5月11日、12日の卒業コンサート(東京ドーム)で乃木坂46に別れを告げた山下美月。2日間のライブは、セットリストも大きく変わり、山下のアイデアで笑いと涙にあふれた。そんなライブを、メンバーやファンの琴線に触れただろうシーンを主に振り返ってみたい。

【関連写真】アイドル人生ラスト、涙を浮かべる山下美月ほか【32点】

卒業コンサートといえば、メンバーの代表曲をメインに、終盤には別れを想像させる楽曲が続いて、しんみりとした雰囲気で終わることも多い。しかし、山下自らセットリストを組んだ2日間は、感傷にひたるよりもカラッとした晴れやかな気分で彼女を送り出したくなる構成だったかもしれない。

とりわけ、乃木坂46の通常のライブでもなかなか見られない“お祭り感”があったのは11日の中盤、『失恋お掃除人』に始まり、グループ内の軍団の楽曲が続いたところだ。仲がよかったり、趣味の合うメンバーで作られる“軍団”は1、2期生を中心に複数が生まれた。その曲たちとして、まず1曲目が「若様軍団」の『失恋お掃除人』。若月佑美を団長に、若月を慕う3期生の山下と梅澤美波、阪口珠美の4人によるユニットだ。若月から堀未央奈、山下と受け継がれてきた持ちネタ「箸くん」の芸もやり遂げた。

山下は引き続き、「さゆりんご軍団」の『白米様』と、「真夏さんリスペクト軍団」から『二度目のキスから』をメンバーとパフォーマンスする。それぞれ卒業した松村沙友理と秋元真夏を軍団長にしたユニットの曲で、山下本人はメンバーではない上にオリジナルの軍団員は全員卒業してしまっていたが、久々にライブで楽曲を披露した。

こういった軍団の活動は、5年ほど前までは盛んだったがメンバーの卒業で機会が減っていき、新しい軍団の結成も停滞気味。山下がまだ可愛い後輩だった頃の、コミカルな先輩たちの姿を連想させるシーンが続いた。

すると、ライブのその場で山下を軍団長とする「山下軍団」の結成も宣言。賀喜遥香、五百城茉央、川粼桜、一ノ瀬美空を軍団員に、『遥かなるブータン』を披露する。もとは生田絵梨花のセンター曲だが、曲中のオリエンタルなアイソレーションの振付が得意な山下が、生田から“ブータン選抜”というワードをもらっていた。その時の縁を忘れず、自分の卒業コンサートで披露してみせると、山下軍団の曲として『恋山病(こいざんびょう)』が始まる。

もちろん全く音源化もされていない、この日初めて公になる楽曲ながらしっかり山下が作詞し、「山」にかけたコミカルソングにしてみせた。こんな風に内輪ネタをしっかり昇華して楽しめるのも乃木坂の伝統だ。山下が卒業してからも、4人には軍団員としての絆が残るだろう。かつて若様軍団で後輩ポジションにいた山下が、今度は後輩に慕われる軍団長になってグループを盛り上げてくれているのも、長く乃木坂を応援してきたファンや、ファンとしてそれらを見てきた後輩メンバーにはたまらない。

2日目は卒業する山下から、乃木坂46への粋な恩返しのような瞬間が多く見られた。「月」にちなんだ楽曲として、『満月が消えた』『月の大きさ』『届かなくたって…』が続く。『届かなくたって…』は佐藤楓のアンダーセンター曲で、当時アンダーに参加した3期生全員と山下で踊り、佐藤と山下のダブルセンターで3期生ファンを感涙させる。

3期生の絆を感じさせる場面はこの後も梅澤との『ファンタスティック3色パン』、仲の良い伊藤理々杏との『1・2・3』の披露、久保史緒里・与田祐希・(卒業した)大園桃子との4人ユニット曲だった『言霊砲』での久保と与田から山下へのメッセージなど随所で見られる。加入から8年近くになっても、まだ9人が活動を続けるほど絆とグループへの思いが強い3期生だからこそ、MCも3期生曲も見逃せない瞬間が続いた。