◆公的ケアがなかなか行き届いていない実情も

 各自治体に公的な相談窓口も設置されている中で、親が民間の業者を利用するのはなぜなのでしょうか。

「学校や自治体が、不登校について相談できる窓口を適切に案内してくれるかどうかは、地域によって差があるのかもしれません。そのため、相談したいのに相談機関につながれていない親子も多くいらっしゃると思います。不登校の子どもが利用できて、学習や相談が受けられる『適応指導教室』などの公的機関も自治体によっては枠が埋まっていて、すぐに利用開始できないこともあるでしょう。

児童精神科の予約が取りづらくなかなか相談できないことも、民間の事業者を利用する一因だと思います」

 子どもの再登校を強く願う親が、公的な相談窓口で納得のできるアドバイスが得られず、藁をもつかむ思いで民間のサービスを利用するのという状況もあるのでしょう。

◆まずは学校のスクールカウンセラーに相談を

 公的機関、民間業者ではさまざまな不登校支援が行われています。子どもが不登校になったとき、親はどのような相談機関を選べばいいのでしょうか。

「今は情報が溢れている分、適切な支援を選択することが難しくなっています。もちろん実際にたくさんの親子を救う民間のサービスもたくさんありますが、中には専門家の多くが疑問に思うようなサービス内容でも、医師監修などと謳っているサービスが存在するのも事実です。

そのため、最初は公的な相談窓口を利用することをおすすめします。まずは学校に配置されているスクールカウンセラーの面談予約をとって相談してみてください。子どもが嫌がるなら、親御さんだけが相談することも可能です。厚生労働省のサイトでは『不登校やいじめひきこもりなどの相談窓口』として、児童相談所や児童家庭支援センター、教育センター、ひきこもり地域支援センター、発達障害者支援センターなどが紹介されています。

自傷行為が激しいなどリスクが高い場合は、公的な機関から専門的な治療が受けられる精神科につなげてもらうことも可能です」

◆“学校へ行っても行かなくても、あなたは価値のある存在”

 最後に、自身の長女も不登校が続いているというさわ先生に、親御さんたちに伝えたいことを聞きました。

「私も最初は『学校に行かせなければいけない』と思っていました。でもあるとき、これって子どものことを思っているようで、『学校に行かない娘がどうなるのか想像できない』という私自身の不安からくるものなんじゃないかと思ったんですよね。

今は不登校の子どもにもたくさんの選択肢があると知って、そういったものをいろいろと取り入れていくなかで、必ずしも学校に再登校させるだけがゴールではないということを私自身も納得感をもって受け入れられるようになりました。子どものことで悩んだとき、どこまでが親である自分の不安で、どこまでが子ども本人の課題なのか境界線を意識することがまずはとても大切だと思います」

 さわ先生は改めて「焦って再登校を目指す必要はない」と強調します。

「教育現場の実情を知ると、すべての子どもが学校に適応するのは不可能だと感じます。学校に合わないのなら、その子に合った環境を調整してあげることが、子どもの心を守るために重要です。子どもが学校に行けないからといって、あなたの子育てが悪いわけではないし、お子さんがダメなわけでもありません。

そしてお子さんにも『学校へ行っても行かなくても、あなたの価値には変わりがないんだよ。学校に行けなくてもあなたのこと大好きだよ』と、ぜひ言葉にして伝えていってくださいね」

◆編集部がスダチ代表を直撃すると