[画像] 蓮舫「2位もダメで3位転落の危機」都知事選…石丸猛追「国政の代理戦争など馬鹿げたマネは是非やめてもらいたい」

 7月7日投開票の東京都知事選は、政党やマスメディアによる情勢調査で現職の小池百合子都知事のリードが伝えられている。高い知名度に加え、2期8年の実績を掲げる小池氏の優位は予想通りとの声が多いのだが、各種調査が関係者に衝撃を与えたのは「2位」の方にある。立憲民主党と共産党が全面支援する前参院議員の蓮舫氏は序盤調査から失速し、それを「3位」だった前広島県安芸高田市市長の石丸伸二氏が猛追する勢いを見せているというのだ。驚きの情勢調査を経済アナリストの佐藤健太氏が読み解く。

蓮舫の「都知事選でも与野党対決の構図に持っていく戦略」

 小池氏への対抗心をむき出しにしてきた蓮舫陣営にとっては予想外の展開と言えるだろう。メディア関係者からは「2位もダメなんですか?」と驚きの声が漏れている。

 4月の衆院東京15区補選で起きた政治団体「つばさの党」代表らによる選挙妨害事件、都知事選のポスター掲示板問題、フリージャーナリストやYouTuberを名乗る人物の執拗な「突撃」など、最近の都内の選挙は予想外の展開がみられてきた。ただ、序盤から中盤にかけての都知事選情勢は「これまでの常識を覆す意外な展開」(民放テレビ局記者)になっている。

 5月27日に出馬表明した蓮舫氏は「反自民・非小池」を掲げ、「小池都政をリセットする」と掲げた。派閥の政治資金パーティーをめぐる裏金問題で逆風を受ける自民党への批判を絡め、与野党対決の構図に持っていく戦略を描いてきた。

伸びる小池、猛追する石丸

 入手した自民党の情勢調査によれば、6月1~2日の調査で小池氏は43.1%の支持を獲得。蓮舫氏は33.0%で、3位は石丸氏の8.1%となっている。小池氏と蓮舫氏の差は10.1ポイント、蓮舫氏と石丸氏の差は24.9ポイントだ。

 2回目の調査(6月8~9日)は小池氏が40.3%、蓮舫氏が34.6%、石丸氏は9.7%。1位と2位の差は5.7ポイントに縮まった一方で、2位と3位の差は24.9ポイントと同じだった。ただ、3回目の調査(6月15~16日)で“異変”が生じている。小池氏は43.6%と支持を伸ばしたが、蓮舫氏は32.1%と下落。その差は11.5ポイントにまで拡大している。石丸氏も8.3%に下降しているのだが、蓮舫氏との差は23.8ポイントに縮小した。

 小池氏の支持が伸びた理由としては、6月12日の都議会定例会最終日に都知事選への立候補を表明し、メディアの露出が高まったことがあげられる。

無党派層では蓮舫上回る石丸

 蓮舫氏は6月初めから立憲民主党の議員らと街頭演説を行うなど報道で取り上げられることが多かったが、マスコミが“本命”と見る小池氏の登場によって露出が減少。2人の実績の違いや政策などが比較されるようになった。

 朝日新聞は6月22、23日に実施した調査結果を見ると、「小池氏が先行し、蓮舫氏が追う展開」と報じられている。小池氏は「無党派層の4割強」の支持を受け、女性や30代の支持が厚めであるという。蓮舫氏は立憲民主支持層の7割、共産支持層の大半をまとめたものの、無党派層からの支持は「2割弱」にとどまっている。朝日新聞は石丸氏については「苦しい」と表現しているが、無党派層から「2割」の支持を得て蓮舫氏を上回っているとした。

 日経新聞の序盤情勢調査(6月21~23日)でも、「小池氏が先行、蓮舫氏と石丸氏が追う展開」となっている。小池氏は日本維新の会の4割、国民民主党の3割の支持層にも浸透し、「無党派層は小池氏が3割、石丸氏が2割を押さえている。蓮舫氏は1割の支持にとどまる」と報じている。

石丸「『国政の代理戦争』などと馬鹿げたマネは是非やめてもらいたい」

 また、JNNが6月22日に実施した調査では「小池氏が大きくリード」し、蓮舫氏と石丸氏が追う展開となっているという。政党やマスコミの情勢調査は「序盤」のものであり、まだ投票先を決めていない人も少なくない。ただ、各種調査から読み取れるのは小池氏も蓮舫氏もそれぞれの支持層を固め、その変化はほとんど見られていないことだ。

 一方で、「3位」と報じられて追う展開の石丸氏は主要政党の全面支援を受けず、SNSを通じた選挙戦略で支持を伸ばしてきた。街頭演説は多い日で1日10カ所以上も行うスタイルなのだが、小池氏への対抗心を燃やす蓮舫氏が「与野党対決の構図」に持ち込もうとする中、石丸氏は「『国政の代理戦争』などと馬鹿げたマネは是非やめてもらいたい。都民にとって、自治体において迷惑千万な話」(6月19日に開かれた日本記者クラブの討論会)と批判。安芸高田市長としての実績や経済アナリストとしての知見などを訴える。

小池都政を「評価しない都民」の奪い合い

 蓮舫氏と石丸氏は「小池都政を評価しない」層の支持を分けているのだが、その戦略は大きく違う。蓮舫氏が野党議員時代から変わらぬ「超攻撃的スタイル」で小池批判を繰り返すのに対し、石丸氏は是々非々の姿勢を見せているのだ。

 朝日新聞DIGITALが6月23日に配信した世論調査によれば、小池氏の8年間の実績を「評価する」は69%に達し、「評価しない」は3割だった。立憲民主支持層でも6割が「評価する」と答えている。JNNの調査でも小池都政を「評価する」は約7割に上り、「評価しない」は約3割にとどまっている。さらに朝日新聞の調査では投票の際に自民党の裏金問題を重視するかとの質問には「重視しない」は48%で、「重視する」(45%)を上回った。

 この結果を見ると、蓮舫氏と石丸氏は「小池都政を評価しない」層を取り込みつつ、「評価する」層に切り込んでいく戦略が求められる。ただ、「評価しない」層は約3割しかなく、それを2人で分ける形では自ずと限界もあるだろう。残される選択肢は「評価する」層をいかに取り込むかというわけだ。

蓮舫、公約では具体的な数値目標を掲げず、具体性に乏しい

 その点において立憲民主党などには危機感もあるだろう。なぜならば、蓮舫氏は小池氏を批判する際に「7つのゼロはどうなったんでしょうか?」と繰り返してきた。8年前の前々回知事選(2016年)で小池氏が掲げた政策目標の達成状況を徹底批判しているのだが、これは小池氏が国会議員を辞めて都知事選に挑戦した時のものだ。しかし、その時と同じチャレンジャーであるはずの蓮舫氏は5月末の出馬表明から20日後に発表した公約では具体的な数値目標を掲げず、具体性に乏しいなどとメディアで批判されている。

 会見時間や公約発表などのタイミングを小池氏と重ねてきた蓮舫氏に対し、石丸氏は「政治家としてはまだ4年。しかし、世界に目を転じれば若い世界各国のリーダーが生まれている」などと独自路線を歩み、若年層を中心に支持が広がりを見せる。全国的な知名度がほとんどなかった石丸氏が「3位」となっているのは、歯に衣着せない言動をする一方で「他者の批判に集中しない」というスタイルも一定の支持を得ているとみられる。加えて、知名度があまりなかったからこそ新鮮味があると映っている点もあるのではないか。

ムトウは数の多い東京では何が起きるかわからない

 一部の調査では、石丸氏が蓮舫氏を追い上げて「僅差」になっているとも伝えられる。与野党対決の構図に持ち込むことを狙う蓮舫氏と、独自路線を突き進む石丸氏がどのような戦いを都知事選終盤にかけて行うのかも今回の見物だ。

 今回の都知事選には過去最多の56人が立候補し、すでに選挙ポスター掲示板をめぐる問題が勃発するなど波乱の幕開けとなっている。無党派層が多い東京においては、ちょっとしたことで得票数が大きく変わることが少なくない。七夕決戦に向けて誰が飛び出るのか。熱い、暑い戦いから目が離せない。