[画像] 「監督と話したい」「正直去年より…」堂安律が語った新生フライブルクの課題と手応え。13年ぶりに指揮官を交代「まだまだ伸びしろがある」【現地発コラム】

 日本代表MFの堂安律がプレーするSCフライブルクというクラブ、そして人口24万人のフライブルクという街にとって、前監督クリスティアン・シュトライヒの存在はあまりに偉大すぎた。

 昨季まで12シーズンにわたって監督を務め、妥協を許さぬ徹底した指導と愛情あふれる人間味で選手、スタッフ、ファンをまとめあげ、残留争いが日常だったクラブを着実に地盤を固め、少しずつ継続した成長をもたらし、DFBカップ決勝進出やヨーロッパリーグ出場に導いた。

 前任者の功績が偉大であればあるほど後任者の仕事は難しくなる。ドルトムントでユルゲン・クロップのあとになかなか長期間クラブとアイデンティティを分かち合える指導者が誕生していないことからもよくわかる。

 そんななか、フライブルクの新監督ユリアン・シュスターはここまでリーグ戦3試合で勝点6と結果面でも、そして内容面でも上々の印象を残している。ファンからのサポートも結びつきもすでにある。

 現役時代はフライブルクで長くプレーをし(219試合出場)、キャプテンも務めた。引退後は育成アカデミーとトップチームを結びつけるコネクトコーチとして活動していたシュスターは、スタッフや選手との関係性をうまく構築。これまでチームの主軸として活躍していた選手だけではなく、若手選手も積極的に起用するなど新しい風をもたらしている。
【PHOTO】キュートな新ユニ姿を披露!日本代表戦に華を添えた影山優佳を特集!
 チームの雰囲気は上々で、堂安も2―1の逆転勝利をあげたボーフム戦後にポジティブなコメントを残している。

「(チームとして)やろうとしていることがある。それプラス、いままだ完璧じゃないというのを踏まえると、まだまだ伸びしろがあるということだと思います」

 もちろんすべてがうまくいっているわけではない。たとえば優勢に試合を運びながら不用意な失点をしてしまうのは、「シュトライヒ監督の時にはあまりなかったこと」と指摘する。

「(シュトライヒ監督のころにあった)ベースの部分が抜けてしまうことも少しありますし、そこは引き続き、気をつけないといけないかなと思います」

 ビルドアップからボールを運ぶ際も、このレフティがインサイドハーフからセンターにまで入ってポジショニングをとろうとするが、狙い通りにボールが出てくるシーンはまだ多くはない。

「ちょっとやり方が去年とは違う。中で受けようという意識はあります。もっと外で張りたいところは正直ある。1対1の場面が、正直去年より減っている。今日の後半は少し増えましたけど。それはちょっと監督と話したいなと思います」
 
 チームとしての狙いと個々の強みをどのように融合させていくのか。その辺りがこれからの挑戦になるだろう。

「それらが融合した時に、またさらに順位は上がるかなと思います」

 堂安が言うように、伸びしろがあるところをポジティブに捉えてやり続けていく。うまくいかない時期だってくることだろう。不運な試合が続くことだってあるだろう。そんな時でも自分たちらしさを失わずに戦えるかどうか。昨季最終節、シュトライヒとともにクラブを去ったコーチのパトリック・バイアーがこんなメッセージを残していた。
 
「みんなに最後に一言を。フライブルクはここ数年でものすごい成長を遂げた。ファンからの期待が高まってきているのもわかる。でも自分たちがどこから来たクラブであるかを忘れてはいけない。現実的な視点で、冷静さをもって取り組み続けるクラブを支えてほしい」

 きっと偉大な監督の跡を継いだフライブルクの新指揮官をファンは温かく、我慢強くサポートしてくれる。新しい時代に足を踏み入れたフライブルクとそこで躍動する堂安の今季が楽しみでならない。

取材・文●中野吉之伴