ドラマ『心はロンリー 気持ちは「…」FINAL』(フジテレビ系)が4月27日に放送される。明石家さんま版の「寅さん」ともいえるシリーズで、今回のマドンナ役は川口春奈だ。
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さすがに恋人ではなく、娘の設定とはいえ、さんまはラジオで、
「よい加減の抜き方しよるから、ものすごいやりやすかった。俺も好きになってるからね」
と、その芝居を絶賛。あの大竹しのぶと結婚して離婚後も共演するなど、根っからの女優好き芸人にも認められたわけだ。
また、19日には主演連ドラ『9ボーダー』(TBS系)がスタート。CMの本数も多く、名前どおり、我が世の「春」という趣だ。
「低視聴率女優」の過去
そんな川口ほど、わかりやすい「転機」を持つ人も珍しい。2019年11月、沢尻エリカがクスリで逮捕され、NHK大河ドラマ『麒麟がくる』の代役が舞い込んだ。抜擢だが、ハイリスクハイリターンな仕事でもある。
というのも、彼女はそれまで「低視聴率女優」というありがたくない異名を取っていた。バラエティー番組では、SNSに可愛く見られたい系の投稿をする女子が嫌いだとして、
「そんなん誰が知りたいんやろ? 載せんでいいやん」
と、発言。気の強い正直すぎる性格が時に反感も買い、正統派な美貌もどこか宝の持ち腐れみたいな印象だった。それゆえ、大河で失敗すれば、ますます失速するおそれもあったわけだ。
しかし、彼女は時代劇初挑戦ながら、主役を食うほどの存在感を示した。その後は『ちむどんどん』『舞いあがれ!』でNHKの朝ドラに2作連続で出演したり、『silent』(フジテレビ系)でのシリアスな芝居が高く評価されたりと、順風満帆だ。
ではなぜ「転機」までの彼女はくすぶっていたのか。
島育ちゆえの苦悩
その理由は、彼女を生かせる役を業界がなかなか見つけられなかったこと、そして、長崎県福江島という離島出身のためか、芸能界に適応するのに時間がかかったことだろう。なにせ、博多まで船で9時間。中3で上京したのは、週1ペースで通うのに限界がきたからだという。デビューから8年たった'15年のインタビューでも、
「周りの環境が地元とは違いすぎて、いまだに若干戸惑うこともあります」
と、告白。気の強い正直すぎる性格もある意味、島育ちの野性的なもので、それを自然体の飾らない魅力に見せることが当時はできなかった。
ちなみに、前出『心はロンリー』シリーズで初代マドンナを務めたのは、田中美佐子。くしくも、島根県の隠岐諸島で生まれた離島出身女優だ。
こちらも、事務所後輩の東貴博に「親分肌の人で、怖い」と言われるような性格で、大女優にいじめられた過去をテレビで暴露するなどしている。元・付き人、深沢邦之との格差婚(のち離婚)などを乗り越え、たくましく生き抜いてきた。川口もまた、格闘家と交際中にはその勝利を現場で見て号泣していたほどの激情家だ。公私共にたくましく生き抜いていくことだろう。
それにしても、もし沢尻の事件がなかったら、川口の今は違うものになっていたのでは。歴史に「もし」はタブーとはいえ、ついそんなことも考えてしまう。
もちろん、舞い込んだ運をものにできたのは実力のおかげだが、先輩女優の転落を機にのし上がるという展開には芸能モノのマンガみたいな妙味がある。正統派美人女優のブレイクには、これ以上ないエピソードだ。
ほうせん・かおる アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。著書に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)。