JRの駅に設置されている「みどりの窓口」(編集部撮影)

近年、JR各社は「みどりの窓口」の削減を急ピッチで進めている。削減の進み具合が緩やかなのは、切符売り場がみどりの窓口を名乗っていないJR東海くらいだ。

そんな中、各地のみどりの窓口に長蛇の列ができていることがSNS上などで話題になっている。場所によっては銀行の窓口で見られるような待機の番号札や、待つ人のためのいすが設置される状況にもなっている。

みどりの窓口はいつ頃から減り始め、今後どうなっていくのだろうか。そして、JRは現状についてどう考えているのだろうか。

「40分待ち」の札も

実際にどの程度混雑しているのか、都内の駅で確認してみた。3月19日火曜日の日中、新宿駅南口のみどりの窓口には列ができており、2人の係員が指定席券売機に利用者を誘導していた。池袋駅では数十人にも及ぶ長い行列が見られた。さらに、上野駅では列の途中に「40分待ち」の札が掲げられ、その札より後ろにも並ぶ人がいるという状況だった。

一方、東京駅ではみどりの窓口は丸の内地下や八重洲北口にある程度で、あとは指定席券売機に置き換えられている。改札内にもみどりの窓口があるが、こちらは誰も並んでいなかった。

週末はどうか。3月23日土曜日、立川駅や八王子駅ではすいていたが、国分寺駅や吉祥寺駅では並んでいる人がおり、都心に近づくにつれて混雑が増すようだ。新宿駅では嫌になるほどの長い列ができていた。

みどりの窓口の削減はいつ頃から行われたのか。先行したのはJR西日本だ。

JR西日本は2019年2月、京阪神地区のみどりの窓口設置駅数を180駅から2030年度ごろに30駅程度まで減らし、代わりにオペレーター対話型の「みどりの券売機プラス」を50駅から100駅程度に増やすと発表した。

さらに2020年12月には、同社のエリア全体で同年度初頭に約340駅にあったみどりの窓口を、2022年度末に180駅、2030年度末に約100駅まで減らすと発表した。一方でみどりの券売機プラスについては2020年度初頭の約100駅から2022年度末には約180駅に増設し、2030年度末には約200駅まで増やすとしている。

その後、JR九州も2021年12月、48駅の切符販売窓口を2022年3月に廃止すると発表した。

背景にあるのは少子高齢化による人材確保難などの経営環境の変化である。そんな中で、利用者自身でできることはやってもらい、駅係員は乗客のサポートや案内といった「人により行うことが効果的な業務」に注力できるようにするというのがJR西日本の考え方だ。他社も同様の流れといえる。

チケットレス強化で設置駅削減

JR東日本は2021年5月、チケットレス化・モバイル化を推進し「乗車スタイルの変革を加速」するとして、今後の駅や切符販売のあり方を発表した。

その中で、みどりの窓口については一定の利用のある新幹線・特急停車駅や利用の多い駅を中心に「バランスを考慮した配置へと見直す」とし、発表時に首都圏で231駅、地方圏で209駅だった設置駅数を、2025年にはどちらも70駅程度に削減するとした。一方で、「えきねっと」による特急券などの取扱率を2020年度の約25%から2025年度には60%に、新幹線のチケットレス利用率については約30%から70%にする目標を掲げた。


開業直前の高輪ゲートウェイ駅に並ぶ券売機。新幹線・特急券も券売機での購入が増えている(撮影:尾形文繁)

この発表によると、2020年度の時点で近距離切符以外の利用については約8割が券売機やチケットレスなど、みどりの窓口以外の販売サービスでの購入となっているという。利用者は減っているはずなのに混雑しているのは、少なくなったみどりの窓口に利用者が集中しているためといえる。

みどりの窓口が混雑している現状と、今後の方針についてJR東日本に聞いた。

まず同社は、2021年以前から繁忙期などで首都圏の駅を中心に混雑が発生している状況は認めている。混雑している駅や時期などでは、状況に応じて案内社員の応援体制を整え、利用者の用件をあらかじめ聞いて、自動券売機を案内し、操作をサポートするなどといった対応を取ることにしているという。

みどりの窓口の削減については、2021年当時の計画から変更はないものの、「今後の状況等については注視してまいります」としている。一部の駅では「話せる指定席券売機」を設置、オペレーターによる対応で割引乗車券の発売や、払い戻しなどの業務を行っている。

今後は「えきねっと」などのネットサービス、あるいは「指定席券売機」への誘導策を実施していくという。2023年7月には団体乗車券のWeb申し込みを開始、今年の4月1日からは利用者自身の操作で利用前の乗車券類の大半を払い戻しできるようになった。このようにして、みどりの窓口でしかできない手続きを減らしていく方針だ。「レール&レンタカー」の発売など、一部にはみどりの窓口でしか扱えない業務もあるものの、これらの業務についてもさらに削減・解消を検討し、利用者自身が指定席券売機の操作でできるサービスを拡充するとのことだ。

窓口の需要は今後も残る

今では新幹線や特急列車の利用はネット予約やチケットレスが当たり前のようになり、定期券もスマートフォンでの購入が浸透してきた。しばらく駅の窓口には出向いたことがないという人も多いだろう。混雑はこれらの利用がさらに浸透するまでの過渡期の現象とも考えられる。

だが、ネット予約などに不慣れな人の利用をはじめ、有人の窓口の需要は今後も一定程度残ることが予想される。また、発券がネットなどに移行したとしても、人に相談できる場所の存在は重要だ。JR東日本は鉄道利用や旅行についての相談などができる「駅たびコンシェルジュ」を設置しているが、こういったサービスの利用をもっとわかりやすくするなど、窓口を必要とする人への対応方法はこれからも重要な課題だろう。


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(小林 拓矢 : フリーライター)