黒沢あすかとしての仕事が来たときは、脱ぎになろうが人を殺そうが、「どんどんやってきて」と。だからちゃんとバランスよく生きさせてもらっているなと。そういう20年でした。

――私生活では更年期が大変だったと、以前女子SPA!でもインタビューでお答えになっていましたが、パッと解消されたそうですね。

黒沢:仕事でも人生でも新しい道を切り開こうと考え始めてからは、自分が何気なく観ていたテレビ、何気なくスクロールしていたスマホのSNS、いろいろなところから「あ!」と思えるヒントなり、答えに巡り合えるんですよね。そうすると、それをやってみよう、試してみようという方向に導かれていくことは、多々ありましたね。

◆生きることには“はてな”が大事

――ヒントや正解が転がっていることに気付けなかったわけですね。

黒沢:きっとそうだと思うんです。向こうのほうからやってくる感じですかね。「ほら、こんなのもあるよ」みたいな。自然と自分の前に出てくるんです。もちろんそこに至るまで答えを知りたい、知りたいとさんざんあがいてるのですが、次の段階では向こうからやって来る。切り開いていくと、こういうことになるのかなと。

――待ってるだけではダメなんですね。自分から探しにいくことが何より大切だと。

黒沢:なので常に生きることには“はてな”が、なんだろうと疑問に思うことが大事なんだなと。自分の内側だけでなく、外側に興味を持つということが大事ですね。単に年齢を重ねていくと、まわりはどうでもよくなって、自分の内側に籠りやすいなと感じます。世の中は動いてるのに、わたしはこれが好きだだからいいやとなりがちだけれど、外のいろいろなことに興味を持って、飛び込んで行く必要はありますよね。特にこの世界にいるのではあれば、なおさら必要だなと思います。

◆子育ても終わりにさしかかり、仕事に集中できるように

――いろいろな意味で節目を感じる現在を経て、この先、どのように過ごしたいと考えていますか。

黒沢:梅沢はこの作品を特殊メイクの仕事の合間に作っていたので、できあがるまでに2年かかっています。今、新しい台本を書いていると言っていますが、あの人はどういうタイミングでわたしのところへ持って来てくれるのかなという気持ちでいます。ただ、それにわたしが入っているのかどうか、実は特に意識していません。梅沢の作品作りに関しては、彼がこの先も作り続けるのであれば、どのような形でも応援したいと思っています。

――母としてはいかがでしょうか。

黒沢:息子が3人いまして、一番下の三男は高校2年生ですが、手のかからない子なんですね。ですから自分の仕事に集中できていますし、若い頃のようなセリフ覚えもよみがえってきています。ただ、お声がかからなければ現場には行けないわけですから、若い頃のように「仕事来い来い!」ではなく(笑)、自分の人生をしっかり生きることによって、お仕事の話を手繰り寄せられるのではないと、今は思います。

――なるほど、俳優と母親と分けて考えるのではなく、毎日をきちんと生きるということ。

黒沢:そうですね。日々をちゃんと生きていくといことが大事かと思います。ただ、ひとつ欲を言わせていただくとすれば、「大河ドラマに出たい」という子どもの頃からの夢があるので、何年かかっててもいいから呼ばれたいですね。

あとは老婆を演じてみたいです。お母さん役や中年の女性役には挑戦したので、後は何ができるかというと老婆役があるんです。もしくは、この世の生きものでもないものに取り組めたら面白いなと思っています。

◆柄本明からの助言に「50を過ぎて難しいと感じるように」