日本に来る旅行者の多くは「日本はゴミがなく清潔だ」と言いますね。確かに筆者も、海外で「日本より清潔だな」と思った街はシンガポールくらいしかありません。
しかし、20代の頃から日本とアメリカを行ったり来たりしながら計8年は日本で生活してきたベス・メイヤー・ヤマムロさん(63歳・女性)は、「『住んでみると意外とそうでもない……』と思ってる外国人は少なくありません」と話します。
「企業の広告に洗脳されてるのかもしれませんが、私たちは掃除をするときに化学物質を使わないと綺麗になった気がしません。以前、とある会社で湯のみをお水ですすぐだけで済ませているのを見て、衝撃を受けました」
◆「お風呂の残り湯を洗濯に使うなんて…」
コロナ禍を経て、最近はさすがに洗剤で洗っていると思いますが、茶道のお茶碗は決して洗剤を使わないし、回し飲みする作法なので、もともと意識が薄いのかもしれないですね。
一方で私たち日本人からすると、欧米の人たちが食器の洗剤をほとんど洗い流さないことのほうが衝撃だったりします。少し前にSNSで、ドイツ人宅で泡のついたままの食器を乾かしている動画が「信じられん」とバズっていました。
ベスさんはお風呂の残り湯の使い道にも驚いたとか。
「お風呂の残り湯を洗濯に使って、洗濯物は綺麗になるの? お風呂はデトックスのために入るのでしょう? いろんなものが出たお湯で洗濯するなんて……」
筆者は神経質なので残り湯は洗濯には使わないし、追い焚きもしませんが、残り湯を使う習慣は現在もありますよね。筆者の洗濯機には、すすぎの際に残り湯を使わないよう注意書きがあったので、最終的には綺麗になっているような気もします。
◆道路にツバをはくお年寄りが
「お年寄りがペッペと道路にツバを吐くのにも驚き」という声もよく上がるそうです。確かに90年代ごろまで、ツバを吐く人はすごく多かったです。下を見ずに歩いていると、痰やらツバやらを踏んでズルッと滑るなんてことがありました。
今となってはあんなにたくさんツバを吐く人がいたのに衝撃ですが、昭和23年から軽犯罪法第1条26号で禁止されています。
喫煙者が減ったからか、街から痰壺がなくなったからか(昔は、痰を吐くための壺が特急電車や駅のホームなどに設置されていたのです……!)、いつの間にか痰を吐く人はいなくなりました。いまだに昭和を引きずって痰を吐く高齢者がいたら、法律違反だとやんわり教えてあげたいですね。
◆ゴミの捨て方に大混乱
またベスさんは、「ゴミ捨てが大変」とも言っています。
「まず外に遊びに行くとき、みんな自分のゴミを持ち帰っているのに驚きました」
これは別の国の人にも言われたことがあります。日本人は子どもの頃から「ポイ捨て禁止」と学校で習っていたり、ポスターを書いたり見たりして育った人は多いですよね。
アメリカでは、昔の日本と同じようにゴミ箱が屋外にありましたし、なければそのへんに捨てちゃう人も多いのです。街にゴミはないけれど、家庭ゴミは大量に出ているのが日本。しかも、ゴミの捨て方が複雑だという声が上がっています。
「何が可燃なのか不燃なのかは自治体によっても異なるし、ペットボトルを分別するときはキャップやシールを剥がさなければいけないし、覚えるのが一苦労です」
株式会社YOLO JAPANのアンケート調査(2019年)によると、「知らなくて困ったルールやマナー」のうちもっとも多かったのが「ゴミの捨て方」で41%でした。続いて「ビジネスマナー」39%となっています。
◆家庭ゴミが多い理由も指摘
ベスさんはこうも指摘します。
「スーパーに売っている果物も、野菜も、たいていビニール袋や箱に入っています。分別も大変だし、もっと簡易な包装にすればゴミが減るのに」
確かに、筆者は海外に行くたびに、モリモリに積み上げられた野菜や果物に驚くのですが、日本ではこういう売り方をしないからなんですね。ひとつ料理をするたびにけっこうな袋ゴミが出るので、これはなんとかして欲しい。
近所のスーパーには、鶏肉をトレーなしのビニールパッケージで売っていて、すごくいいなと思っています。トレーをスーパーに返しに行くのもけっこう面倒なんですよね……。
再利用が難しいゴミを処分するために、ゴミが集められる日本の「ゴミ埋立地」は、約20年で容量オーバーになるとも言われていて、ゴミの排出量の多さは問題です。
日本はゴミ焼却施設が多く、世界の約半数が日本にあるのだそう。また日本の一般ゴミの処理事業経費には年間で2兆円以上かかっているとか。大量のゴミを焼却することで温暖化は加速するし、実は大変な問題なのです。海外の視点を取り入れて、いいところはマネをして、問題解決できるといいですね。
<取材・文/和久井香菜子>
【和久井香菜子】
ライター・編集、少女マンガ研究家。『少女マンガで読み解く 乙女心のツボ』(カンゼン)が好評発売中。英語テキストやテニス雑誌、ビジネス本まで幅広いジャンルで書き散らす。視覚障害者によるテープ起こし事業「合同会社ブラインドライターズ」代表
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