「その場で何も言えなかった息子は、すぐに帰宅。真っ青な顔して何か言おうとしてきました。母さんが……、の時点でおおよそ見当はつきました。急に雰囲気が変わるのは男女問わず色恋絡み。行き先不明の外出も増えていましたし。まさか、本当に息子の同級生相手とは思いませんでしたけど」

◆「息子を傷つけたのが許せない」

 Sさんは冷静に妻と話し合った。パーティの時に携帯番号を聞かれたこと、ショートメールで数回やりとりし、今は週2程度で逢瀬を重ねていること。わずかだが金銭的援助をしているのもわかった。

「私に対しての裏切りは責めませんでした。自分も同類ですから。ただ、優しく真面目な息子を傷つけたのが許せない。妻もバレたのが相当ショックらしく、なんでも受け入れると消沈していました」

 息子はAくんに詰問メールを送った。遊び半分でちょっかいを出した、深い感情はない、との返信以降、沈黙……。どうやら着信拒否されたようだと。

「息子はしばらく混乱していたようです。今も母親を完全無視。子煩悩でとても優しいお母さんでしたから、受け入れ難いのでしょうね」

◆「Aくんからは取れるだけ取る」

 Sさんとしては浮気程度で揉めるつもりはなかったのだが、相手が相手。現在は離婚に向け、諸々調整中だそう。

「彼女からは大して取れませんが、Aくんからは取れるだけ取るつもりです。もう妻は無抵抗なのでさほど手間はかからなそうですが、問題は後者。どうやら周囲の友人たちに、『寝取ってやった』と喧伝しているようで、息子ともども、こちらのメンツは丸潰れ。微塵も反省していないようですから、ちょっと懲らしめてやるつもりです」

 冷静に語るSさんだったが、その目の奥には強い怒りの炎が燃え盛っていた。<取材・文/金井幸男>

【金井幸男】
編集プロダクション勤務を経て、2002年にフリーランスとして独立。GETON!(学習研究社)、ストリートJACK(KK ベストセラーズ)、スマート(宝島社)、411、GOOUT、THE DAY(すべて三栄書房)など、ファッション誌を中心に活動する。また、紙媒体だけでなくOCEANSウェブやDiyer(s)をはじめとするWEBマガジンも担当。その他、ペットや美容、グルメ、スポーツ、カルチャーといった多ジャンルに携わり、メディア問わず寄稿している。