─ コンビニ以外の販路は他になにがありますか。

 橋本 ドラッグストアやスーパー、あとスポーツジムなどにも拡大しています。

 ─ スポーツジムはまさに健康面で関連性が高いですね。

 橋本 はい。健康になるために来ている方々で、特に当社の商品はタンパク質が多いので、顧客との親和性が高いですね。基本的には一汁三菜の食事と同じ食材を使った、栄養バランスがいいパンや麺やクッキーを作っていますので、体づくりで食事管理として多くの人に食べていただいています。


食品企業のAppleやテスラを目指す

 ─ 商品はパンやパスタ、クッキーがありますが、これからどんどん増やしていく予定ですか。

 橋本 そうですね。でも大事なことは増やすことではないんです。わたしたちはAppleやテスラのようなテック企業を目指しているので、商品ラインナップを絞って、どんどん磨いていくという考え方です。iPhone5、6…と良くしていくイメージです。

 パン業界は期間限定商品などを出してどんどん商品を変えていく業界なのですが、当社は逆の方向性です。ガラケーからスマートフォンに変わった時、例えば重たい、電池の持ちが悪いなど、いろいろ課題があったんです。iPhoneはバリエーションを広げるのではなく、そこを改善し続けたんです。

 そうした結果、いつの間にかみんなスマートフォンに乗り換えていった訳です。われわれも同じです。炭水化物中心のパンと、栄養バランスのいいパンを比べたときに、栄養があっても少し固いとかそういった課題があるわけで、それを改善していって、いつの間にかみんな栄養バランスがいいパンを食べているという風になっていく。それが当社の基本的なやり方ですね。

 ─ 徹底的に質の追求だと。

 橋本 はい。ですから弊社は商品開発チームや新技術を研究するチームに、結構な人数を割いています。

 例えば、パンの発酵はある種職人芸でやっていたところを、タンパク質の多いパンが固くならないためのタンパク質化学や、その微生物をしっかり理解する。微生物工学出身の人がそのパンの発酵をサイエンスベースで理解して、制御していくとか。そうした今までのパン業界でできなかったようなサイエンスを使って、今までのパンとは違うパンを美味しくしていくということをやっています。

 投資家の方々はそういったフードテックというテクノロジーを使っている点にすごく可能性を感じてくれています。

 ─ 食品関係でこういう会社は初めてですよね。

 橋本 そうですね。ベンチマークしているのは、同じスタートアップでコロナワクチンのモデルナ。テスラやスペースXなどの会社もやはり研究者やエンジニアの割合がかなり高いんです。

 ですが、日本の食品会社だとそれが数%になってくるので、そことは一線を画したいと思っています。大手食品会社さんと協力することも多いのですが、われわれはそういう尖った研究をするところが強みです。

 ─ 若い企業のモデルケースになっていくといいですね。

 橋本 そうなんです。製造委託をお願いする大手企業がスタートアップ企業と触れることで、その会社にわれわれがやっている新しい技術が入っていったりもしますし、日本企業全体の新陳代謝も上がる。

 例えばアメリカの宇宙産業や自動車産業の中心にはテスラとスペースXがあります。そういったところはある種クレイジーな部分もありますが進んでいる部分もあるので、混ざることで業界自体が前に進んでいく。