◆逆走ドライバーに遭遇したら、どう対処すればよいのか?

 そういった逆走に、われわれはどう対処すればよいのかだろうか?

「前方から逆走車が走行してきたら、パニックにならず落ち着いて避けてください。高速道路のすれ違いは相当なスピード感です。そして、回避後は通報を心がけたいのですが、運転中の携帯操作は危険ですので、同乗者からの110番通報か、安全なパーキングエリアからの110番通報、もしくは非常電話での通報をお願いしたいです」

◆逆走ドライバーに対しての社会的な試み

 こういった逆走に対して、行政などはどんな対策を講じているのだろうか。また、今後どんな対策が必要になってくるのだろうか。

「国土交通省やNEXCOなどは逆走防止のために何年も前からICやJCT周りの各種交通表示を『逆走禁止』『とまれ! 逆走です』といったものにするなどの改善を試みていて、一定の効果が認められています。

 しかし、交通表示はただ数が多ければよいというわけではありません。高齢者にわかりやすいシンプルな交通表示を確立するのは、非常に困難なことです。

 しかも、標識に書いてあることを自分事だと認識できるかどうかにも問題もあります。例えば、逆走中の高齢ドライバーが「逆走中」という標識を見ても『ほう、この辺りは逆走するやつがいるんだな』ぐらいの認識で終わってしまう恐れも十分に考えられるのです。怖いことですが……」

◆逆走や事故を防ぐ効果的な対策とは?

 それではどんな対策が効果的なのか?

「海外では限定免許という交通安全の流れがあります。これは『AT限定』と同じ要領で『日中限定(夜間運転禁止)』『一般道限定(高速道路禁止)』『自宅から半径○キロメートル以内』など、高齢者の事故が起こりやすい箇所や時間帯の運転を制限する免許です。

 日本でのこういった限定免許の導入の目途はまったくたっていませんが、こういった制限運転を自主的に行うことは、逆走のみならず高齢者の事故を防ぐことに非常に有用です。

『夜や雨天の運転はしない』『高速道路に乗らない』『体調の悪い日は運転をしない』『朝の通学時間は運転しない』などのマイルールを作って、自分の運転能力にあった運転習慣を継続する。こういった制限運転を高齢ドライバーの方やその家族の方には推奨しています」

◆自分自身の運動能力を把握することが大切

 運転免許の有無は、とくに車社会である地方の高齢者にとっては死活問題だ。

 闇雲に高齢者の自動車運転を危険視するのではなく、高齢ドライバー自身が、自己の運転能力を客観的に把握し、それに合わせた無理のない運転習慣を実践し、運転寿命を伸ばしやすい社会を構築していくのが、逆走防止、ひいては高齢ドライバーの事故削減につながる近道なのではないだろうか。

NPO法人 高齢者安全運転支援研究会
2012年発足。高齢ドライバーの運転に対する考え方、身体能力の変化、認知機能の衰えなどが安全な運転にどの様に影響するかを、実地運転の調査から検証。高齢ドライバーに向けた安全運転の啓蒙や認知機能維持の対策などを通じて、高齢者の安全な運転と高齢運転者の活性化を目指した活動を行っている。研究会の監修した書籍に『長く乗り続けるためのクルマ運転テクニック図鑑』(大泉書店)、『図解「ペダルの踏み間違い」はこれで防ぐ』(講談社)などがある。

<構成/日刊SPA!編集部>