場でずっと練習していた選手もいて、メンバーに入れない選手もいたし、その中でも僕は怪我から復帰して使ってもらったので、残っている人のためにも結果を出す必要があった。そういう気持ち、この試合が終わった後に後悔しないようにという気持ちを強く持って臨んだ」

 そうして決めた復帰後初ゴール。白熱するポジション争いの中でも「(原)大智、ラファ(エリアス)、マルコみたいな規格外なプレーはできないけど、自分がやれるプレースタイルで。今日のような動きを今までもやってきたし、これからも磨きをかけて、自分ができることでチームに貢献していきたいと思っている」という覚悟も見せつける働きとなった。

 またクラブにとっても価値ある天皇杯4強だ。豊川は2年前にも天皇杯準決勝を経験し、その時は広島に敗れていたが、取材時点では「2年ぶり」という感慨は全くなかったようだ。

 試合後、報道陣に当時の思い出を聞かれた豊川は「あれ4強行きました?あれ、準決?」と本気でいぶかしげな表情を見せつつ、「(2年前は)残留争いでそれどころじゃなかった」と苦笑い。だが、その心境の変化こそがいまの京都の好調を物語っているというもの。30歳のストライカーは10月27日の準決勝を見つめ、「タイトルが取れるところに来ているし、今の京都なら行ける気がする。もっと引き締めて練習からやっていきたいなと思います」と意気込んでいた。

(取材・文 竹内達也)