どこまでを維持費に計上するかにもよりますが、駐車場代までを含んだならば、都内の2万円程度の月極駐車場を借りた場合、4年程度で100万円を消費してしまいます。

 ただ、駐車場代はどんなクルマに乗ってもかかる部分ですので、『クルマに乗る』限り、絶対にかかってしまう経費だといえます。それと同様に、ガソリン代や車両保険代、車検に必要な費用も「必要経費」だといえるでしょう。

 NSXの場合、スーパーカー的キャラクターでありながら、排気量が3.0L(AT車)のため、税金は驚くほど高いというわけでもありません。そのため、自動車税も通常のクルマとさほど変わらないため、そこまでを「必要経費」として良いと思います。

 そうなると、残るは整備代。つまり、約19年、19万キロという所有期間の中でNSXに対する整備代が100万円かかるか否か。それが、「金銭的に“得”となるか否か」の分かれ目だといえるのです。

◆20万キロ程度の維持費は100万円で済むか?

 NSXはスーパーカーといったキャラクターながら、特殊な機構が使われているわけではないといえます。もちろん、ボディはフルアルミのスペシャル仕様ですが、それは消耗品ではありません。

 例えば、メルセデス・ベンツの場合、AMGの7ATは特別な仕立てとなっており、通常の整備工場には部品が出ず、安価なオーバーホールができないという難点があります。ですから、そういった車両の場合、なにかあったら「1発で100万円の整備代」という可能性があるわけですが、NSXの場合、そうなる確率は低いといえます。

 ただ、20万キロ近くも乗るとなると、ショックアブソーバーといった足回り部品などを替える必要があるでしょうし、タイミングベルトだって2回交換する必要があります。そういった各パーツをきちんと交換した場合、100万円という予算では「ギリギリ」となるかもしれません。

 また、NSXの場合、エアコンパネルがよく壊れ、温度調節が効かなくなるのですが、その部分の修理代はそれなり高値だった記憶があります。

 整備するポイントや部品代は、通常の国産車とそこまで大きく変わらないといえるNSXでありますが、19年19万キロ分の必要整備、及びウィークポイントのちょっとした修理をしたならば、値上がりした分の100万円を使い切ってしまう可能性があるといえます。

投資としてクルマを捉えた場合

 1年1万キロ使う前提では、走行距離が増え価値が下がると同時に、整備代もかさみます。ならば、「乗らなかった」らどうなるのか。ここからは、乗らずに保管しておいた想定をしたいと思います。

 走行距離6万キロ、修復歴なしという条件のNSXは、現在、買取価格で700万円以上という金額を余裕に狙えるといえます。私が19年前に330万円で買っていますから、仮に買取額を700万円とした場合でも「370万円ほど高く売れる」ということになります。

 ただ、乗らずに保管するという場合では、保管場所の費用を考えなくてはなりません。私が調べたところ、四方が壁に囲まれているという好条件の車庫でも探せば月2万円で借りられる物件があります。

 そうなると、約19年に渡って乗らないNSXのための駐車場を借りた場合、370万円という値上がり額を下回るのでしょうか。

 2万円の駐車場を228ヶ月借りたときの金額を計算すると456万円となります。同じ条件のNSXの上昇額は、19年で370万円と高額ですが、月2万円の駐車場に保管していた場合86万円の赤字となります。

 この場合の計算だと、「乗って楽しんだほうが“精神的には遥かに得”」となるかと思います。

 もちろん、家に保管場所があるという方は、駐車場代はかからないでしょう。ただ、それでも「乗らずに保管しておく」ということには、違うマイナス面があります。