確定申告期間も残すところあとわずか。今まさに申告作業のラストスパートという読者も多いのではなかろうか。今期の申告期間は「#確定申告ボイコット」なる呼び掛けも話題になったが、それを真に受ける人はほぼ皆無だろう。しかし中には、高額の所得を得ているにもかかわらず、無申告という名の「ボイコット」を続けている人たちもいる。そう、何かと話題のあの女性たちである――。

「パパ活女子やギャラ飲み女子からの相談がコロナ禍以降、多く寄せられるようになりました。彼女たちのなかには税金の知識に乏しい人も少なくなく、『確定申告って、私もやらないといけないのでしょうか』といった相談をよく受けます」

そう明かすのは、風俗店やキャバクラなど夜職の案件を多数扱う、税理士法人松本の代表税理士・松本崇宏氏だ。近年は副業感覚のパパ活女子やギャラ飲み女子が増加しているが、「パパからのお小遣い」は「個人の所得税または贈与税が課税される」ものであることを知らない女性も少なくないという。松本氏が続ける。

「よく『親から貰うお小遣いと何が違うのか』と疑問に思う人がいます。親と『パパ』は役務(サービス)の提供、要するに見返りを求めているかという点で異なります。親が子にお小遣いを渡す場合は見返りを求めていませんよね。

対してパパ活の場合は一般的には役務の提供が前提になっている。一緒に食事しただけでも、一緒に食事をするというサービスを提供したということになります。パパはその対価として金銭を渡しているわけです。たとえパパが『本当にあげただけ。見返りなんて求めていない』と言っていたとしても、個々の心情を立証することは難しい。基本的にはパパ活という“仕事”で得た”収入”と見なされます」

松本氏によると、同じ夜職でも、とりわけパパ活女子は納税の意識が低い傾向を感じるという。

「ギャラ飲み女子からの相談は比較的多いのですが、パパ活女子からの相談はぐっと少なくなります。根底にはせっかくの稼ぎから税金を引かれたくないという自分本位な考えがあると思います。また、パパ活の場合は現金を手渡しで受け取ることが多いことから、税務署にバレにくいと考えている人もいると思います。実際、現金の受け渡しはお金の流れが見えにくく、足がつきにくい」

足がつきにくいとはいえバレないわけではない。パパ活女子やギャラ飲み女子の増加に伴い、税務署がメスを入れるケースも増えているというが、どんなルートからバレるのだろうか。

「まずギャラ飲み女子はバレやすいですね。ギャラ飲みは専門のマッチングアプリを介して行われることが多く、その場合、女性に支払われるギャラは運営会社から振り込まれるのが一般的。振り込みの履歴を辿ることでギャラ飲み女子に支払われたギャラ、すなわち収入がバレるというわけです。

パパ活の報酬は現金の手渡しが多く、履歴が残りにくいのですが、安全面からも現金をそのままタンス預金で保管している人は少ない。なので、彼女たちの銀行口座は残高が異常な増え方をしたりするんです。クレカの決済額もヒントになります。これまで無申告であれば、収入の証明が取れないため、クレカの上限は少なくなるハズです。これまで申告した形跡がないのに、毎月クレカの決済で50万円ずつ落ちているとなると、そのお金の出どころが疑われる」(松本氏)

税務署は本人の許可なしでも銀行口座の入出金情報やクレカの利用情報を確認することができる。彼らがその気になれば隠し通すことは難しいだろう。もちろんチェックしているのはこれだけではない。

「弊社には元税務調査官もいますが、彼らは女の子たちのSNSもこまめにチェックしているそうです。怪しいと睨んだ女の子であれば、投稿があるたびに紙に印刷してファイリングするレベルで見ている。彼女たちのなかにはSNSでブランド品や高級車、頻繁に旅行に行っていることを自慢している人がいます。会社員などの表向きの収入ではおよそ実現不可能なキラキラした生活を投稿していると、ウラの収入を調査してみようとなる。

税務署には『あの子は稼いでいる』と嫉妬に駆られた知人のタレコミも寄せられます。ほかにも掲示板の書き込みなど、様々な情報を収集し、総合的に勘案して調査します。

意外なケースでは、パパ側からバレるということもあります。会社経営をしているパパがデート費用を経費に計上していたり、会社の裁量権を持っているパパが、女性を従業員として雇っていることにして、その『従業員』への『給料』として支払ったことにすることがあります。昔からある定番の脱税の手法です。そんなパパの会社にたまたま税務調査が入り、支払先がパパ活女子になっていたために無申告が発覚したという事例もありました」(松本氏)

油断していると突然やってくるのが税務署だ。もしバレたらどうなってしまうのか。’22年には3年間で約4000万円の所得を得ていたギャラ飲み女子が、約1100万円の追徴課税を受けたことがニュースになった。さすがにレア中のレアケースかと本誌記者がたずねると、松本氏はそうとも限らないと言う。

「過去3〜5年とさかのぼれば、追徴課税1000万円というのはあり得ない話ではない。弊社でもパパ活女子から約1500万円の追徴課税が来たという相談を受けたことがあります。パパ活女子はパパから貰うばかりの人が多く、傾向として経費があまりかからない。収入から差し引ける経費が少ないので、無申告だった場合は追徴課税も大きくなりやすい。

いざ追徴課税が来たときに、貯金がないという人は多い。貰ったお金は使ってしまうんですね。買い物に使ったり、ホスト通いに使ったりして、手元にお金が残っていないという女の子の話は珍しくありません。一度に納税できない場合は、税務署に相談して毎月定額で支払う分納になります。税金の支払いに困窮してパパ活で稼ぐしかない、という女の子が出てくる可能性もゼロではないでしょう」

無申告を貫き通した人に対する税務署のチェックは厳しい。松本氏によると税務調査が入った翌年、翌々年の申告に改善が見られない場合は、再度税務調査に入るケースもあるそうだ。「ボイコット」などは考えず、今すぐ確定申告をしたほうが賢明だろう。

取材・文:芳賀 慧太郎