30平米から25平米へ…ミドルシニア夫婦が、6畳1Kの家に引っ越しを決めた理由とは?(筆者撮影)

ロスジェネ世代で職歴ほぼなし。29歳で交通事故にあい、晩婚した夫はスキルス性胃がん(ステージ4)で闘病中。でも、私の人生はこんなにも楽しい。なぜなら、小さく暮らすコツを知っているから。

先が見えない時代でも、毎日を機嫌よく、好きなものにだけ囲まれたコンパクトライフを送る筆者の徒然日記。大好評の連載第11回です。

実はあと数カ月で夫が定年になります。老後を見据え、夫婦2人で6畳1Kの物件への引っ越しを決めました。はたから見ると狂気の沙汰ですが、私たち夫婦にとっては「ここで会ったが百年目!」という理想の物件で、即決しました。

今回のエッセイでは、どうして、あえて狭い家を選んだのか? 我が家流の家選びの条件をご紹介します。

狭い家からさらに狭い家にお引っ越し

現在我が家は、東京23区内、30屐12畳の1ルームマンションに夫婦2人と猫1匹で暮らしています。狭さゆえの不便は多少あるものの、それすら楽しんでいたのですが、とある事情により年内に引越しを余儀なくされました。

【画像】夫婦2人&猫1匹、25平米の部屋へ…引越し先の様子を見る(12枚)


6畳1K。築40年以上のマンションの、昭和によくあった1人暮らし用の間取り。ここに引っ越すために目下準備中なのです(筆者撮影)

今の部屋ですら「こんな狭い家に住んで……かわいそうに」と、家族や友達に同情されたりするのですが、我が家が次に選んだ新居は、さらに狭い25屐6畳1Kの単身者向けの間取りです。

国土交通省の「住生活基本計画における居住面積水準」には、1人暮らしに最低限必要な居住面積(最低居住面積水準)は25屬筏載されているので、1人で暮らすための最低限の広さで2人と猫1匹で暮らそうとしていることになります。

どうしてこんなことになったのか? それは家選びで最優先した2つの条件に由来します。


引き続き、引越し先の様子。瞬間湯沸かし器がついた、レトロなキッチン。流し台は10年ほど前にリフォームされていてそこそこキレイです(筆者撮影)

新居選びの条件1:病院が近いこと

新居選びは立地にこだわりました。第1条件は、徒歩圏内に医療設備が整った大病院があること。もともと今住んでいるマンションも、老後を見据え長く住むことを前提に購入したのですが、当時は病院にお世話になることがなかったため、条件に入れていませんでした。


夫は手足に痺れがあるため、ある程度の距離を歩くときは、クロスカントリー用の杖をついています。なお、近所のコンビニとかなら杖なしです(筆者撮影)

老い支度を見据えて新居を選ぶ際は、近所にスーパーや銀行があるのと同じぐらい、いやそれ以上に良い病院が近所にあるというのは重要です。2022年に夫がスキルス胃がんになり、通院を続けているうちに、「病院がもっと近ければいいのになぁ」という思いはどんどん切実になってきました。

かかりつけの病院までは決して遠くはないものの、夫は抗がん剤の影響で感染症にかかりやすく、電車・バスを極力使わずに暮らしています。手足の痺れも強く、自転車にも乗れなくなりました。つまり移動手段はほぼタクシー。となると、タクシー代もバカにならない。

さらに入院する頻度も上がり、入院期間も長引くようになってきました。こうなってくると入院時に見舞いの往復がラクになるというのも大切です。夫が入院した場合、妻は着替えだジュースだプリンだと、あれこれ持って病院と家を往復することになるので、タイムロスは相当なストレスになります。


昨年夫が買った電動自転車は、今は私の愛車となりました。夫が入院した際は節約のため自転車を漕いで通っています(筆者撮影)

通院時のタクシー代を節約できるのはもちろんのこと、家族の負担を減らすためにも、病院は近い方がいい、これ絶対!!

新居選びの条件2:価値が下がらないこと

私は「家は買った時がピークで、住めば住むほど価値が落ちていく」というのが、常識だと思っていたのですが、東京はさにあらず。築50年でも60年でも、立地が抜群によければ価値は落ちません。


こちらは現在居住中の、301ルーム。12畳ほどの空間ですが夫婦2人と猫と預かり犬と暮らしていますが、さほど狭さは感じません(筆者撮影)

古くなっても都心の駅チカ(駅徒歩7分以内)で、複数の路線へのアクセスが可能なら、10年住んでも買った値段と同じぐらいの価格で売れるマンションって結構あります。そこに住めば、実質家賃は0円。厳密に言うと税金などもろもろありますが、それを加味しても賃貸より全然安く住めたりします。

そうなると「持ち家は簡単に売れないから、家を買ったらそこに定住しないといけない」という固定観念も覆されます。売っても損をしないから、賃貸と同じぐらいの気軽さで引っ越しすることも可能です。軽快なフットワークで「病院を転院するから引っ越そう」なんてこともできちゃいます。

引っ越し先の利便性について触れておくと、当然のことながら徒歩圏内の生活インフラはバッチリです。街は大いに賑わい、徒歩圏内で買い物も外食も事足りる、不便のない住環境が整っています。


今も住んでいるため売りに出すのはまだ先ですが、ターミナル駅徒歩10分以内、5路線以上利用可という抜群の立地のため、損することなく手放せそうです(筆者撮影)

「大病院徒歩圏内」で「価値が下がりにくい都心部の駅チカ」という条件に見合う、予算内の物件は25屬靴なかったというのが、新居選びの真実です。さらに付け足せば、築年数も相当古い。以前のエッセイでも触れましたが、10年前にほぼ無一文で結婚した私たちがいかに節約しようとも、買えるマンションなんてたかがしれているのです。


ふたたび、引越し先の様子で、古さが凝縮された3点バス。フラッシュバルブ式の便器と、バランス釜の浴槽、古びた洗面台がよく言えば昭和レトロな感じ(筆者撮影)

国土交通省の「住生活基本計画における居住面積水準」では、2人暮らしでゆったり暮らせる広さ(誘導居住面積水準)は55屬箸気譴討い泙后F韻原盂曚鮟个擦弌田舎の方の駅はずれのマンションなら買えなくはないかもしれません。でも利便性は失われます。

自家用車がないと不便だし(そもそも夫に運転はもう難しく、私はペーパードライバーです)、夫は抵抗力の下がった体で電車に乗って1日がかりで病院に通うことになり、リスクにさらされることになります。付き添いも必要なため私の時間も奪われます。


6畳1Kの間取り図、左側が現在の間取りで右がリフォーム案。押入れを撤去して居室を広げる予定(筆者撮影)

しかも、住めば住むほど修繕積立費と管理費は上がるのに反比例して売値は下がるため、引っ越しのハードルもうんと上がるのです。地方都市の駅チカ物件など、価値の下がらないマンションもあるのでしょうが、予算が潤沢にないため手が出ません。

「家の向かいにスーパーが欲しい」「徒歩圏内に駅が欲しい」と思っても、住環境は自分たちで変えることはできませんが、狭さは工夫次第で補うことができます。

利便性を享受するために、荷物を減らして小さく暮らす

狭い家で暮らすための大前提として、家の収納スペースに見合う量だけ荷物を持ち、入りきらない分は手放すことが絶対条件です。でも都心ならそれは難しくありません。

豪雪地帯の一軒家に住んでいるなら、食料品や日用品のストックは必須ですが、徒歩数分の距離にコンビニやスーパー、ドラッグストアがある環境なら、ストックは最低限+非常用の予備だけあれば十分です。


我が家の非常用備蓄。夫の免疫力が低く共同トイレを絶対に使いたくないため、非常用トイレを多めにストックしています(筆者撮影)

買い物が大変だからとまとめ買いする必要もありません。ネットスーパーや生協で生鮮食品を、Amazonや楽天市場で日用品を注文すれば、買い物にいく手間さえなく、買った翌日には欲しいものが玄関まで届きます。

年齢を重ねるにつれて頭の中は昔の思い出が蓄積されていき、記憶力は落ちていきます。つまり、脳のキャパシティは常にぱんぱんです。台所用スポンジや白髪染めのストックがあるかないかなんて、いちいち覚えていられません。

自分の持ち物が把握できていないと「シャンプーの予備あったっけ? なかったような気がするからとりあえず買っておこう」と、勘で買い物をすることになり、どんどんモノが増えていきます。そうすると「ハサミがあったはずなのに、どこに置いたかわからないからハサミを買わなきゃ」ということになり、モノがモノを呼ぶ悪循環の沼が待ち受けているのです。


日用品のストックは右下の黄色い缶に収納。洗剤や入浴剤などポイポイ放り込んでいます(筆者撮影)

私は汚実家育ちで、子供時代は常に、ハサミ、耳かき、爪切りを探していましたし、3人家族なのになぜかそれらは4つ以上ありました。大人になってからもそれは変わらず、以前の帰省した際に、洗面所の収納の奥の方に何年も放置され続けているであろう大量の洗剤に交じって、表面にカビが生えたカビ取り剤を発見したことも付け加えておきます。

狭い家で必要最低限のモノと暮らすと、記憶力に頼ったり、勘で買い物しなくても、どこに何があるか自分が何を持っているのかを目視で把握できるため、ストック品のストック品を買うことがなくなり、ハサミがどこにあるか探し回ることもなくなります。

ただし、収納スペースを超えた量の荷物を持つと部屋がモノで埋もれ、日常生活を維持するのが困難になるため、収納に見合った所有量を維持することが最低条件にはなってしまうので、「捨てる勇気」が常に試されている状態にはなります。

狭い家なら収入に見合った暮らしができる

定年後は収入も減るため、潤沢な預貯金がない場合は、収入に見合った暮らしをする必要が出てきますが、狭い家なら購入費用も、家賃コスト(中古マンションの場合税金や修繕積立費など)も抑えられます。

SRC造マンションの1ルームなら機密性も高いので、冷暖房はエアコン1台で事足りるため、電気代も安上がりです。ガスファンヒーターや石油ストーブも買わなくていいので、購入費用も不要でガス代も石油代も不要です。


ペットがいるため夏も冬もエアコンを24時間稼働しますが、ここ1年の電気代は高くても8000円台。狭ければ節電しなくても電気代は安い!(筆者撮影)

家が狭ければ掃除もあっという間です。掃除機だけなら5分もかかりません。階段を上り下りして、いくつもの部屋を掃除する手間と比べると雲泥の差です。年を重ねていくにつれ、動作がおっくうになることを考えれば、掃除するスペースはなるべく狭い方がいいですよね。

【画像】夫婦2人&猫1匹、25平米の部屋へ…引越し先の様子を見る(12枚)

「都会の恩恵を享受できる、狭い家での暮らしは若者の特権」「結婚して家庭を持ったら広い家で暮らすもの」そんなイメージを持っていましたが、「意外と大人こそ都会の狭い家が向いているのかもな」なんて思う今日この頃です。さすがに我が家の6畳1Kは極端すぎるとは、我ながら思いますが。


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(大木奈 ハル子 : ブロガー・ライター)