けれど、先生もわたしの不調は見ていたので「先生、ご飯がおいしくなったんです!」と伝えると「それは本当によかったね」と喜んでくれました。

◆美容室へ行き、ウィッグを卒業。お話会を自主開催

 少し元気になり、髪も伸びてウィッグからも卒業しました。伸びた髪を美容室でカットし、人生初のベリーショートに。久しぶりにウィッグなしで外に出て、頭も気分もスッキリ。毎日のウィッグで慣れてはいましたが、やはり締め付けや暑苦しさから解放されると全然気分が違います。わたしの場合はもともとの毛量が多く太かったのでぐんぐん髪が生えてきて、抗がん剤終了後、半年くらいでウィッグを卒業できました。

 髪の毛だけでなく、眉毛やまつ毛も知らず知らぬに抜け落ちていたのが、少しずつ戻ってきました。腕や足の毛も抜けていたのでなんだかヌルヌルしていたのですが、気づけば元通りの体毛も生え、顔の血色も良くなってきました。

 このころ、自分が経験したあれこれを新鮮なうちに誰かに伝えようと思い「乳がんお話会」を自主開催しました。お話会に来てくれた方は健康に意識の高い方や、女性の生徒さんが多い教室主宰の方。知り合いや生徒さんにも乳がんの話を伝えてくださるとのことで、わたしの経験が少しでも誰かの役に立てばと思っていたので、わたしの話を聞きに集まってくれたことは大きな喜びでもありました。

 この連載に書いたような、病気に直接関係ないプライベートなことには触れませんでしたが、乳がんを見つけた経緯、病院を選んだ基準、乳がんの種類や手術の方法、術後の肌着事情。また、抗がん剤の副作用や抗がん剤を打ちながらの生活、ウィッグについてなども伝えました。

 また、病院で知り合った方の中では健康診断で見つかった方も多かったので、がん検診は確実に受けたほうが良いともお伝えしました。乳がんは特に「比較的見つけやすいがん」だと思います。見つかりにくい内臓のがんなどは、早く見つけたくても見つからないものが多い中、乳がんは触診やエコー、マンモグラフィなどで見つけやすい。そして早期発見であればあるほど、治療も軽く済む傾向にあると思います。

 わたしは脇のリンパに転移が見つかったので抗がん剤も勧められましたが、もっと軽ければ部分切除で抗がん剤なし、というパターンの治療の方もいます。もちろん個人差やがんのタイプによっても違いますが、やはり早期発見は大事だなと感じました。

 わたしがあまり病気を隠さずオープンだったので、相談を受けたりもしました。「友人にがんが見つかったのだけれど、どう接したらいいか」「なにがしてあげられるか」などをがん経験者の視点から聞きたいという方はけっこう多く、その方たちには私が持つ情報や体験談を余すところなくお伝えしました。

◆乳がんの体験をブログでも発信するように

 自分の病気をあまり大っぴらにしたくない人は多いと思います。マイナスな情報で、かつプライベートな話なので当然です。ですがわたしは、自分が病気になった時に、いろんな人の体験談が聞きたかった。だからこうして包み隠さずわたしの体験を伝えようと思ったのです。

 お話会が好評だったこともあり、もっと多くの人に伝えたいと思い、当時書いていたブログにも治療のことを書いて、SNSでも拡散しました。治療が終わり、徐々に普段の生活を取り戻し始めたとき「わたしがするべきことはこれだ」という想いがあったのです。

 抗がん剤を打ちながらフラメンコの発表会に出たことを記事にすると、ある日、1通のメールが届きました。その方は同じく乳がんを患い、抗がん剤治療をやることになった際にわたしのブログを見つけてくれたのです。そして私の記事を読んで、抗がん剤治療をしながら、習っていたフラメンコを再開しようか迷っている、という話でした。