[画像] 6月16日は父の日 “ラップ”にのせて感謝を伝える畳屋の息子 家業を継ぐきっかけは「父の寛容さ」

6月16日は「父の日」。「父」のイメージと言えば……威厳、頑固、自分勝手――ややもすると「もう何年も父と話していない」といった父子も少なくないかもしれない。

そんな「父」に、「言いたいことがある」。そう啖呵を切ったメッセージが世に出された。親子が近すぎるほど近い距離で向き合ったビジュアルは、緊張感があるものだが、よく読むと「ラップで贈るぜ 感謝の言葉」とある。

実は、これは新聞広告で、登場するのは、福岡県朝倉市内の老舗畳店三代目・徳田幸生さんと、幸生さんの子で四代目・徳田直弘さんだ。直弘さんは、「徳田畳襖(たたみふすま)店」の跡継ぎにして、畳をテーマにしたラップを届ける、「畳屋ラッパー」としての顔も持つ。

直弘さんが四代目になる決意をし、広告のメッセージにある感謝を伝えるようになった背景には、老舗の家業でイメージされる「頑固親父」とは真逆の「寛容な父親」の姿があった。

「『好きなことをやっていい』愛情 だからすぐ継がなかった心情」
歌詞に込めた父への思い

広告にあるラップの歌詞は、直弘さんが作成したものだ。


聞けば、当初は畳店の仕事を継ぐ気持ちはまったくなく音楽に邁進していた。しかし、幾度ものオーディションやライブを経て感じる「越えられない壁」…。悩んで、もう辞めようかとボーカルスクールの先生に相談に行くと、かけられたのは思わぬ言葉だった。

「実家、畳屋なの? だったら1曲で良いから、畳の歌を作って、聞かせて!」

試しに「1曲だけのつもり」で作った畳の歌をライブハウスで披露すると、いままでにないほどの盛り上がりを感じたそう。

「畳の歌で、人を笑顔にすることができる」

独学で畳について勉強し、再び新曲を作ると…その反応も上々。調べれば調べるほど、畳の魅力を次々と発見していく。そのとき初めて「畳が好き」な自分に気づいた直弘さんは、畳職人をしつつ、音楽活動も継続できる「畳屋ラッパー」の道を歩むことに決めたのだ。そして決意の行動に出る。


「父をライブに呼びまして、そのあとに家業に入るという話をしました。ライブを見てもらうことに恥ずかしさもありましたけど、そこを通らないと先には行けないですからね」(直弘さん)

父・徳田幸生さんの反応は――。

「最初はよくわからなかったけれど、畳が好きだと思って入ってきてくれたのはうれしいことでした。仕事って、好きじゃないとおもしろくないですから。自分で好きな仕事として畳と音楽を選んで、どちらも一生懸命やっているから応援しています」(幸生さん)

そして自身の家業を承継した経緯についても明かしてくれた。

「実は、私も最初は家業を継ぐつもりはなかったんです。だから、いったん会社員になりました。だけど、畳がどうしても好きでしてね。それで、家業に入りました。こうしたこともあって、息子に継いでほしいとは言わなかった。好きなことをしてくれればと」


畳と音楽、それもラップ。傍から見れば、遠くかけ離れた組み合わせ。だが、それが新しい面白さを生み出す。大きなイベントに呼ばれる機会も多くなり、テレビなどに取り上げられることも増えた。それに呼応して畳店への問い合わせも増えている。いまのお店への注目が高まるのは父が息子のやりたいことを見守ってくれたからこそ、起きているとも言える。

徳田家の家訓である“人様に迷惑を掛けなければ、好きなことをやっていい”に従って生まれた今がある。

「家業の良さは、音楽をやってきたからこそ、気が付くことができました。やりたいことを好きにさせてくれた父にとても感謝しています。地域の中で家業を守り続けてきた父に感謝を伝えたいと思い、広告のラップを制作しました」(直弘さん)


「お父さんの存在バリ偉大 素直に伝えたい『ありがとう』」
複雑な関係の裏に隠れた関係だけではない家業親子の本音

家業を継ぐ——。中小企業、なかでも家族経営のいわゆる「家業」は、後継者不足が大きな課題になっている。徳田家のようにうまくいくこともあれば、後継者不在を理由に家業を閉じるケースも少なくない。もちろんその背景にある事情はさまざま。一律に語れることではない。ただ、大きな要因のひとつに、父と子がホンネで語り合う機会が少ないことにあるのではないか。

そうした考えのもと6月12日 に掲載されたのが、冒頭の「父に言いたいことがある」から始まる広告。企画したのは、中小企業向けの保険の展開とともに中小企業の経営者とその後継者を応援するエヌエヌ生命保険だ。


同社の遠藤哲輝広報部長は、「親子でホンネを話し合うきっかけになれば」と、広告の狙いを語る。

「調査をしてみると、家業経営者である父親は“子どもには好きなように生きてもらいたい”という方がほとんどでした。そして同時に、“継いでくれたらうれしい”という気持ちも持っている。一方で、子どもの方からすると、家業を継ぎたい人は少なくても、好きなようにやらせてもらっていることへの感謝は持っているんですよね。しかし、どちらもそれを言葉にできているかというと、そうではない。素直に言えていないんです」(遠藤さん)

親の立場からすれば、家業経営の苦労を子どもにも体験してもらいたいとは素直には思えない。また、子どもが家業に入ると、それまでの親子関係一本から、上司と部下、師匠と弟子のような関係性も加わることになる。それは、家族関係の変質に他ならない。ややもすれば、ますます言いたいことも言えなくなってしまうかも…。

「だから、まずは父の日に感謝の気持ちを思い切って伝えてみませんか、というのがテーマです。家業を営んでいる方々はもちろんですが、会社員の親子であっても、どんな親子でも。感謝の気持ちを伝えて、素直な気持ちを伝え合うことからはじめてみませんか、というのが今回のメッセージです」(遠藤さん)


意外と伝えられていない感謝の言葉をまず口に出す。それが、新しい親子関係の第一歩になるのかもしれない。6月16日は、父の日である。

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[PR企画:エヌエヌ生命保険 × ライブドアニュース]