この週末、何を観よう……。映画ライターのバフィー吉川が推したい1本をピックアップ。おすすめポイントともにご紹介します。今回ご紹介するのは、現在公開されている『モンキーマン』。気になった方はぜひ劇場へ。
【写真】主人公が怒りの化身に覚醒『モンキーマン』場面写真【10点】
〇ストーリー
たった一つの小さな残り火が、すべてを燃やし尽くす。幼い頃に母を殺され、人生の全てを奪われた〈キッド〉は、夜な夜な開催される闇のファイトクラブで猿のマスクを被り、〈モンキーマン〉を名乗る“殴られ屋”として生計を立てていた。どん底で苦しみながら生きてきた彼だったが、自分から全てを奪ったヤツらのアジトに潜入する方法を偶然にも見つけるー。何年も押し殺してきた怒りを爆発させたキッドの目的はただ一つ「ヤツらを殺す」。【復讐の化神〈モンキーマン〉】となった彼の、人生をかけた壮絶なる復讐劇が幕を開ける!
〇おすすめポイント
世界で知られているインド系の俳優としては上位にランクインするであろうデヴ・パテルの初監督作品!!
新人の頃に出演したインドが舞台のイギリス映画『スラムドッグ$ミリオネア』(2008)で注目された後、数々の映画やドラマに出演。イギリスの代表的な作家チャールズ・ディケンズの自伝的小説「デイヴィッド・コパフィールド」の映画化『どん底作家の人生に幸あれ!』(2019)では、イギリスの白人というイメージのあった主人公をインド系のパテルが演じたというのは、ひとつの到達点にも思えるし、ジェームズ・ボンドの候補として噂されたこともあるなど、世界に知られる名俳優へと成長した。
そんなパテルはもともと映画制作にも意欲的で、『ホテル・ムンバイ』(2018)や配信スルーの『ウエディング・ゲスト 招かれざる客』(2018)にもプロデューサーのひとりとして参加していた。今作も当初は製作として参加する予定で、監督は『グランツー・リスモ』(2023)のニール・ブロムカンプに依頼する予定だったが、結果的に自身が監督デビューすることに。
そして完成したのが、ヒンドゥー神話、叙事詩に登場する猿の神ハヌマーンをモチーフとしたバイオレンス・アクション『モンキーマン』だ。インドではDisney+Hotstarで配信されているアニメ「レジェンド・オブ・ハヌマーン」や日本でも10月4日から公開される『ハヌ・マン』(2024)も人気を博すなど、今もファンの多いハヌマーンをモチーフとしているが、決してヒーロー映画ではない。
パテルいわく、『アジョシ』や『ザ・レイド』といったアジアン・アクションとインド映画を混ぜ合わせた。またはシャー・ルク・カーンのアクション映画にバイオレンス味を加えたようなものとも言っているのだが、最近のインド映画はあまり観ていないようで、インドエンタメに対する認識が一周、二周遅れなのは気になるところではあったりもする。
今作のなかで扱っていることは、政治と警察の癒着、貧困、ドラック、人身売買、女性蔑視、トランスジェンンダーや同性愛者への差別など。そんなインドの負のイメージが渦巻く、架空のダークシティのなかで主人公が怒りの化身として覚醒していくわけだ。
インド系とはいってもインドで活躍しているわけではないからこその、外側から観た俯瞰的なインドのイメージ、悪く言えば偏見が詰められていたりもする。それはそれで主人公の、復讐に対しての一方通行な視点と共通する部分を強くしているようだ。社会派な作品として観るには散らかり過ぎているが、バイオレンス・アクションとしてはかえって良かったのかもしれない。
ちなみに作品の公式PRとして“復讐の化身”とあるが、それは少し疑問に感じる部分がある。モンキーマン自身は復讐心かもしれないが、背負っているものは、虐げられた人々の怒りであるし、モンキーマンを立ち上がらせているのは、”復讐”というよりも”怒り”そのもの(とくに後半においては)であるため、”怒りの化身”とした方がしっくりくるのではないだろうか。独りよがりな復讐心では勝てず、怒りを身にまとって復活しているのだから……。
【写真】主人公が怒りの化身に覚醒『モンキーマン』場面写真【10点】
〇ストーリー
たった一つの小さな残り火が、すべてを燃やし尽くす。幼い頃に母を殺され、人生の全てを奪われた〈キッド〉は、夜な夜な開催される闇のファイトクラブで猿のマスクを被り、〈モンキーマン〉を名乗る“殴られ屋”として生計を立てていた。どん底で苦しみながら生きてきた彼だったが、自分から全てを奪ったヤツらのアジトに潜入する方法を偶然にも見つけるー。何年も押し殺してきた怒りを爆発させたキッドの目的はただ一つ「ヤツらを殺す」。【復讐の化神〈モンキーマン〉】となった彼の、人生をかけた壮絶なる復讐劇が幕を開ける!
〇おすすめポイント
世界で知られているインド系の俳優としては上位にランクインするであろうデヴ・パテルの初監督作品!!
新人の頃に出演したインドが舞台のイギリス映画『スラムドッグ$ミリオネア』(2008)で注目された後、数々の映画やドラマに出演。イギリスの代表的な作家チャールズ・ディケンズの自伝的小説「デイヴィッド・コパフィールド」の映画化『どん底作家の人生に幸あれ!』(2019)では、イギリスの白人というイメージのあった主人公をインド系のパテルが演じたというのは、ひとつの到達点にも思えるし、ジェームズ・ボンドの候補として噂されたこともあるなど、世界に知られる名俳優へと成長した。
そんなパテルはもともと映画制作にも意欲的で、『ホテル・ムンバイ』(2018)や配信スルーの『ウエディング・ゲスト 招かれざる客』(2018)にもプロデューサーのひとりとして参加していた。今作も当初は製作として参加する予定で、監督は『グランツー・リスモ』(2023)のニール・ブロムカンプに依頼する予定だったが、結果的に自身が監督デビューすることに。
そして完成したのが、ヒンドゥー神話、叙事詩に登場する猿の神ハヌマーンをモチーフとしたバイオレンス・アクション『モンキーマン』だ。インドではDisney+Hotstarで配信されているアニメ「レジェンド・オブ・ハヌマーン」や日本でも10月4日から公開される『ハヌ・マン』(2024)も人気を博すなど、今もファンの多いハヌマーンをモチーフとしているが、決してヒーロー映画ではない。
パテルいわく、『アジョシ』や『ザ・レイド』といったアジアン・アクションとインド映画を混ぜ合わせた。またはシャー・ルク・カーンのアクション映画にバイオレンス味を加えたようなものとも言っているのだが、最近のインド映画はあまり観ていないようで、インドエンタメに対する認識が一周、二周遅れなのは気になるところではあったりもする。
今作のなかで扱っていることは、政治と警察の癒着、貧困、ドラック、人身売買、女性蔑視、トランスジェンンダーや同性愛者への差別など。そんなインドの負のイメージが渦巻く、架空のダークシティのなかで主人公が怒りの化身として覚醒していくわけだ。
インド系とはいってもインドで活躍しているわけではないからこその、外側から観た俯瞰的なインドのイメージ、悪く言えば偏見が詰められていたりもする。それはそれで主人公の、復讐に対しての一方通行な視点と共通する部分を強くしているようだ。社会派な作品として観るには散らかり過ぎているが、バイオレンス・アクションとしてはかえって良かったのかもしれない。
ちなみに作品の公式PRとして“復讐の化身”とあるが、それは少し疑問に感じる部分がある。モンキーマン自身は復讐心かもしれないが、背負っているものは、虐げられた人々の怒りであるし、モンキーマンを立ち上がらせているのは、”復讐”というよりも”怒り”そのもの(とくに後半においては)であるため、”怒りの化身”とした方がしっくりくるのではないだろうか。独りよがりな復讐心では勝てず、怒りを身にまとって復活しているのだから……。
- 1/2
- 次へ
外部リンクエンタメNEXT
関連情報(BiZ PAGE+)