「月がきれいですね」だけでは収まらない想い。こんなに全力で「あなたのことが好きです」と言えるものなのだろうか。

◆源氏物語、誕生へ

改めて、今回は道長のまひろに対する愛が溢れている回だった。

賢子と会い、膝に乗せると「母に似て賢そうな顔をしておる」とこれまでに見せたことのないような笑顔を見せる。

自分の子と気がついているか、否か。宣孝から子が生まれたと聞いたときに気がついてたとするなら、自分の子だと認識して膝にのせていることになる。でも、どちらかと言うと、まひろが子どものころの面影を賢子に見て微笑んだ気もする。当時の淡い恋心を思い出したしたのだろうか。だとしたらときめく。ときめく方の説を個人的には推したい。

そんなまひろへの愛が溢れる一方で、正妻や妾に対する態度は甘くない。まひろとのやりとりを見ると、正妻や妾との時間は義務なのでは、と感じてしまう。まひろと、まひろ以外の女性で道長の中で区分されているのだとしたら辛い。正妻である倫子(黒木華)とは、まひろとのことは関係なく、道長との間にすでに溝が生まれている。

まひろは妻にならなかったからこそ、特別な存在になっているのだとしたら……複雑な気持ちになりそうだ。

さらに次回は倫子が、「どうして道長がまひろのことを知っているのか」と問う場面があるようだ。どう応えるのか、道長。

つい、まひろと道長の関係性について夢中になってしまったが、今回の最大の注目ポイントは「源氏物語」の誕生である。物語がまひろに降りてきた。出来上がった物語は一条天皇のもとへ。物語が、どのように人の心を動かすのか、注目したい。

<文/ふくだりょうこ>

【ふくだりょうこ】
大阪府出身。大学卒業後、ゲームシナリオの執筆を中心にフリーのライターとして活動。たれ耳のうさぎと暮らしている。好きなものはお酒と読書とライブ