[画像] 発売までに22年を要したゲームボーイアドバンス向けソフト「Kien」とは?



カナダのゲームパブリッシャーのIncube8 Gamesが、ゲームボーイアドバンス用ソフト「Kien」をリリースしました。発売までに「22年」を要したというのは、「史上最も発売までに時間がかかったゲームソフト」の過去の記録を大きく塗り替えるものです

Kien, the most-delayed video game in history, released after 22 years | Games | The Guardian

https://www.theguardian.com/games/article/2024/jul/04/kein-the-most-delayed-video-game-in-history-released-after-22-years



2002年にイタリアのゲームデベロッパー「P.M.Studios」によって開発が開始されたKienは、2人の主人公を使って、混沌(こんとん)と化した惑星マルクトで悪と戦うアクションRPGです。以下はKienの紹介ムービーです。

Kien - Official Game Boy Advance Trailer #2 (2024) - YouTube

しかし、開発コストなどの問題から複数のパブリッシャーが販売の中止をP.M.Studiosに対して通告。本作は完成を迎えていたものの、長らく日の目を見ることがありませんでした。P.M.StudiosでCEOを務めていたファビオ・ベルサンティ氏は「Kienをリリースしても、商業的に成功する可能性は低く、販売には気が遠くなるようなハードルがありました」と述べています。

その後、当初5人が在籍していたP.M.Studiosのメンバーは次々と脱退。残されたのはベルサンティ氏ただ1人となりました。



それでもKienの販売に希望を持ち続けたベルサンティ氏は、ゲームスタジオのAgeOfGamesを設立し、教育ゲームなどを開発。これまでにイタリアの非営利団体INAIL向けのゲームプラットフォーム「ScacciaRischi」などをリリースしています。

近年では、レトロゲーム市場が活況を迎え、古いハードウェアや貴重なソフトなどにユーザーからの大きな関心が向けられています。ベルサンティ氏は「レトロゲーム市場は、音楽用のレコードやカセットテープの人気が再燃したのと似た段階に居ると思います。その時代を生きたユーザーの懐古主義と、新しいユーザーの好奇心がその要因です」と語っています。



ベルサンティ氏は、クラシックコンソール向けのゲームパブリッシャーであるIncube8 Gamesのザック・マーフィーCEOにKienのプロトタイプを送付しました。このことをきっかけにKienの販売プロジェクトが再始動。

レトロゲーム市場の人気に呼応するように、近年ではゲームボーイアドバンス向けカートリッジの製造コストが以前よりも低くなるなど、さまざまな追い風が吹いた結果、AgeOfGamesはIncube8 Gamesとタッグを組み、ようやくKienの発売にこぎつけることができたというわけです。

Kienが発売されるまでに要した期間は22年で、これまで「Duke Nukem Forever」が持っていた「史上最も発売までに時間を要したビデオゲーム」の記録を15年から大きく更新することになりました。



ベルサンティ氏は「Kienが当初の目的通りゲームボーイアドバンスで命を吹き込まれるのを見るのは、夢が叶ったようです」と述べています。さらにベルサンティ氏はKienの精神的続編となる「Kien: Astral Equilibrium」を開発中であることを明かしており、「限られたグラフィックや技術リソースで作られた古いゲームでも、人々に与えるビデオゲーム体験の力は非常に強力になる可能性があります」との展望を語っています。

なお、KienはIncube8 Gamesの公式サイトで購入可能で、価格は59.99ドル(約9600円)です。

Kien (GBA) - Incube8 Games

https://incube8games.com/products/kien-gba