[画像] 【山中 伸弥】【谷川 浩司】寿命の限界は120歳⁉...老化の研究から判明した「不老不死」実現の「残酷すぎる」真実

人生100年時代。平均寿命が上がり続けている現代の日本では、そう遠くない未来に100歳まで生きることも当たり前になっているだろう。そんな時代にいつまで現役を続けられるのか?どんな老後の過ごし方が幸せなのか?医療はどこまで発展しているのか?

ノーベル賞学者と永世名人。1962年生まれの同い年の二人が、60代からの生き方や「死」について縦横に語り合った『還暦から始まる』(山中伸弥・谷川浩司著)より抜粋して、「老化研究の最先端」をお届けする。

『還暦から始まる』連載第9回

『「60歳の細胞をゼロ歳に戻す」...「山中因子」を使った「若返り」研究の最先端に迫る!』より続く

寿命は120歳が限界?

谷川そもそも30歳の細胞が60歳の細胞になると、細胞の状態はどういうふうに変わるんでしょうか。

山中そこはとても大事なところなんですが、「老化」というのは単純に一つの現象ではなくて、細胞の中でいろいろなことが起こっているわけです。お話ししたように、皮膚や毛髪や血液はどんどん生まれ変わっていますから、一年前の皮膚や血液の細胞は残っていません。これに対して神経や心臓は基本的に生まれたときの細胞がそのままずっと残っているので、残っている神経の細胞に有害物質が溜まってくると、いろいろな病気になります。アルツハイマー病もそうです。

そうした有害物質が溜まるのも老化の一つですし、細胞が分裂する速度もだんだん遅くなっていきます。皮膚や血液がどんどん生まれ変わるのは、失われた細胞を再び生み出して補充する能力を持った幹細胞があるからですけれども、加齢とともに幹細胞も減少します。

血液の幹細胞は生まれたときは十万個ぐらいあると言われています。歳を取るとともに減っていって、100歳ぐらいの人で血液の幹細胞が何個残っているかを調べたところ、一個しかなかったという研究報告があります。幹細胞というのはすごいですね。僕たちもびっくりしたんですけれど、その一個もなくなると終わりです。

谷川血液ができなくなるわけですからね。

「不老不死」はなぜ実現不可能なのか

山中ええ。100歳で残り一個だから、120歳になったら間違いなくゼロになってしまいます。仮に全身にがんができず、事故にも遭わず、タバコも吸わず、体に悪い物を食べず……といくら気をつけても、おそらく120歳ぐらいが寿命の限界ということです。

ただ、血液の幹細胞の場合は、外から幹細胞を移植することができます。それをすると、120歳は乗り越えられるかもしれません。けれども脳はそういうわけにはいきません。脳は先ほどもお話しした通り、移植してしまうと、もはや本人かどうかわからなくなってしまいますから。

谷川幹細胞の限界が寿命の限界になるわけですね。

山中たとえば奄美大島とか徳之島とか地域によっては、80代で亡くなると「ずいぶん若くして亡くなりましたね」という地域もありますね。

谷川長寿の方が多いですね。

山中でも、そういう島でさえ、やっぱり130歳、140歳の方はいないので、寿命の限界は120歳辺りではないでしょうか。

谷川120歳というと、いまの私たちのほぼ倍ですね。私たちはまだ折り返し点にいるということになります。でもこれが不老不死となると、必ずしも幸せだとは言えない、逆にすごく不幸かもしれませんね。

山中不老不死は不幸だと思います。死ねないんですよ。それに不老不死はタイムマシンと同じような議論で、基本的には無理と考えるのが順当だと思いますね。

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