APAMANは今回のMBOで賃貸管理事業の大半を投資ファンドに手渡し、フランチャイズ加盟店のサポート業務やクラウドシステムの提供などを行うTechnology事業を引き続き運営することになります。

 Technology事業の業績は堅調。2024年9月期第3四半期の売上高は前年同期間比1.8%増の59億円、営業利益は同37.3%減の2億円でした。DX化推進による減価償却費が嵩んで減益となっているものの、売上高は堅調。2023年9月期の同事業の売上高も前期比1.7%の増加でした。今後のAPAMANは「アパマンショップ」のフランチャイズを主軸とし、DX化支援で企業価値の向上を図ります。事業の選択と集中を行うのです。

◆賃貸管理業界の大再編が起こるか?

 気になるのは日本産業推進機構が、管理戸数減少が著しい賃貸管理事業を承継した後の展開でしょう。

 投資ファンドが得意とする手法にロールアップ戦略があります。同じ事業を営む会社を次々と買収して規模を拡大。市場シェアを高める手法です。

 日本賃貸住宅新聞(「2023年管理戸数ランキング1位〜50位」)によると、APAMANは17位。賃貸物件を管理している中小の会社を買収してランキング上位に食い込み、企業価値向上を図るのです。ランキングに掲載されているのは1085位まで。大東建託が120万を超えて圧倒的なシェアを握っているとはいえ、中小の賃貸管理会社は数多く存在し、ロールアップをする余地のある業界だと言えるでしょう。

 ロールアップは豊富な資金力と買収対象となった会社のオーナーを説得させる高度な交渉力、提案力が求められます。事業会社が簡単にできるものではありません。

 APAMANの非上場化は子会社の再編を含むダイナミックなものでしたが、その後も賃貸管理業界再編の兆しも持っていると言えます。

<TEXT/不破聡>

【不破聡】
フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界